痴漢 [公開日]2018年3月28日[更新日]2020年10月8日

痴漢で在宅事件・在宅捜査になった場合にこそするべきこと

痴漢事件を犯してしまったときでも、身柄を拘束されずに在宅での捜査となることがあります。

在宅事件となれば、勤務先や学校に通うこともでき、普段通りの生活を維持することができます。

しかし、「在宅事件」となったことで、以降、身体拘束や起訴されることはないと予想して安心しきってはいけません。在宅事件となった場合であっても、その後の状況の如何によっては、逮捕・勾留されたり、起訴されてしまうこともあります。

そのため、在宅事件における刑事手続きの内容や流れについてしっかり理解しておく必要があります。

この記事では、身柄事件、在宅事件の流れ、痴漢で在宅事件となった際にとるべき対応について解説します。

1.逮捕(身柄事件)と在宅捜査(在宅事件)の違い

犯罪の被疑者が特定されると、刑事処分の証拠を集めるために必要な捜査が行われます。

この場合、被疑者の身柄を拘束(逮捕)して手続きを進める場合(身柄事件)と、身柄を拘束せずに被疑者を在宅させたまま手続きを進める場合(在宅事件)とがあります。

これは捜査を進める方法の違いで、証拠を集めるために捜査を行うといった点では同様です。

(1) 身柄事件となる場合

逮捕されると、警察官は48時間以内に被疑者の身柄と事件書類を検察官に送致する必要があります(送検)。

事件の送致を受けた検察官は、24時間かつ逮捕から72時間以内に、裁判官に勾留を請求します。請求しないならば釈放しなくてはなりません。

勾留請求を受けた裁判所は、被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれがあるときには、被疑者の身柄を勾留する決定をします。

身柄の勾留は、勾留請求の日から最大20日間です。この間に起訴されなければ、釈放されます。

起訴された場合には、保釈が認められない限り、引き続き刑事被告人として身柄を拘束されます。

(2) 在宅事件となる場合

最初から逮捕せずに捜査を進めるケースや、当初逮捕・勾留をしたが途中で身柄を解放して捜査を継続する場合が在宅事件です。被疑者は在宅で通常の生活をしながら、捜査機関の呼び出しに応じて出頭し、取り調べを受けることになります。

在宅事件となるのは、被疑者に逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れがないときです。例えば、次のような場合です。

  • 軽微な犯罪
  • 犯罪事実を認めている
  • 家庭、職業がしっかりしている
  • 家族や上司などが身元引受人となっている
  • 共犯者がいない
  • 初犯である・余罪はない
  • 犯行様態が悪質でない

以上は、犯人が明らかな場合を前提としています。

これに対し、そもそも痴漢行為の証拠が乏しく、被疑者に痴漢事件の嫌疑があるとまで言えないときは、逮捕も勾留も認められませんから、当然に在宅事件となります。

(3) 「書類送検」は在宅事件の場合の検察官送致

ニュース番組などで、有名人が書類送検されたことを耳にすることがあります。

書類送検とは、被疑者の身柄を拘束せずに、事件(書類)だけを検察官に送致することをいいます。

書類送検された事件が起訴相当となったときには、在宅事件のまま起訴されます(在宅起訴)。この場合、痴漢事件では、初犯などの場合には通常の刑事裁判ではなく略式手続で行われることが一般的です。

略式手続は、罰金刑相当の軽微な事件のときに、被疑者の同意の下で行われます。

通常の刑事裁判は、必ず対面の公判手続で行われますが、略式手続は、公判を開かずに書面で審理が行われます。

略式手続のときは、検察官は略式起訴を行い、裁判所は略式命令によって罰金刑を下します。

略式手続について、詳しく知りたい方は以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

略式起訴・略式裁判(略式請求)と不起訴処分で必ず知っておくべきこと

2.在宅事件のメリット・デメリット

身柄事件と比較した場合の在宅事件のメリット・デメリットについて、以下で確認しておきましょう。

(1) 在宅事件のメリット

在宅事件のメリットをまとめると次の通りになります。

  • 身柄を拘束されないので、肉体的・経済的・精神的な負担が少ない
  • 普段通り通勤・通学できる(解雇・退学のリスクがなくなる)
  • 身柄事件に比べて不起訴となる可能性が高い

在宅事件の最も大きなメリットは、やはり「身柄を拘束されない」ことに尽きます。

身柄事件となれば、最大で23日間通勤・通学が不可能となります。そのため、身柄事件となったために(逮捕されたことを知られて)、勤務先や学校から不利益処分(解雇・減給・退学など)を科されることもあります。

また、身柄を拘束されていないので、自らの手で信頼できる弁護士を探すことも可能となります。

(3) 在宅事件のデメリット

実は、在宅事件はメリットばかりではなくデメリットもあります。

在宅事件の一番のデメリットは、「捜査期間の定めがない」ことです。

身柄事件では、検察官は逮捕後最長23日以内に「起訴・不起訴」を判断しなければなりません。この期間中に検察官が起訴しないときには、被疑者を釈放しなければなりません(もちろん、処分保留として釈放し、その後、在宅事件として捜査を継続し、最終的に起訴することも可能です)。

しかし、在宅事件では、身柄事件のような身柄拘束期間が定められていません。そのため、捜査が長期化する可能性があります。

起訴の有無について被疑者に連絡がくるまで数ヶ月、1年以上かかることも珍しくなく、被疑者としてはどの程度の期間が経てば自分の処遇が決まるのかについて予想できない場合が多いです。そのため、身柄事件に比べ長期間「起訴されるかどうかわからない」状態に置かれることになります。

また、在宅事件では、「起訴前の国選弁護人選任」の制度がありません。そのため、私選弁護人を選任しなければ、示談や検察官との交渉に必要な弁護活動を行ってもらえません。

この後に説明するように、「在宅事件となった」ことに安心しきって私選弁護人を選任しそびれたことで、起訴・有罪となるケースもあり得ます。

3.痴漢で在宅捜査となった場合の注意点

(1) 警察・検察官の呼び出しにはきちんと対応する

在宅事件の取扱いなるのは、多くの場合、「逃亡」や「証拠隠滅」によって捜査に支障を来さないと判断されたからです。したがって、警察や検察官から取り調べのため、警察署や検察庁への呼び出しや電話があったときには、きちんと対応しなければなりません。

犯罪事実を認めている在宅事件における各捜査機関からの呼び出しは1~2回ずつのことが多いですが、事件によってはそれ以上に及ぶ場合もあります。

出頭要請に応じないなど、警察や検察官に対し不誠実・非協力的な態度をとると、証拠隠滅、逃亡の危険を疑われて、逮捕される危険もあります。

(2) 在宅期間中の行動に気をつける

在宅事件では、捜査が数ヶ月~1年以上におよぶことも珍しくありません。

捜査機関は、期間制限のために、集中した捜査を必要とする身柄事件の処理を優先しますから、どうしても在宅事件の捜査は「時間のある時に」まわされます。また、検察・警察の忙しさや、被害者の対応(例えば被害者がなかなか事情聴取に応じないなど)によっても、時間がかかることがあるからです。

長く時間がかかっているからといって、「有罪になってしまうのではないか」と不安に煽られ姿を隠すこと、示談を急ごうと「被害者に直接会いに行く」ことは絶対にいけません。

また、再度痴漢を犯さないというのは当然のことです。
再犯となれば、身柄事件となることは避けられないでしょう。

「本人にそのつもりがない」としても、捜査期間に疑われることのないよう、十分に注意して慎重に行動すべきです。

4.「不起訴」となるために在宅事件ですべきこと

痴漢事件を起こしたときに最も重要なのは「不起訴処分」にしてもらい、前科をつけないことです。

身柄を拘束されずに済んだということで、安心しきってはいけません。「在宅事件=不起訴」というわけではないからです。

不起訴処分にしてもらうためには、捜査期間中の対応が非常に重要です。

(1) 痴漢したことを認めている場合

実際に痴漢したことを争わない場合には、被害者との示談の成否が起訴の有無に大きくかかわってきます。

痴漢事件には、都道府県が定める「迷惑防止条例違反」の場合と、刑法が定める「強制わいせつ罪」の場合の2つの場合があります。

迷惑防止条例違反も強制わいせつ罪も、親告罪ではありません。よって、示談が成立しても起訴される可能性は残ります。

しかし、検察官は、示談の成否を起訴の判断において非常に重視します。示談が成立していることで、不起訴となる可能性が格段に高まります。

初犯であれば、示談成立によってほとんどのケースで起訴を回避できるでしょう。

在宅事件になったと安心して、被害者への対応を疎かにすれば、「示談が成立してない」ということで、起訴されてしまうこともありえます。起訴されれば刑罰や懲役刑(強制わいせつの場合)が科され、前科となってしまいます。

早期に刑事事件の被害者と示談をまとめるには、痴漢の事実を反省し、そして、弁護士に示談交渉を依頼することが必須です。

[参考記事]

痴漢の逮捕後の流れと弁護士に示談交渉を依頼するメリットとは?

(2) 痴漢したことを争うケース(否認事件)

痴漢の事実を争う(冤罪を主張する)ケースでは、私選弁護人を選任して「嫌疑なし」もしくは「嫌疑不十分」を目指して弁護活動を行う必要があります。

残念ながら、我が国の刑事手続では、「無罪推定の原則」は、事実上有効に機能しておらず、被疑者は有罪と推定されてしまいます。

したがって、被疑者が「やっていない」とただ主張(否認)しても、不起訴となるわけではないのは明らかです。痴漢冤罪事件の実績のある弁護士に依頼をして、早期に十分な証拠を集め、適確な弁護活動を行う必要があります。

[参考記事]

痴漢冤罪を証明したい! DNA・繊維鑑定は本当に有効なのか?

5.痴漢で在宅事件となっても泉総合法律事務所へ相談を

身柄を拘束されずに在宅事件となれば、どうしても安心してしまいがちです。普段通りの生活を行えるようになれば、仕事や学校の都合で、事件の対応が後回しとなってしまうこともあるでしょう。

しかし、在宅事件だからといって不起訴が確定したわけではありません。

在宅事件では、捜査期間中にきちんと対応して示談を成立させれば、高い確率で不起訴とすることができます。

在宅事件だからと気を抜いてしまうことなく、できるだけ早く、刑事事件に詳しい泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

痴漢の刑事弁護は泉総合法律事務所まで

痴漢など絶対にしないと思っていても、ふと魔が差して痴漢をしてしまった、ということは誰にでもあり得ることです。迷惑防止条例違反の行為といえども、逮捕・起訴されたりしますし、処分が罰金であっても前科となります。

不起訴などで最終処分を有利に導くためには、刑事弁護の経験豊富な弁護士に弁護依頼をしてください。

泉総合法律事務所は、刑事事件、中でも痴漢の弁護経験につきましては大変豊富であり、勾留阻止・釈放の実績も豊富にあります。

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