暴力事件に関する質問
Q
胸倉(むなぐら)をつかんだだけなのに、110番通報されて、警察署に連れて事情聴取を受けて解放されました。胸倉をつかんだだけでも、暴行罪に当たるのでしょうか?ほかにも、どのようなものが、暴行罪に当たるのでしょうか?
A
裁判例によれば、暴行罪における「暴行」(刑法208条)とは、人の身体に対する不法な攻撃方法の一切をいい、その性質上傷害の結果を引き起こすものであることを要しないとされています。
そして、この裁判例では、着衣(服のことです。)をつかみ引っ張るなどの行為が暴行に当たるとされました。
ご質問の胸倉をつかむという行為は、着衣をつかみ引っ張るといえますので、暴行に当たることになります。
ほかにも、裁判例によれば、以下のようなものが暴行に当たるとされました。
- 毛髪の切断・剃去(毛を剃(そ)ることです。)(大判明治45年6月20日)。
- 瞬時身体を拘束する行為(大判昭和7年2月29日)。
- 驚かせる目的で、人の数歩手前を狙って投石する行為(東京高判昭和25年6月10日)。
- 瓦の破片を投げ、脅かしながら追い掛ける行為(最判昭和25年11月9日)。
- 人の身辺で大太鼓・鉦(かね)等を打ち鳴らす行為(最判昭和29年8月20日)。
- 狭い室内で脅す目的で日本刀の抜き身を振り回す行為(最判昭和39年1月28日)。
- 他人の頭・顔に、お清めと称し、食塩を振り掛ける行為(福岡高判昭和46年10月11日)。
人の体に触れることは暴行にあたる可能性があるとご理解ください。