人身事故による逮捕・起訴を免れるために|交通犯罪の刑事弁護
交通事故(人身事故・死亡事故)の加害者側になってしまった方は、免許の点数に関することや、相手方との示談交渉(損害賠償の支払額)などに目が行きがちです。
しかし、交通事故の中でも人身事故・死亡事故の場合には、人の生命・身体の安全が絡むことから、逮捕されて刑事事件化する傾向が強いです。
この記事では、人身事故で逮捕・起訴されるケースや、刑罰はどのくらいになるのかを簡単に解説した上で、不起訴・執行猶予を勝ち取るためにできる被害者への正しい対応を解説していきます。
1.人身事故で逮捕・起訴されるケース
自動車の運転により人を死傷させてしまった場合、自動車運転処罰法が適応されます。
具体的には、以下のような罪が成立する可能性があります。
- 危険運転行為から人が死傷した場合:危険運転致死傷罪(人を負傷させた場合は15年以下の懲役に、人を死亡させた場合は1年以上20年以下の懲役)
危険運転行為とは、アルコールや薬物の影響で正常な運転ができない状態(酒気帯び運転)、制御困難なスピード違反での運転、赤信号の無視等をいいます。 - 運転上必要な注意を怠って人を死傷させた場合:過失運転致死傷罪(7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)
前方不注意、スマホを見ながらの運転などが該当します。
自動車運転処罰法については、以下のコラムで詳しく解説しています。
[参考記事]
自動車運転死傷処罰法とは?交通事故被疑者・被害者必見の法律
人身事故の刑事罰について、「初犯である」「被害者が軽微な負傷である」「過失の態様が悪いとは言えない」「被害者との示談が成立している」などの場合であれば、不起訴処分になることも多いでしょう。
しかし、何回も人身事故を起こしていたり、死亡事故など被害結果(受傷内容)が重いものであったり、過失の態様が悪質である(アルコール摂取量が多いなどの)場合、証拠隠滅を図った場合などには、逮捕による身体拘束をされる可能性や、起訴される可能性も出てきます。
ことに、人身事故でも重傷の事案や死亡事故の場合には、弁護士の経験上、起訴の可能性が十分にあり得ます。
例えば、死亡事故の場合にご遺族の方が刑事裁判に「被害者参加」という手続きを取ったことにより、(当初の検察官の考えでは罰金だったはずが)正式裁判となってしまった、という事案が泉総合法律事務所にもございます。
刑事事件化するかどうかは被害者の被害感情によるところもあるため一概には言えませんが、どのような事故であっても、被害者の方に早期の謝罪(申し出)をするとともに、任意保険にて支払われる人身事故・死亡事故の示談金とは別枠での刑事示談金(見舞金)等を交付するなど、被害者の被害感情をしっかり考え行動することが大切になります。
2.逮捕・不起訴を回避するために
人身事故の場合、例え被害者側の怪我が重くなかったとしても、早期に適切な謝罪・賠償をするなどしなければなりません。
「被害回復を図ったかどうか」「被害者が許しているかどうか」は、被疑者(加害者)の方の起訴・不起訴の判断の基準として、そして刑事罰の裁量を決める上で重要な要素となります。
(1) 保険会社に任せきりにせず誠意を見せる
人身事故・死亡事故を起こしてしまった場合、「任意保険に入っているので、示談交渉はそちらに任せよう」と考える方も多いです。
しかし、これが結果的に被害感情を悪化させていることがあります。
例えば、人身事故や死亡事故の被害者の方が「加害者は謝罪の連絡すら入れて来ない(謝罪文すら書いてこない)けど、これが当たり前なのですか?」と憤慨されることは往々にしてあります。
任意保険会社が保証してくれる「民事事件」と「刑事事件」は別個の手続きです。交通事故の民事交渉(示談交渉)を任意保険会社に任せているからといって、必ずしも刑事的な側面まで解決できているわけではありません。
このため、被害者の方又はご遺族の方に対する、加害者本人からの「早期の」「適切な」謝罪は必須であると思われます。
物損事故ではない限り、例え被害者の怪我の程度が軽いケースでも、全てを保険会社任せにするべきではありません。
もちろん、謝罪をするだけで交通事故被害者(遺族)の被害感情が癒えるかというと、必ずしもそうではありません。
しかし、交通事故で人の生命身体に悪影響を与えた以上、これに対して適切に対応する必要性が高いのは間違いありません。
とは言え、「加害者とは顔も合わせたくない」と思われる被害者の方もいらっしゃるかもしれません。
この場合、謝罪文・反省文(お詫び状)などを書いていただき、弁護士を介してお渡しすることも可能です。
いずれにせよ、被害者と加害者の直接のやり取りは更なるトラブルに発展しかねませんので、刑事事件対応は弁護士に依頼をすることがお勧めです。
もちろん、弁護士に刑事弁護を依頼したからと言って、被疑者被告人が謝罪を弁護士任せにすることは禁物です。
反省文・お詫び状については、弁護士のアドバイスを受けた上で、ご自身の言葉で丁寧に作成しましょう。
仮に、謝罪をしても被害者側の被害感情が癒えなかったとしても、「被害者の方に対し、自ら謝罪をして誠意を見せた」ということは、人身事故・死亡事故に関する刑事事件の手続きにおいても、加害者の方にとってプラスになることは間違いありません。
謝罪の他にも、誠意を見せる方法としては、刑事示談金(見舞金)等を交付して、被害者やその遺族の方から被疑者被告人の刑事処罰を望まないとの宥恕(ゆうじょ)文言を入れた示談書を取り付けることが重要になってきます。
(2) 被害者側へ謝罪のタイミング
人身事故・死亡事故の謝罪に関する時期的な問題ですが、処分が決まるあるいは刑事裁判が終わるまでの間であれば、「いつ」という決まりはありません。
しかし、刑事手続きが進んでから「謝罪をする」「お詫び状を書く」ということでは、「この人は本心から謝罪しているのだろうか」と感じる被害者の方は多いでしょう。
また、被害感情について捜査機関が最初に聞く機会は調書作成時であり、事故発生後の早い段階になります。
その為、人身事故・死亡事故の場合には、被害者の方に早期の謝罪(申し出)をすることが重要です。
3.交通事故犯罪の弁護活動は弁護士まで
以上の通り、人身事故・死亡事故の場合には、被害者の方に対する謝罪が重要です。
特に人身事故のうち、全治3週間を超える重傷の場合や死亡事故の場合は被害結果が重いと言えます。この場合には、早期に示談交渉を開始して宥恕文言を入れた示談書を取り付けるなどの対処が重要になってきます。
このような示談交渉は刑事事件の処分結果に大きく関わるものですので、弁護士に刑事弁護を依頼して示談交渉をすることをお勧めします。
泉総合法律事務所では、様々な様態の刑事事件を解決して参りました。
刑事事件化しそうな交通事故に関しましても経験豊富ですので、もし交通事故の加害者になってしまった場合、当所の無料法律相談をご利用ください。