過剰防衛・緊急避難とは?正当防衛との違いと判例・要件

暴力事件

過剰防衛・緊急避難とは?正当防衛との違いと判例・要件

自己又は他人の権利を守るためにやむを得ずにした行為については「正当防衛」が認められる可能性があることは、ご存知の方が多いと思います。

ここでは、その「正当防衛」と混同されがちな「過剰防衛」「緊急避難」について、その要件や判例の動向を解説します。

ちなみに、正当防衛については「どこまでが正当防衛か?要件について、事例・判決から徹底解明」をご覧ください。

1.過剰防衛

(1) 過剰防衛の意義

防衛の程度を超えた行為を過剰防衛といいます。

防衛の程度を超えた」(36条2項)とは、正当防衛の要件中「やむを得ずにした」とは認められない場合、すなわち、防衛の相当性の要件を欠くことをいいます。

防衛の程度を超えたかどうかは、防衛行為の相当性に関して述べた種々の事情を総合的に考慮して決しなければなりません。

なお、過剰防衛には、質的過剰量的過剰の2つの類型がありますが、前者は急迫不正の侵害に対する防衛行為が相当性の範囲を逸脱した場合のことであり、後者は当初は防衛の程度の範囲内にある反撃であったのが、反撃を続けるうち、相手方の侵害がやみ、又はその程度が著しく弱まったのに、なおそれまでと同様の反撃を続けた場合のことです。

(2) 判例の動向

判例では、既に最判昭34.2.5(刑集13・1・1)が、被告人が防衛行為に出た後、既に侵害態勢が崩れ去った被害者に対して、更なる追撃行為に出た結果、被害者を死亡させた事案に関し、「被告人の本件一連の行為」が全体として過剰防衛に該当すると判断しており、量的過剰の類型の場合と理解することができます。

また、質的過剰における防衛行為の一体的な把握についても、既に最判平9.6.16(刑集51・5・435)が、鉄パイプで被害者の頭部を殴打する暴行、さらに同人を2階から転落させる行為の両者を含む「被告人の一連の暴行は、全体として防衛のためにやむを得ない程度を超えたものであったといわざるを得ない」と判示しており、一連の防衛行為を一体的に把握して過剰防衛を肯定していました。

このような防衛行為の一体的な把握は、実務の一般的な傾向となっていたと思われますが、この点について具体的な判断を示したのが、最決平20.6.25(刑集62・6・1859)と最決平21.2.24(刑集63・2・1)です。

平成20年判例は、結論として過剰防衛の成立を否定しましたが、一般論としては量的過剰が認められることを前提に、その一体的評価の基準を示し、また、平成21年判例は、質的過剰の類型について防衛行為の一体的評価を肯定しています。

2.緊急避難

(1) 緊急避難の意義

緊急避難とは、自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為であって、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えないものをいい、処罰されません(37条1項)。

正当防衛は、違法な侵害に対するものであって正対不正の関係にあるのに対し、緊急避難は、第三者の正当な利益を犠牲にするものであって、正対正の関係にある点において本質的な差異があります。

「カルネアデスの板」の話(古代ギリシャの哲人カルネアデスが挙げた、船が難破して海中に投げ出された者が1人を支える浮力しかない板から他人を突き落として助かることが許されるかという例)は、このような緊急避難の特徴を端的に示すものです。

(2) 緊急避難の要件

①自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難があること

危難にさらされる法益は、法文が列挙する「生命、身体、自由又は財産」(37条1項)に限られず、貞操、名誉等も含まれます。

国家的法益や社会的法益も含めてよいと解されています。

②避難行為が危難を避けるためにやむを得ずにした行為であること

避難行為は、「やむを得ずにした行為」であることを要します。

ここで「やむを得ずにした行為」とは、その危難を避けるために必要な唯一の方法であって、他に方法がなかったことです。

他に方法がない場合に限って補充的に許されるという意味で、これを補充の原則といいます。

③避難行為によって生じた害が避けようとした害の程度を超えないこと

これを、法益権衡の原則といいます。したがって、価値の大きい法益を救うために価値の小さい法益を犠牲にすること(例えば、強盗犯人から逃れるため他人の家に飛び込むこと)や、価値の等しい一方の法益を救うために他方の法益を犠牲にすること(例えば、隣家の飼い犬に噛み殺されそうになった自分の飼い犬を救うため、隣家の飼い犬を撲殺したが、両犬の価値は同じであったとき)は緊急避難として許されます。

しかし、価値の小さい法益を救うために価値の大きな法益を犠牲にすることは許されません(例えば、上記の隣家の飼い犬の例において、自己の飼い犬は雑種であるのに対し、隣家の飼い犬は一見して血統書付きの高価な品種であるとき)。

なお、法益の価値の大小の比較が困難なときもありますが、具体的事情により社会通念により合理的に決するほかはありません。

3.まとめ

以上が、「過剰防衛」「緊急避難」についての解説です。

刑事事件には思わぬところで巻き込まれてしまうものです。

正当防衛のつもりで行動しても、それが過剰防衛と見なされ逮捕されてしまうことがあるかもしれません。

刑事事件はスピード勝負です。逮捕されてお困りの方や、勾留されてしまった方のご家族、また、起訴されてしまいそうだという方も、お早めに泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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