ひき逃げ・あて逃げ
ひき逃げ、あて逃げとは
◇ひき逃げ
ひき逃げとは、自動車やバイクを運転中に、人を死傷させる交通事故を起こしたにもかかわらず、すぐに自動車やバイクを停止させて、負傷者の救護や道路上の危険を防止することなく、そのまま事故現場から立ち去った場合に成立する犯罪です。
◇あて逃げ
あて逃げとは、自動車を物に衝突させて損壊させたにもかかわらず、警察へ報告することなく事故現場からそのまま立ち去った場合に成立する犯罪です。
◇ひき逃げ、あて逃げの共通点
交通事故を起こしたあと、救護や警察への通報を怠った点
◇ひき逃げ、あて逃げの相違点
交通事故の対象が異なります。ひき逃げの場合、人の死傷が対象である一方、あて逃げの場合、物が対象となります。
ひき逃げの刑罰
ひき逃げの場合、自動車運転死傷行為処罰法、および道路交通法違反で処罰されます。
交通事故によって、相手をケガさせたり死亡させた場合、平成26年の自動車運転死傷行為処罰法の施行以後であれば、過失運転致死傷罪または危険運転致死傷罪によって処罰されます。一方、自動車運転死傷行為等処罰法の施行以前であれば、刑法の自動車運転過失致死傷罪または危険運転致死傷罪によって処罰されます。
それに加えて、交通事故を起こしたあと、負傷者の救護や警察への通報を怠ったという点に対する、道路交通法上の「救護義務違反」「報告義務違反」としても処罰されます。
道路交通法上の罰則は以下のとおりです。
救護義務違反 (道路交通法117条2項) |
10年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
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報告義務違反 (道路交通法119条1項10号) |
3月以下の懲役又は5万円以下の罰金 |
ひき逃げの場合、①自動運転死傷行為処罰法(刑法)による規定違反、および②道路交通法違反、これら両方の罪が成立することが多く、その場合は「併合罪」となります。
ひき逃げに関する量刑相場について、これまでの泉総合での刑事弁護実績を踏まえてご説明します。
ひき逃げの場合、一度現場から逃走している事情もあり、一般的な交通事故より重く処罰されます。したがって、被害者のケガの程度が軽く、すでに示談が成立している場合であっても、公判請求され刑事裁判となるケースが多いです。
また、被害者のケガが重い場合や被害者が亡くなっているような場合には、いくら初犯であっても、執行猶予が付かず、いきなり実刑判決が下されることもあります。
交通事故における、人身事故・死亡事故の弁護方針
◇罪を認めている場合
(1)示談成立を目指す
被害者や遺族と示談交渉を行い、早期の示談成立を目指します。と言うのも、被疑者を起訴するかどうか判断するにあたり、検察官は示談の成否をとても重要視するからです。不起訴処分を勝ち取るには、示談成立をアピールすることが最も効果的です。
なお、交通事故における示談には民事上と、刑事上の2種類があります。
まず民事上の示談の多くは、加入している自動車保険会社が代行して行います。その場合の示談金とは治療費、通院交通費、休業損害などに対するものです。
ただ、民間の保険には加入しておらず、自賠責保険のみの加入だった場合、支払われる保険金の額に限度があります。つまり、損害の全額が必ずしも弁償されるとは限らないのです。したがって、もし、自賠責保険で補てんされない部分が生じた場合には、その部分の補てんを被疑者ご自身が慰謝料や示談金として支払う必要があります。
一方、刑事上の示談においては、保険会社とは別に、被疑者ご自身が被害者や遺族に対する謝罪金・見舞金などの意味合いで金銭を支払い、被害者や遺族から許してもらう意味合いがあります。
よく、「交通事故の示談交渉は加入している保険会社の担当に任せているから問題ない」と思われがちですが、これは大きな誤りです。
と言うのも、保険会社は、刑事上の示談をほとんど考慮せず、民事上の示談対応しか行ってくれないからです。
したがって、「刑事裁判になる可能性が高いが、なんとか罰金刑だけで済ませたい」「不起訴処分にして欲しい」といったご要望があれば、保険会社に任せるのではなく弁護士に任せるべきです。
なお、万が一、起訴されてしまった後であっても、裁判官が示談成立を考慮して、執行猶予付き判決を下す可能性もあるため、やはり示談成立の可否は重要です。
(2)反省文・謝罪文を書く
交通事故によって、相手をケガさせてしまった、もしくは死亡させてしまったという事の重大さを被疑者の方に理解してもらい、深く反省してもらいます。そして、被害者が許してくれるかどうか、という点はとても重要ですので、被害者に対して十分に謝罪します。
また、被疑者の方に謝罪文や反省文を作成してもらい、被害者、そして検察官や裁判官にその書面を提出して、きちんと反省している姿勢をアピールしていきます。
(3)運転免許の返納、車の処分
運転免許を返納したり、車を売却・処分することで「二度と運転しない」という点をアピールして、反省している姿勢を示します。
(4)ひき逃げに気付かなかった点を主張
ひき逃げは故意犯です。つまり、人を死傷させる交通事故があったことを認識していなければ、道路交通法違反によって処罰されることはありません。(注意:交通事故で人を死傷させた点については、過失運転致死傷罪などで処罰されます。)
もし、ひき逃げを起こしたことに気づいていなかったと主張できる事情があれば、積極的に主張・立証していくのも弁護活動の一つです。ひき逃げの認識がなく、道路交通法違反については不起訴になるケースは十分にあります。
(5)早期釈放を目指します
ひき逃げ事件の場合、その多くは、逮捕勾留されてしまいます。逮捕勾留の目的の一つが、逃亡の防止であるところ、ひき逃げ事件の被疑者は現に一度逃げている人だからです。被疑者が身柄を拘束されている場合には、早期の身柄解放を目指して、以下の弁護活動を全力で行います。
・勾留請求をしないでもらえるよう、検察官に対して要求する。
↓
(それでも勾留請求されてしまった場合には)
・勾留決定しないよう、裁判官に要求する。
↓
(それでも勾留決定が下されてしまった場合には)
・勾留決定を取り消してもらうよう、裁判官に対して要求する。
いわゆる、“準抗告”を行う。
泉総合ではこれまでに、ひき逃げ事件における多くの勾留阻止、身柄解放の実績がありますので、どうぞご安心ください。
【参考コラム】