賭博罪の成立要件とは?少額の賭け事、麻雀も犯罪になる!
日本において「賭け事(かけごと)」は犯罪であるということは認知している方も多いと思いますが、実は、競馬、競艇、オートレースなどのギャンブルだけではなく、麻雀、囲碁、将棋、トランプなどのカードゲームも、場合によっては賭博行為に該当し得、賭博罪となってしまう可能性があります。
賭博行為は自分たちとは関係ないと考えるかもしれませんが、実は、違法な賭け事は我々が意識していなうちに行われているかもしれません。
実際、プロ野球選手などのスポーツ選手や有名人が賭博で逮捕されるニュースを聞いたことがある方はいらっしゃると思います。
今回は、「賭博罪」について、構成要件や違法性を弁護士が解説します。
1.「賭博」の定義・意味とは?
「賭博」とは、二人以上の者が偶然の勝敗によって財物等の得喪を争うことをいいます。
ここでいう偶然とは「全てを神に委ねる」、つまり、技術的要素の入る余地がないことまでは意味しておらず、偶然性が介在していればいいと考えられています。オンラインカジノであっても例外ではありません。
そのため、ポーカーなどのトランプゲーム、野球賭博やゴルフなどのスポーツ等、多くの事柄が賭博に該当します。裁判例では、囲碁、将棋、麻雀が賭博に当たるとしたものがあります。
賭ける金額が高ければ、じゃんけんなども賭博行為となる可能性があります。
では、賭博はなぜ犯罪とされているのでしょうか?
この点について、判例や学説の多くは、賭博によって「労働による財産の取得という国民の健全な経済生活」が侵害されると言っています。
要するに、賭博を自由に認めてしまうと、我々が真面目に働いてお金を稼ぐことをしなくなり堕落してしまうため、賭博行為は犯罪として処罰されるのです。
また、パチンコ・競馬・競輪・競艇等の公営ギャンブルは、特別法(風営法・競馬法・自転車競技法・モーターボート競走法)により適法化されています。
これは、ギャンブルが公営であるから、あるいは運営にあたって厳しい法規制がなされているため、とされています。
2.賭博罪の種類と構成要件
(1) 単純賭博罪
刑法185条は、「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。」と規定しており、単純賭博罪に懲役刑はありません。
また、同じく刑法185条は「ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」と規定しており、この場合には処罰されません。
条文にある「一時の娯楽に供する物」とは、軽微な価値しかない物を指すといわれています。例えば、その場で飲食するお菓子・ジュースを賭けるような場合には、処罰されません。
(2) 常習賭博罪
刑法186条1項は、「常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。」と規定しています。賭博を常習としていた場合は懲役刑が科され、単純賭博罪よりも重い処罰を受けるのです。
判例は、常習的に賭博をしたかどうかは、賭博行為の種類、賭けた金額等を総合して客観的に判断するとしています。
(3) 賭博開帳罪
刑法186条2項は、「賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。」と規定しています。
条文にある「賭博を開張し」とは、要するに、現代でいえば闇カジノを運営した場合を指します。賭博罪の関連犯罪の中では最も思い刑罰となっています。
3.カジノ法(IR法)で日本のカジノが合法になる?
最後に、2018年7月に成立した通称カジノ法(IR実施法・IR整備法)について説明します。
カジノ法(IR法)というのは正式な名称ではなく、実際は「特定複合観光施設区域整備法」といいます。IRはintegrated resortの略、つまり、統合型リゾートを言います。
上記の名称から察せるように、通称カジノ法は、「統合型リゾート(劇場・映画館・ショッピングモール・ホテル・プール・展示場など)にカジノを設置することを認めた法律」です(※カジノを一般的に解禁することを認めたわけではありません)。
カジノ法は、「①観光産業・地域経済の活性化」「②国の財政改善」を目的としています。
当初は東京オリンピックに合わせた整備が計画されていましたが、新型コロナウイルスなどの影響もあり、長らく計画は停滞していました。
しかし、2029年に大阪で日本初の統合型リゾート(IR)が開業することが2023年に決定しました。
カジノ法(IR法)の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
- カジノ収入の30%を国、認定都道府県等に納付(法192条等)
- 依存防止のための入場規制を設定:7日間で3回、28日間で10回まで(法69条等)
- 本人確認に個人番号カード(マイナンバーカード)を使用(法70条)
- 設置は全国で3か所まで(法9条11項7号)
しかし、ギャンブル依存者の増加を助長させてしまうのではないかとの懸念や、施設内及び周辺地域の治安悪化リスクも否めず、今後の動きに注目したいところです。
当然、カジノ法に則って運営されるカジノでの賭博は違法な行為ではなく、処罰されることはありません。
4.賭博罪のご相談も泉総合法律事務所へ
身近な例だと、雀荘でお金を賭けて麻雀を打つ行為も立派な賭博罪となり、検挙されてしまうリスクがあります。
実際、このような行為が理由で現行犯逮捕され、勾留されてしまった方もいます。しかし、特に単純賭博罪ならば、刑事弁護のサポートを受けながら適切に反省の意を示すことで不起訴処分を勝ち取れる可能性は高いでしょう。
警察に賭博罪の嫌疑をかけられてお困りの方は、是非泉総合法律事務所にご相談ください。