薬物事件に関する質問
麻薬合法の国で麻薬を使用したら犯罪?発覚するケースは?
日本国籍の方が麻薬合法の国(例:オランダなど)へ旅行し、現地で麻薬を使用するといったケースが想定されます。一見すると犯罪にならないようにも思われますが、犯罪は成立することになります。以下で解説をさせて頂きます。
1.海外でも麻薬を使用すると犯罪になる理由
日本国の刑法は、刑法が適用される場所的範囲についていくつかの原則をとっています。そして、それぞれの原則に基づいて、一定の犯罪につき国外犯の処罰規定が存在しております。
その一つに保護主義という原則があります。保護主義とは、自国の重要な利益の保護を目的として、自国や自国民の利益を侵害する犯罪については、犯人の国籍や犯罪地を問わず、すべての犯人につき刑法の適用を認めるという原則です。
条文上は、刑法2条に、「この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。」と規定され、通貨偽造済や公文書偽造罪、有価証券偽造罪などの一定の犯罪が、規定されております。
したがって、例えば、日本人であるか外国人であるかを問わず、日本国外において、日本国の通貨や公文書、株券等の有価証券を偽造した者には、日本国の刑法が適用されることになります。
そして、設問の麻薬の使用については、麻薬及向精神薬取締法(以下、「麻薬取締法」という。)69条の6で、麻薬の使用(同法64条の3第1項)につき、「刑法第2条の例に従う。」と規定し、この保護主義を準用しております。
したがって、麻薬の使用を合法としている国や、一定の条件下で使用を処罰しないとする国に旅行に行って、麻薬を使用した日本人にも、麻薬取締法違反(使用)の罪が成立することになります。
2.海外で麻薬を使用して発覚するケース
例えば、日本人がオランダに観光に行き、当地では麻薬の使用が処罰されることはないからと麻薬を使用して、その後日本国に帰国したとします。
帰国後、何らかの理由(例えば挙動不審等)で警察官より検挙され、薬物検査を行った結果、麻薬の薬物反応が出たというケースです。
このケースでは、麻薬の使用が処罰されないオランダで使用したからと言っても、そもそも、麻薬の使用は上述したように国外犯の処罰が可能ですから、麻薬取締法が適用され犯罪が成立するということになります。
また、従前から、麻薬使用のうわさされる人物を尾行した麻薬取締官が、麻薬の使用が処罰されないオランダで麻薬使用中の犯人を現行犯逮捕したというケースも考えられると思います。