傷害(DV・ドメスティックバイオレンス)に絡む勾留阻止、釈放活動
傷害(DV・ドメスティックバイオレンス)事件は、泉総合法律事務所にも多数依頼があります。DVは、逮捕された後は勾留となる場合がほとんどで、逮捕直後ならともかく勾留決定後に弁護を依頼されると、本来釈放できるものも難しくなってしまう可能性があります。
ここでは、実際に当所に依頼があったDV事件を振り返ると共に、家庭内暴力で逮捕されてしまった場合の弁護活動の流れとポイントについて解説します。
1.DV事件で勾留決定
1-1.逮捕、勾留→刑事弁護依頼
金曜日に息子が妻(義理の娘)に傷害を負わせて逮捕され、日曜日午後に裁判所から勾留の連絡が来たがどうしたらいいのか、と日曜日夕方に電話相談が入りました。
代表の泉が電話で相談に応じるとともに、事案がDVですでに裁判官による勾留決定が出されていましたので、早急に動く必要があると判断して、夕方遅くでもいいので新橋本店(土日祝日は代表の泉が新橋本店に勤めております)に被疑者の妻、被疑者の両親の3名全員に来てもらうように伝えました。
勾留決定と解雇
被疑者が勾留決定のままですと会社の解雇という非常に深刻な事態になりますので、来所時間が遅くなろうとも早急な対応が必要でしたので、代表泉が新橋本店で待っていました。
新橋本店には日曜日午後7時過ぎに3名の相談者が来所され、被疑者の妻から詳しく話を聞きました。妻からは「月曜日は欠勤の連絡をしているため会社は問題がないが、火曜日は欠勤するわけにはいかないので何とかして月曜日に自宅に戻れるようにできないか」との要望でした。そうでないと会社を解雇される可能性があるとのことでした。
1-2.弁護方針の決定―準抗告認容による釈放を目指す
そこで、依頼者からの要望に応えられる可能性がある唯一の方法は、「準抗告」という裁判官が下した勾留決定を取消してもらう裁判を月曜日に提起して、それを認容してもらい、月曜日に釈放を実現することでした。
被疑者の両親からも話を聞き、準抗告認容のポイントを伝えて、そのポイントに沿った方向で妻、両親に対応してもらうことにしました。そのポイント(ノウハウというほどではないのですが、ここでは言及しません)を踏まえて、被疑者の両親に身元引受書、妻・両親にそれぞれ上申書を作成してもらい、8時30分には弁護契約書の作成や釈放の場合の段取り、月曜日の当所弁護士の動き、タイムスケジュールを伝えて打ち合わせを終えました。
準抗告申立書を起案
妻、両親が帰ってから準抗告申立書を起案しましたが、漫然と起案したのでは準抗告認容とはなりません。準抗告を審理する裁判官が認容の判断に傾くように熟慮しながら準抗告申立書を作成する必要があることは当然ですが、準抗告申立書の添付書類も、身元引受書や妻や両親の上申書だけ添付すればいいというものではありません。これまでもそうですが、役立てるものはすべて添付することにしています。
月曜日午前中に被疑者本人にも接見して作成してもらう上申書などがありましたので、それを含めて夜の11時近くに一通りの準備が終わりました。
1-3.準抗告申立書の提出→勾留決定取消、釈放
翌日の月曜日には(代表の泉には執務予定が多数入っていたため)別の弁護士が朝一番で詳細に打ち合わせの上で遠方の警察署に出向き、被疑者に接見して上申書などを作成してもらい、その後地方検察庁に弁護人選任届を提出してから地方裁判所に午後一番で準抗告申立書、添付資料を提出しました。
被疑者を釈放
それから2時間ほどして裁判所から新橋本店に準抗告の結果の連絡が入り、準抗告認容し、勾留決定取消、検察官の勾留請求を却下するとの判断でした。端的に言うと、被疑者を釈放するとの結論です。これによって被疑者の会社の解雇は免れることができ、夫婦の関係もこれを機に見直すことになり、両親からも感謝されて本当に良かったと思ったものです。
2.DV弁護活動の解説
今年に入ってDVがらみの依頼は泉総合法律事務所にも多数ありますが、多くは逮捕されて間もなくの刑事弁護依頼であったため、妻や両親ら(場合によっては妻だけの場合もあります)と十分に打ち合わせして、釈放―勾留阻止に向けてのポイントを押さえた身元引受書や上申書を作成してもらい、それらの書類と弁護士の意見書を検察官や裁判官に提出して釈放―勾留阻止に向けて働きかけることで釈放を実現してきました。
しかし、妻や家族が弁護士に相談するのが、勾留決定された後というケースもあります。これは、妻や家族が「DVは夫婦間の問題で、暴行態様や傷害の程度が軽いことなどから逮捕されるだけですぐに自宅に戻って来るだろう」と考えたことによるものだと思います。
弁護士の選任に失敗しないこと
ですから、10日間の勾留決定の連絡を聞いて急いで弁護士を探すことになってしまい、DV特有の弁護活動が行える刑事弁護経験豊富な弁護士に依頼できればいいですが、そうでないと、勾留取消の準抗告認容はハードルが高いこともあり、最悪の場合準抗告棄却の勾留継続となります。
私どもや他の弁護士がインターネットなどで刑事弁護はスピードが重要だと述べているのは、一つは早く弁護活動を取る方がいい結果も出しやすいことがありますが、もう一つは刑事弁護経験豊富な弁護士を探す時間的余裕があることで、弁護士の選任に失敗しないことがあげられると思います。
3.勾留決定取消(準抗告認容)
準抗告認容にとり重要なことは、一般論として言えば当たり前のことですが、事件の特質を的確につかんで勾留の必要性(逃亡の恐れや証拠隠滅の恐れなど)がないことを具体的に裏付けて、準抗告申立書、添付資料を提出して準抗告を審理する裁判官に認容するように考えてもらうようにすることです。
もう一つは、大半の書類を法律相談の場で作成して署名押印をもらい、引き続いてすぐに準抗告申立書を作成することです。多くの場合には、会社解雇などの可能性から勾留を1日でも早く釈放する必要があるため、刑事相談に来られて弁護依頼を受けたら時間との競争になるためです。
経験に裏打ちされたスピード
もちろん、早ければいいというものではありません。あくまで中身が重要ですが、中身のあるものをいかに早く作成するかが重要です。
代表の泉の場合ですと、準抗告申立書を含めて2時間前後で書類を作成することが可能です。被疑者に接見をして上申書を作成してもらう場合には、この書類作成の2時間に接見や被疑者の上申書作成の時間が加わります。
事案や時間によっては被疑者との接見をしないで準抗告申立書や添付資料を提出して裁判所の判断を仰ぎ、それから被疑者に接見して、その帰りに準抗告認容・勾留決定取消、つまり釈放の連絡を裁判所からもらったこともあります。
4.DVなどの傷害事件は泉総合へ
泉総合法律事務所の弁護士は、代表の泉だけでなく、刑事弁護経験豊富で準抗告認容も多数取り付けております。10日間の勾留決定となり会社の解雇などに直面し困っている家族の方などは(準抗告認容をお約束はできませんが)準抗告認容などの勾留阻止経験、釈放実現実績豊富な泉総合法律事務所にご依頼ください。
土日祝日は代表の泉が原則として新橋本店で待機して、新橋本店でご依頼の場合には、代表泉が他の弁護士と連携して準抗告認容をはじめとする勾留阻止活動に取り組むようにしております。