暴力事件 [公開日]

暴行罪・傷害罪は怪我の程度に応じて示談金が変化する?

暴行罪・傷害罪は怪我の程度に応じて示談金が変化する?

【この記事を読んでわかる事】

  • 暴行罪、傷害罪で逮捕された際、弁護士に示談を依頼する意義
  • 暴行罪や傷害罪の場合の示談金、慰謝料の種類
  • 暴行罪、傷害罪の示談金の相場

 

暴行罪と傷害罪では示談金(損害の賠償金や慰謝料)に差があるのでしょうか。また、被害者に怪我をさせてしまった傷害罪の場合には、怪我の程度(軽傷か重傷か)に応じて、示談金はどう変化するのでしょうか。

以下においては、暴行罪・傷害罪の定義、暴行罪・傷害罪における示談の重要性、暴行罪や傷害罪の場合の示談金の内容、暴行罪や傷害罪の場合の示談金の相場などについて、解説することとします。

1.暴行罪・傷害罪の定義

(1) 暴行罪(刑法208条)

暴行罪は、人に暴行を加えることによって成立します。

この罪における「暴行」は、人の身体に対する不法な有形力の行使をいいます。

殴る、蹴るなどがその典型的な例ですが、ほかに、通行人の数歩手前を狙って石を投げつけること、被害者のいる狭い部屋の中で抜き身の日本刀を振り回すこと、被害者の身辺で大太鼓や鉦などを強く連打して空気を振動させ、その振動力を被害者の身体に作用させることも、暴行にほかなりません。

暴行罪を犯すと、2年以下の懲役、30万円以下の罰金、拘留又は科料が科せられます。

(2) 傷害罪(刑法204条)

傷害罪は、人の身体を傷害することによって成立します。

「傷害」の意義については、

  1. 人の生理的機能に障害を与えることであるとする説
  2. 人の身体の完全性を害することであるとする説
  3. 他人の生理的機能に障害を与えること及び他人の身体の外観に重大な変化を与えることであるとする説

があります。

判例は、基本的には1説の立場(最決昭32.4.23刑集11・4・1393)にあり、例えば、女性の毛髪を根本から切断することは暴行にすぎないとしています(大判明45.6.20刑録18・896)。

出血、骨折、病気に罹患させること、病状を悪化させることなどは、いずれの説によっても傷害となります。他方、外見的に痕跡のあることは必要ではありません。

傷害は、通常は暴行、すなわち、人の身体に対する有形力の行使によって行われますが、無形的方法によっても行われ得ます。

例えば、姦淫行為によって性病を感染させること(最判昭27.6.6刑集6・6・795)、人を極度に畏怖させて精神障害を起こさせることなどです。

自宅から隣家に向けて連日ラジオの音声等を大音響で鳴らし続け、慢性頭痛症等を負わせることも傷害に当たります(最決平17.3.29刑集59・2・54)。

また、医師が故意に病人に対する治療を怠ってその病状を悪化させるなど不作為による傷害もあり得ます。

傷害罪を犯すと、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。

故意

暴行による傷害について、暴行の故意だけで足りるのか、それとも傷害の故意を必要とするかについて、見解が分かれています。

すなわち、この罪が故意犯とすれば、単なる暴行の故意では足りず、傷害の故意が必要であるということになります。

これに対し、この罪が故意犯であるとともに、暴行の結果的加重犯を含むとすれば、傷害の故意のある場合のほか、暴行の故意で足りる場合もあるということになります。

通説及び判例(最判昭25.11.9刑集4・11・2239)は、後説を採り、その理由として、㈠暴行罪の規定(208条)において、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは」とされていること、㈡前説を採ると、暴行の意思で傷害の結果を生じた場合は過失傷害罪(209条)となり、暴行の意思で傷害の結果を生じなかった場合は暴行罪となるのと比べ、法定刑の均衡を失することを挙げています。

後説によっても、無形的な方法による傷害は、暴行の結果的加重犯があり得ないので、傷害の故意のある場合に限られることになります。

また、有形的方法による傷害の未遂は、いずれの説によっても、暴行罪で処罰されることになります。

2.暴行罪・傷害罪における示談の重要性

(1) 逮捕後の流れ

暴行罪や傷害罪で逮捕された場合、現行犯逮捕されたが事情聴取の結果すぐに嫌疑が晴れたという場合や、罪が比較的軽く身元もしっかりしていて在宅でも捜査ができるという場合には、例外的に釈放される場合もあります。

しかし通常は、逮捕から48時間以内に、警察は事件を被疑者の身柄付きで検察官に送致し、検察官は、被疑者を受け取ってから24時間以内に、裁判官に対し、より長期の身体拘束を求める勾留の請求をします。

その場合、裁判官は、勾留質問を行って、その当否を審査しますが、罪を犯した疑いがあり、住居不定、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのいずれかに当たり、捜査を進める上で身柄の拘束が必要な場合に、被疑者の勾留を認めます。

勾留期間は勾留請求日から10日間ですが、やむを得ない場合は、検察官の請求により、裁判官は更に10日間以内の延長を認めることもあります。

したがって、当初の勾留から起算して最長20日間(事件によっては最長23日間)身体を拘束されることがあります。その後起訴された場合には、釈放され、又は保釈が認められない限り、更に身体の拘束が続くことになります。

(2) 勾留阻止・釈放のための示談交渉

ところで、勾留が延長されるのは、事案が複雑な場合、共犯事件の場合、証拠収集が困難な場合などですから、一般的には、暴行罪や傷害罪で勾留が延長されるのは、例外的ということになります。

暴行罪や傷害罪で逮捕された際、釈放・不起訴となるためには示談が必要不可欠になります。

この場合の示談とは、事件の加害者と被害者との間で、怪我の治療費(傷害罪の場合)や慰謝料等の損害賠償の問題を、双方の話し合いにより解決することをいいます。

示談が成立したからといって、被疑者に対する刑事処分が必ず軽減されるとは限りません。

しかし、警察や検察庁、裁判所では、刑事処分を決めるに際し、示談の成立を被疑者や被告人に有利な事情として考慮し、刑事処分を軽減する可能性があります。

捜査段階においては、示談が成立した場合、検察官は、起訴・不起訴の決定をするに際して、公判請求ではなく略式命令請求にとどめたり、あるいは、不起訴処分(起訴猶予)で終わらせたりすることも、考えられるのです。

また、示談の成立によって、検察官は(事案によるとはいえ)事件の早期処理が可能になり、被疑者を早期に釈放することも考えられます。

そして、示談が成立した場合には、その結果は最終的な判決において有利な情状として斟酌されますし、保釈の許否の判断でも有利な材料になるといえるのです。

このように、暴行罪や傷害罪のような犯罪では、示談の重要性は高いのです。

3.暴行罪や傷害罪の場合の示談金の内容

(1) 示談金の種類

示談金は、損害の賠償金や慰謝料の金額となります・

身体に対する犯罪の場合、民事交通事故の損害算定基準が参考とされる場合が多いことから、損害の賠償金については、積極損害として、治療費、付添看護費、入院雑費、通院交通費、弁護士費用(被害者に弁護士が付いた場合)が、消極損害として、休業損害、逸失利益が、また、慰謝料については、傷害についての慰謝料と後遺障害による慰謝料が、それぞれ含まれることになります。

そして、事案ごとに、犯行に至る経緯・動機・目的、犯行の方法、犯罪の結果の重大性や犯行態様が異なりますので、被害結果の大小や深刻さ、将来に及ぼす影響、被害感情の強さについては、被害者ごとに斟酌すべき点も異なりますし、実際の事件では、被疑者・被告人側の支払能力が決定的な要素になることも少なくありません。

さらに、傷害の慰謝料の算定については、犯行の態様(平手なのか手拳なのか、膝蹴りなのか足蹴なのか、凶器を用いた場合に、刃物であればその種類及び刃体の長さはどうか、他の物であれば鉄パイプなのか、バット(金属あるいは木)なのか棒状の物なのか、またその回数)、攻撃の部位(頭部、顔面、胸腹部などの身体の枢要部なのか)、傷害の結果(傷跡が残るのか、骨折を伴うのか)、被害者の年齢・性別だけてなく、入通院の期間、治癒(症状固定)までに要する期間などによって判断されることになります。

なお、治療費は、必要かつ相当な実費全額が損害として認められることになります。付添看護費は、入通院の付添費も認められます。

(2) 定額化された示談金

弁護士費用は、ほぼ定額化されています。

傷害の慰謝料については、実務上、入通院日数によりほぼ定額化されています(自賠責基準では、原則として入通院1日につき4200円とされています。)。

また、後遺障害による慰謝料についても、実務上、後遺障害等級により定額化が図られています。

ただし、暴行事件や傷害事件は、交通事故とは異なる側面もありますので、犯行に至った双方の落ち度、被害者の犯行誘発の程度や被疑者の受傷の度合いも考慮されることになります。

以上のような前提で、暴行罪や傷害罪の場合の示談金の相場を見てみましょう。

4.暴行罪や傷害罪の示談金の相場

下記の金額は、上記3の損害の賠償金や慰謝料のうち、必要かつ相当な費用に応じて算定された金額を意味しています。

事案ごとに、個別の事情があれば、金額の増減が図られることになります。

(1) 暴行罪の場合

一般的には、10万円~30万円となる場合が多いようです。

(2) 傷害罪の場合

怪我が全治1週間程度10万円~30万円
怪我が全治2週間程度20万円~50万円
怪我が全治1か月程度50万円~100万円

5.まとめ

酔っ払った勢いなどで、つい相手に暴行を加えたり、大怪我を負わせてしまったりする可能性があります。

暴行罪や傷害罪の弁護なら、刑事事件に詳しい当事務所にお任せください。

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