財産事件 [公開日]2017年10月17日[更新日]2018年2月5日

強盗罪を徹底解説!恐喝罪・窃盗罪との違い、強盗致傷罪とは?

強盗罪を徹底解説!恐喝罪・窃盗罪との違い、強盗致傷罪とは?

皆さんも、ニュースや刑事ドラマなど「強盗」という言葉をよく耳にするかと思います。しかし、具体的な定義までご存知な方は少ないのではないでしょうか。

このコラムでは「強盗」とはどんな罪なのか、そしてどのような処罰が科されるのか解説していきましょう。

1.「強盗」とは

(1)  刑法236条

強盗罪を規定している刑法236条では、第1項で「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。」と、第2項で「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」と書かれています。

簡単に言うと、暴力や脅しを用いて、他人の物を奪い取ったり、不当な利益を得たりすることを言いますが、ここではそれぞれ構成要件・成立要件を少し詳しく解説していきましょう。

①「暴行又は脅迫」とは

強盗罪における「暴行又は脅迫」では、被害者の反抗を抑圧する程度であることが必要、と法律の世界では解されています。
簡単に言えば、被害者が抵抗できなくなるような態様であるひつようがある、という事です。

たとえばナイフやけん銃で脅す、縄などで手足を縛る、などの方法がこれに当たります。

②「他人の財物」とは

これは他人の物、という理解で問題ありません。

③「強取」とは

簡単に言うと、奪い取る、という意味になります。たとえば銀行の窓口の人にお金を出させる、バッグを無理やり奪い取る、などがこれに当たるでしょう。

④「財産上の利益を得」る、とは

第2項にはこのような文言がありますが、これは物やお金そのものではなく、不当な財産上の利益を得ることを言います。
たとえば、飲食店で食事をした後、そこの店員を脅して代金を支払わずに逃げてしまう、というような行為がこれにあたります。

本来であれば食事の代金を支払わなければならないにもかかわらず、これを免れているところに不当な財産上の利益がある、というわけです。

⑤「他人にこれを得させた」とは

④で説明した財産上の利益は、犯人自らが得なくとも、誰か第三者に得させたような場合にも処罰の対象になるということを示しています。

たとえば、AさんがBさんから借りた借金を、CさんがBさんを脅してチャラにさせてしまった、というような場合がこれに該当するかと思われます。

⑥「5年以上の有期懲役に処する」とは

有期懲役とは、期間を定めて刑務所に送られることを言います。無期限で刑務所に送られる「無期懲役」の逆です。

ここで重要なのは、「5年以上」という刑期です。

⑦強盗罪に執行猶予は無い

執行猶予が認められるのは3年以下の懲役刑の場合だけですので、基本的に強盗罪には執行猶予はつかないことになります。

しかし、自首や過剰防衛など、一部懲役刑が短くなる場合には執行猶予が付く可能性もあります。

2.関連する犯罪

強盗罪においては、いくつかその亜種と呼べるものも処罰の対象となります。以下、詳しく見てみましょう。

(1) 未遂罪(刑法243条)

強盗罪は、実行し始めたら、たとえ実際に物を奪ったり財産上の利益を得られなくても、処罰の対象となります。

たとえば、銀行強盗しようと窓口の人にナイフを突きつけたが、すぐに警察が来て金品をうばうことはできなかった、というような場合がこれに当たります(実行の着手)。

(2) 予備罪(刑法237条)

強盗予備罪」とは、強盗を行う目的でその準備(凶器を用意する、強盗するのに適した相手を探して徘徊する、など)ことをいいます。

未遂罪との違いは、実際に暴行・脅迫など、強盗罪を構成する行為を行っているが、結果として物の奪取などの結果は得られなかった場合が未遂罪、このような行為にすら至っていない段階のものが予備罪となります。

(3) 事後強盗罪(刑法238条)

この条文では、「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。」と規定しています。

簡単に言うと、窃盗の犯人が、捕まるのを回避するため、または証拠を隠滅するために誰かに暴行又は脅迫を用いた場合には、「強盗」と同じ扱いをする、という意味になります。

たとえば、万引きした犯人が、これを捕まえようとした店員に対し、殴るなどの暴行を加えて逃走した、というような場合がこれに該当します。

(4) 強盗致死傷罪(刑法240条)

強盗の際、人に怪我をさせた場合は強盗致傷罪として、「無期又は6年以上の懲役」が、人を死なせた場合には、強盗致死罪として、「死刑又は無期懲役」が科されます。

強盗罪は人の身体への危険性が高い犯罪であることから、もともとその刑は重く設定されていますが、実際に危害が加えられてしまったような場合には、より重い刑に課されることになるのがわかると思います。

さらに、強盗致死傷罪になってしまった場合には、裁判員裁判の対象にもなります。

(5) その他

その他、被害者の意識をなくさせて物を奪う「昏睡強盗罪(刑法239条)」や、強盗が現場で女子を強姦した場合に成立する「強盗・強制性交等罪」(さらに死亡させたときは「同致死罪」)などがあります。

3.類似の犯罪との違い

他の人からものを奪う犯罪には、窃盗罪や恐喝罪などもありますが、これらの犯罪との違いはどこにあるのでしょうか。いくつか似た犯罪との違いを挙げてみましょう。

(1) 窃盗罪(刑法235条)との違い

暴行・脅迫を用いたかどうかが差異となります。窃盗とは、万引きやスリなどが具体例となりますので、この違いはわかりやすいかと思います。

法律上、強盗罪は窃盗罪をより重くしたもの(「加重類型」といいます。)と考えられています。

(2) 恐喝罪(刑法249条)との違い

恐喝罪も「暴行又は脅迫」を用いて他人の物を奪ったり、財産上の利益を得たりする犯罪です。そうすると、両者の間には違いがないようにも思われます。

法律上は、前述の被害者の「犯行を抑圧するに足りる程度」の暴行・脅迫があるものは強盗罪、これに足りないものを恐喝罪、と考えられています。たとえば数人の不良が取り囲んで金品を奪う「カツアゲ」などがこの例となります。

(3) 強要罪(刑法223条)との違い

強要罪も「暴行又は脅迫」を用いることは同じですが、こちらは物を奪い取ったり財産上の利益を得るものではなく、「義務のないことをさせる」点が異なります。

たとえば、交際していた際に撮影した裸の写真により、元交際相手に復縁を迫る、などが挙げられます。

4.逮捕の可能性

これまで見てきたとおり、強盗罪は人の身体に対して危険性を与える犯罪なので、法律では重い刑を科していることから、実際に強盗罪が発生した際には「逮捕」され、警察署に身体拘束され、実刑判決を受けてしまう確率は他の犯罪と比べて高くなります。

また、強盗罪には罰金刑がないことから、処罰される場合は必ず刑事裁判を受けることになります。

その一方で、ひとえに「強盗罪」といっても、万引きで逃げる際に店員に暴力をふるってしまったようなものから、ナイフやけん銃を使って銀行強盗するようなものまで含まれる可能性があり、最終的な処分や量刑にも差が出ることが多いです。

5.強盗事件の加害者になってしまったら

強盗罪では、被害者との示談活動など、弁護士でなければなかなかできない活動も多いです。

自分や家族が強盗罪により捜査を受ける立場になってしまったという場合には、刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所に是非ともご相談・ご依頼ください。弁護士が、釈放・示談・不起訴に向けて全力でサポートいたします。

刑事事件コラム一覧に戻る