夫が痴漢で逮捕された場合、釈放されるには?妻にできることとは?

痴漢

夫が痴漢で逮捕

夫が痴漢の疑いで逮捕された場合、逮捕後48時間以内に検察庁に送検され、検察官の取り調べ結果如何では裁判官に勾留請求され、勾留請求を受けた裁判官が10日間の勾留決定を下す可能性もあります。万が一10日間の勾留となれば、会社は無断欠勤の解雇か事件発覚による懲戒解雇となるでしょう。その意味では、何としてでも勾留されないよう、釈放されるようにしなければなりません。

では、釈放されるため、勾留されないためにはどうしたらよいのでしょうか?妻ができる行動には何があるのでしょうか?

ここでは、まず、痴漢・逮捕等について、基本から解説させていただきます。その後、痴漢事件の際の釈放に向けた弁護活動についてご説明いたします。

1.痴漢とは正式にはどのような罪名なのか

実は「痴漢罪」という犯罪はありません。痴漢には、2種類の犯罪が含まれています。

①迷惑防止条例違反 と ②強制わいせつ罪 です。

以下、①迷惑防止条例違反と②強制わいせつ罪を順番に見ていきます。

迷惑防止条例違反

まず、①迷惑防止条例違反とは何でしょうか?

東京都の迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)をざっくり説明しますと

5条1項「何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。」

と、痴漢行為が禁止されていて、それに違反すると、8条1項2号に当たり、罰則として

「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」

常習の場合「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」

という刑罰が科される可能性がある

という仕組みになっています。

東京都以外の神奈川県、千葉県、埼玉県の首都圏をはじめとして全国に同内容の迷惑行為防止条例が制定されています。内容はほぼ同じですが、名称が異なっていることもあります。
迷惑行為防止条例違反の痴漢の要件は同じで、刑罰も多くは同じとなっております。

旦那様が痴漢した場所が走行中の電車内で、電車が都内を走行中のとき、迷惑防止条例違反だとしたら、東京都の迷惑防止条例違反(5条1項)に当たる可能性があります。

強制わいせつ罪

次に、②強制わいせつ罪とは何でしょうか?

強制わいせつ罪は、平成29年7月13日、性犯罪を中心とした刑法改正がありましたので要注意です。

強制わいせつ罪は、手段として、「暴行又は脅迫を用いて」いる点と、犯行場所が迷惑行為防止条例のように公共の場所に限られていない点が、各都道府県の迷惑防止条例と違います。その分悪質ですので、刑罰も、

「六月以上十年以下の懲役」

というように、各都道府県の迷惑防止条例と比べて重く、罰金刑もないため略式起訴がなく正式裁判となり、軽い判決でも執行猶予付き懲役刑となりますので、非常に重い犯罪といえます。

刑法改正の影響

要注意な点が、刑法改正前は「親告罪」と言って、被害者の告訴がないと起訴されませんでした。しかし、刑法改正後は「非親告罪」になりました。ですので、被害者の告訴がなくても、起訴される可能性があります。

それだけでなく、改正以前は告訴されて刑事事件となり逮捕されても、起訴前に被害者と示談して告訴取消を取り付ければ制度上いくら同種前科があり犯行態様が悪質であっても必ず不起訴となりました。

しかし、刑法改正後は弁護士が被害者と示談しても同種前科があったり犯行態様が悪質だったりすると、示談できたからとおって必ず不起訴とは言えなくなりました。この点は正確には検察官の運用を見てみる必要があります。

【参考】痴漢をした場合の問われる罪~迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪

2.逮捕とは(強制・任意の違い)

ニュースやワイドショーで、〇〇逮捕などと頻繁に見かけます。また、任意か強制か、や、勾留などという言葉も聞き覚えがあるでしょう。
次は、このような言葉を整理させていただきたいと思います。

逮捕されると最大48時間拘束

逮捕というと、手錠をはめる、あの一瞬の出来事のことをイメージされる方が多いと思います。しかし、逮捕とは、法律上はもう少し時間的に幅のある概念です。

つまり、最大で48時間逮捕という状態が続きます。要注意なのが、この逮捕の48時間の間は、奥様は旦那様と面会ができない点です。

この記事をご覧になっている方の中にも、まさにこの48時間の逮捕の期間中の方が家族にいらっしゃる方もいるかと思います。
本当に痴漢したの?勤務先には何て伝える?など、奥様は、夜も眠れない状態が続いているかもしれません。

家族も会えない!唯一会えるのが弁護士

この48時間の逮捕の期間内に唯一旦那様に会えるのが、弁護士です。
つまり、奥様が弁護士に「これとこれを夫に聞いて来て。」と頼み、弁護士が旦那様と逮捕期間中に接見し、旦那様の回答を奥様にお伝えするというお手伝いができるのです。

もちろん、刑事弁護の依頼を受けた弁護士は奥様の伝言やご主人の伝言を伝えることが主たる弁護活動ではありません。弁護士は逮捕されたご主人ができるだけ早く釈放されるように、ご主人から事件内容を詳細に聞き取り、勾留の及ぼす影響などを聞き取ったうえで、検察官の取り調べへの対応の助言や、奥様の身元引受書や上申書、ご主人の上申書、弁護士意見書を検察官に提出して、勾留請求しないよう・釈放するように働きかけること、つまり勾留阻止活動、釈放活動をこの段階での主たる業務として行います。

検察官が裁判官に勾留請求をすれば、裁判官の勾留質問への対処の仕方をご主人に助言し、弁護士は裁判官に意見書を提出して釈放を働きかけます。その結果、強制わいせつではない迷惑行為防止条例違反の痴漢の場合には、泉総合法律事務所では多くの場合釈放を実現してきました。

逮捕における強制と任意の違い

次に、強制と任意の違いです。

強制というのは、被疑者の意思に反し、無理矢理行われる処分です。逮捕が典型例です。無理矢理ですので、基本的に、令状が必要です。
捜査機関(基本的には、警察と検察のことです。)が裁判官に令状を請求し、裁判官が許可し、捜査機関が被疑者に令状を見せて強制的に逮捕するという仕組みになっています。

逆に、任意というのは、被疑者の意思に反しない処分です。
例えば、予め、旦那様と捜査機関が日程調整して、決まった日時に、旦那様が警察署などに出かけて、取調べを受けて、終わったら帰宅する、というような取調べが当たります。意思に反しない処分ですので、令状は不要です。

最大20時間拘束される「勾留」

勾留は、逮捕と同様に身柄が拘束されていますが、その身柄の拘束期間が、起訴前は、通常、10日から20日というように、逮捕と比べて長いです。

つまり、無断欠勤が10日から20日続く可能性があり、この場合会社をクビになってしまう危険性が非常に高いです。

3.釈放されるための弁護士による刑事弁護活動内容

無断欠勤が続くことは、当然避けたいところです。仕事が首になったら、今後の家族の生活はどうなるのか、住宅ローンや車のローン、子供の教育費が払えなくなるのでは、など、奥様は心配が尽きないでしょう。

その心配・不安を解消するために、弁護士は「釈放」に向けて、勾留阻止活動や準抗告などの刑事弁護を行うことになります。

勾留阻止

勾留も強制の処分ですので、検察官が裁判官に勾留請求し、裁判官がその請求を検討した上で勾留許可するという仕組みになっています。

そこで弁護士は、まず、検察官に、家族の身元引受書や上申書、弁護士意見書を提出して、勾留請求をやめていただきたいと働きかけることができます。また、裁判官の勾留質問については、被疑者に対応を助言するとともに、弁護士意見書を裁判官に提出して、裁判官に勾留決定しないでいただきたいと働きかけます。

これらの勾留阻止活動・釈放活動の結果、迷惑行為防止条例違反の痴漢の場合は、当所では、否認以外の場合にはほとんど釈放を実現しています。

準抗告

残念ながら勾留されてしまった後でも、弁護士は、勾留を取り消していただきたいと申立をする裁判を提起することもできます。これが「準抗告」です。

準抗告が認められ勾留決定が取り消され釈放されることは極めて少ないのですが、当所では4週間連続して4件準抗告が認容されたこともあり、その中には迷惑行為防止条例違反の痴漢の刑事事件もありました。

示談

上の釈放のための弁護活動にもかかわらず勾留となってしまった場合には、弁護士が被害者と示談交渉を直ちに行い、示談が早期に成立して検察官に示談書を提出すれば、迷惑行為防止条例違反の痴漢の場合には通常その日に勾留取消となり釈放されます。

示談の流れは、通常、まず、弁護士が捜査機関に被害者の連絡先を教えてもらい、弁護士が被害者に電話し、お会いする日程調整をし、弁護士が被害者に旦那様に書いていただいた謝罪文をお渡しします。次に、もう一度、弁護士が被害者にお会いし、示談金をお渡しし、示談書に署名とハンコをいただきます。

奥様が捜査機関に「示談したいから、被害者の連絡先を教えてください。」とお願いしても、通常、教えてくれません。また、奥様が被害者にお会いすることも通常できません。被害者の連絡先を知ることができるのも、被害者とお会いできるのも、弁護士だけです。

【参考】弁護士が語る!痴漢の様々なケースと逮捕・示談の流れ

4.痴漢の刑事弁護は泉総合法律事務所まで

以上から、旦那様が痴漢で逮捕されたとき、釈放されるにはどうしたらよいかを考えるにあたり、漠然とした心配や不安がだいぶクリアになったのではないかと思います。

それを踏まえて、更なるアドバイスが聞きたいという方、旦那様が逮捕されてしまった方・釈放してほしいという方は、是非、泉総合法律事務所にご来所いただければと思います。

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