要注意!痴漢で在宅事件・在宅捜査になった場合にこそするべきこと
【この記事を読んでわかる事】
- 痴漢で在宅事件となった時こそ気をつけるべきこと
- 在宅事件だからといって安心してはいけない理由
- 在宅事件に弁護士へ弁護依頼することで、どんな弁護活動をしてくれるのか
痴漢事件を犯してしまったときでも、身柄を拘束されずに在宅での捜査となることがあります。
在宅事件となれば、勤務先や学校に通うこともでき、普段通りの生活を維持することができます。
しかし、「在宅事件」となったことで、安心しきってはいけません。在宅事件となった場合であっても、その後に不適切な対応や、対応が不十分なときには、「身柄事件への切り替え」や起訴されてしまうこともあります。
この記事では、痴漢で在宅事件となった際にとるべき対応について説明します。
1.逮捕(身柄事件)と在宅捜査(在宅事件)の違い
犯罪の被疑者が特定されると、起訴の要否を判断するために必要な捜査が行われます。
この場合、被疑者の身柄を拘束(逮捕)して手続きを進める場合(身柄事件)と、身柄を拘束せずに被疑者を在宅させたまま手続きを進める場合(在宅事件)とがあります。
(1) 身柄事件となる場合
逮捕され身柄事件となったときには、48時間以内に被疑者の身柄と事件書類を検察官に送致する必要があります(送検)。
事件の送致を受けた検察官は、24時間以内に、勾留請求の可否を判断します。
勾留請求を受けた裁判所は、被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれがあるときには、被疑者の身柄を勾留する決定をします。
身柄の勾留は、勾留決定から最大20日間(逮捕から23日間)です。この間に起訴されなければ、釈放されます。
起訴された場合には、引き続き刑事被告人として身柄を拘束される場合があります(保釈される場合もあります)。
(2) 在宅事件となる場合
在宅事件になれば、逮捕した被疑者の身柄を留置施設で拘束せずに(もしくは逮捕せず)、被疑者在宅のまま取り調べを行います。
在宅事件となるのは、次のような場合です。
- 軽微な事案であって被疑者も事実を認めているとき
- 逃亡や証拠隠滅のおそれがないとき
- 初犯である(常習性がない)場合のように、犯行様態が重くないとき
痴漢事件の場合には、「迷惑防止条例違反」でかつ「同居家族の身元引受人」がいるときや、「逮捕したものが犯人であると断定できる証拠」がない場合に、在宅事件となることがあります。
(3) 「書類送検」は在宅事件の場合の検察官送致
ニュース番組などで、有名人が書類送検されたことを耳にすることがあります。
書類送検とは、被疑者の身柄を拘束せずに、事件(書類)だけを検察官に送致することをいいます。したがって、在宅事件では、身柄の拘束がないので必ず書類送検となります。
書類送検された事件が起訴相当となったときには、通常の刑事裁判ではなく略式手続で行われることが一般的です。
略式手続は、罰金刑相当の軽微な事件のときに、被疑者の同意の下で行われます。
通常の刑事裁判は、必ず対面の公判手続で行われますが、略式手続は、公判を開かずに書面で審理が行われます。
略式手続のときは、検察官は略式起訴を行い、裁判所は略式命令によって罰金刑を下します。
略式手続について、詳しく知りたい方は「略式起訴・略式裁判(略式請求)と不起訴処分で必ず知っておくべきこと」をご覧ください。
2.在宅事件のメリット・デメリット
身柄事件と比較した場合の在宅事件のメリット・デメリットについて、以下で確認しておきましょう。
(1) 在宅事件のメリット
在宅事件のメリットをまとめると次の通りになります。
- 身柄を拘束されないので、精神的な負担が少ない
- 身柄を拘束されないため、普段通り通勤・通学できる(解雇・退学のリスクがなくなる)
- 身柄事件に比べて不起訴となる可能性が高い
- 身柄を拘束されないため、自ら弁護士を選任できる
在宅事件の最も大きなメリットは、やはり「身柄を拘束されない」ことに尽きます。
身柄事件となれば、最大で23日間通勤・通学が不可能となります。そのため、身柄事件となったために(逮捕されたことを知られて)、勤務先や学校から不利益処分(解雇・減給・退学など)を科されることもあります。
また、身柄を拘束されていないので、自らの手で弁護士を探すことも可能となります。
(3) 在宅事件のデメリット
実は、在宅事件はメリットばかりではなくデメリットもあります。
在宅事件の一番のデメリットは、「捜査期間の定めがない」ことです。
身柄事件では、検察官は逮捕後23日以内に「起訴の要否」を判断しなければなりません。この期間中に検察官が起訴しないときには、被疑者を釈放しなければなりません。
しかし、在宅事件では、身柄事件のような起訴判断までの期間が定められていません。そのため、捜査が長期化する可能性があります。
起訴の有無が決まるまで数ヶ月かかることも珍しくなく、身柄事件に比べ長期間「起訴されるかどうかわからない」状態に置かれることになります。
また、在宅事件では、「起訴前の国選弁護人選任」の制度がありません。そのため、私選弁護人を選任しなければ、示談や検察官との交渉に必要な弁護活動を行ってもらえません。
見出し4で説明するように、「在宅事件となった」ことに安心しきって私選弁護人を選任しそびれたことで、起訴・有罪となるケースもあり得ます。
3.痴漢で在宅捜査となった場合の注意点
(1) 警察・検察官の呼び出しにはきちんと対応する
在宅事件の取扱いなるのは、「逃亡」や「証拠隠滅」によって捜査に支障を来さないこと大前提です。したがって、警察や検察官から取り調べのための呼び出しや電話があったときには、きちんと対応しなければなりません。
警察や検察官に対し不誠実・非協力的な態度をとると、「身柄事件」に切り替えられることもあります。
(2) 在宅期間中の行動に気をつける
在宅事件では、捜査が数ヶ月におよぶことも珍しくありません。
「有罪になってしまうのではないか」と不安に煽られ姿を隠したり、示談を急ごうと「被害者に直接会いに行く」ことは絶対にいけません。
再度痴漢を犯さないというのは、当然のことです。再犯となれば、身柄事件となることは避けられないでしょう。
「本人にそのつもりがない」としても、捜査期間に疑われることのないよう、十分に注意して慎重に行動すべきです。
4.「不起訴」となるために在宅事件ですべきこと
在宅=不起訴ではありません!
痴漢事件を起こしたときに最も重要なのは「不起訴処分」にしてもらうことです。
身柄を拘束されずに済んだということで、安心しきってはいけません。「在宅事件=不起訴」というわけではないからです。
不起訴処分にしてもらうためには、捜査期間中の対応が非常に重要です。
(1) 痴漢したことを認めている場合
実際に痴漢したことを争わない場合には、被害者との示談の成否が、起訴の有無に大きくかかわってきます。
痴漢事件には、都道府県が定める「迷惑防止条例違反」の場合と、刑法が定める「強制わいせつ罪」の場合の2つの場合があります。
迷惑防止条例違反も、強制わいせつ罪も、親告罪ではありません。よって、示談が成立しても起訴される可能性は残ります。
しかし、検察官は、示談の成否を起訴の判断において非常に重視します。示談が成立していることで、不起訴となる可能性が格段に高まります。
初犯であれば、示談成立によってほとんどのケースで起訴を回避できるでしょう。
在宅事件になったと安心して、被害者への対応を疎かにすれば、「示談が成立してない」ということで、起訴されてしまうこともありえます。起訴されれば刑罰が科され、前科となってしまいます。
早期に刑事事件の被害者と示談をまとめるには、弁護士に依頼することが必須です。
(2) 痴漢したことを争うケース(否認事件)
痴漢の事実を争う(冤罪を主張する)ケースでは、私選弁護人を選任して「嫌疑なし」もしくは「嫌疑不十分」を目指して弁護活動を行う必要があります。
被疑者が「やっていない」とただ主張(否認)しても、不起訴となるわけではありません。
十分な証拠を集め、法律的に適確な主張を行う必要があります。
【参考】痴漢冤罪は何故起きる? DNA・繊維鑑定は本当に有効なのか?
5.痴漢で在宅事件となっても泉総合法律事務所へ相談を
身柄を拘束されずに在宅事件となれば、どうしても安心してしまいがちです。普段通りの生活を行えるようになれば、仕事や学校の都合で、事件の対応が後回しとなってしまうこともあるでしょう。
しかし、在宅事件だからといって不起訴が確定したわけではありません。
在宅事件では、捜査期間中にきちんと対応することで、高い確率で不起訴とすることができます。
在宅事件だからと気を抜いてしまうことなく、できるだけ早く、刑事事件に詳しい泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。