いじめで訴えられた!警察に逮捕される?法律上の罰則はあるの?
「いじめをしてはいけない」…これは皆さん誰もが理解していると思います。
いじめをすると、被害者が法的処置を検討することもあります。
実際、いじめ行為によっては犯罪に該当するものがあり、逮捕や罰則が科される場合があります。
ここでは、いじめと逮捕・罰則について説明します。
1.いじめは犯罪?
いじめ行為は批判されてしかるべきです。しかし、法律上、いじめ罪というのは存在しません。
いじめは態様が様々であり、「いじめ」を定義するのが困難であることが理由の1つだと思われます。
もっとも、いじめ行為が別で定められている犯罪に該当することはあります。
(1) 殴る蹴るなどの暴行
いじめ行為が殴る蹴るなどの暴行行為を伴う場合、暴行罪(208条)が成立します。
また、その暴行で相手を怪我させてしまった場合には、傷害罪(204条)が成立します。
暴行罪の法定刑は2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料となっています。他方、傷害罪の場合、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
なお、身体に物理的な怪我をしなくても、いじめによって被害者がノイローゼなどの精神的な障害を受けた場合は、やはり傷害罪となります。
(2) 相手の持ち物を勝手に壊したり盗ったりする
相手の物を勝手に壊したり、又は、捨てたりした場合には器物損壊罪(261条)が成立します。
また、壊すのではなく盗った場合には窃盗罪(235条)が成立します。
器物損壊罪が成立すると、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処されます。窃盗罪の場合は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
(3) 相手に公然と暴言を吐く
相手に公然と暴言を吐く行為には侮辱罪(231条)が成立します。
最近問題となる、インターネット上での書き込みも侮辱罪が成立する可能性があります。
侮辱罪の法定刑は、拘留又は科料となっています。
「馬鹿」「ブス」などの抽象的な悪口は侮辱罪にとどまりますが、「○○は万引きをしている」などの具体的な事実を示した暴言は、名誉毀損罪(230条)として、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金となる可能性があります。
(4) 嫌がる行為を強いる
相手が嫌がっている行為を、脅迫又は暴行暴言を用いて強いた場合、強要罪(223条)が成立します。
強要罪が成立すると、3年以下の懲役に処されます。
脅迫とは、害悪を与えることを告げることですから、「土下座をしないと叩くぞ」と告げることは脅迫であり、土下座を強いることで強要罪が成立するのです。
なお、「叩くぞ」や「殴るぞ」など人の身体等に害を与えることを告げること、それ自体も、脅迫罪(222条)として、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。
(5) その他の行為
ここまで述べた行為は、いじめだと一般に思われているものです。
職場であれ学校であれ親しい友人間であれ、相手が嫌がっているにも関わらず上記行為が行われると、以上の犯罪が成立する可能性があります。
他方、いじめと思われている行為でも、犯罪が成立しえないものもあります。
例えば、無視したり、その人を避けたりする行為は、犯罪に該当しないので、法律で処罰することはできません。
最近になって、いじめが問題視されるようになったにもかかわらず、いじめ行為に関する立法をしないなんておかしいと考えている方がいると思います。
確かに、いじめ行為を行った者を罰する法律は制定されていません。だからといって、国は何もしていないというわけではありません。
いじめに関する立法として、2013年にいじめ防止対策推進法が成立しました。この法律は、主に学校におけるいじめを防止しようとしたもので、いじめに対して行政や学校が採るべき措置について定めています。いじめ行為を直接規制するものではありませんが、学校を通して、いじめを間接的に規制しようとするものです。
2.いじめで逮捕・罰則を科される?
いじめ行為を行うと、学校や職場で処分を受けることになります。また、その行為が法律に反する場合、加えて以下の事態になる可能性があります。
(1) 逮捕の可能性
いじめ行為をすることで逮捕される可能性があります。
逮捕されると、警察署で取調べを受けることになります。逮捕による身体拘束は2~3日続きます。その期間中は外に出ることはできません。
逮捕された被疑者の身柄は、検察官に送られます。そこで再度取り調べを受けます。そして、検察官は、被疑者の勾留を請求するか否かを判断します。勾留が認められると被疑者は更に10日以上の身体拘束がなされます。
身体拘束中に、検察官は、被疑者を起訴するか否かを決定します。起訴処分がなされると、刑事裁判が行われることになります。
(2) 起訴され裁判になる
裁判で有罪判決が出されると、法定刑の範囲内で刑罰が科されることになります。
日本の刑事司法は、有罪率が非常に高いことで有名です。そのため、起訴処分になった場合には、有罪判決となり罰則が科される可能性が非常に高いです。
(3) 被害者に民事訴訟を提起される
いじめを受けた方は、精神的な損害を被ります。いじめ行為に際して服や物を壊された場合には、財産的な損害を被ることになります。
この場合、被害者は法的措置を採る場合があります。つまり、被害者は、加害者に民事上の訴訟を提起し、損害賠償を請求することができます。
加害者が未成年の場合、その両親など監督責任者が損害賠償責任を問われる場合もあります。いじめが原因で自殺してしまったという最悪のケースでは、賠償金額が数千万円から億単位になる場合もありますから、けっして、いじめを軽く見てはいけません。
いじめをしたのが未成年者の場合
いじめ行為が犯罪に該当する場合、逮捕され、また、裁判になり有罪判決が出された場合には、刑罰が科されることになります。しかし、いじめを行ったのが未成年者の場合は少し異なった手続がなされます。
まず、14歳未満の者が行った行為は処罰されません(41条)が、「触法少年」として、事案によっては、警察、児童相談所を経由して、家庭裁判所の審判を受け、14歳以上の場合と同様の処分を受ける場合があります。
他方、14歳以上の未成年者が犯罪を犯した場合、警察官、検察官は、事件を家庭裁判所に送致します。家庭裁判所は、被疑者を保護処分(保護観察,少年院送致,児童自立支援施設等送致)に付す、又は逆送(成人と同様の刑事処分を科すのが相当と判断し、事件を再び検察官に送致すること)するかなどの判断を下すことになります。
逆送された場合には、通常の刑事手続きが行われることになるのがほとんどです。
[参考記事]
未成年犯罪と成人犯罪との違い。手続、裁判、審判
3.まとめ
いじめは許されるべきことではありません。いじめをすると、逮捕されたり、罰則を科されたりすることがあります。
また、加害者から民事上の損害賠償を提起された場合、損害賠償金を支払う必要が出てきます。
様々な刑事事件の被疑者となってしまいお悩みの方は、一度泉総合法律事務所の弁護士にご相談してみることをお勧めします。