痴漢の刑事弁護活動
1.はじめに – 痴漢の類型は2種類
痴漢には、迷惑行為防止条例違反(正式な条例名は都県により異なります)の痴漢と、強制わいせつの痴漢、それに準ずる悪質な条例違反の痴漢があります。
どちらの痴漢に当てはまるかにより、逮捕されるのかどうか、逮捕に続く勾留となるのかどうかが異なってきます。勾留は20日間、延長されると最大20日間です。
同様にして、痴漢の類型によって、弁護士の刑事弁護のあり方も異なってきます。
2.痴漢で逮捕される場合
痴漢で逮捕されるケースというのは、強制わいせつの痴漢(主として下着の中に手を入れる痴漢)や、同一女性にストーカー的に繰り返す痴漢の他、痴漢を認めず否認した場合(酔っぱらって覚えていない場合も含む)などです。
また、通常なら逮捕されない比較的軽微な痴漢でも、警察の対応によっては逮捕されることもあります。
逮捕後の流れ
痴漢で逮捕されたら、2日間は警察の留置場で身柄拘束されます。その間、家族は本人(被疑者)と面会することは通常できません。弁護士のみが被疑者と接見して事情を聴くなどの刑事弁護活動をすることができます。
逮捕され留置場で身柄拘束された後は、2日間で釈放となるわけではなく、速やかに検察庁に送検され、検察官の取調べを受けます。
検察官は、強制わいせつの痴漢や、悪質な痴漢、被疑者が否認している痴漢の場合には、通常,被疑者を10日間警察署に留置する手続である勾留をするよう裁判所に請求します。
3.痴漢の弁護活動
以下、泉総合法律事務所での刑事弁護活動について説明いたします。
(1) 逮捕直後
家族から刑事弁護の依頼をうけますと、検察官の取り調べに先立ち、早急に被疑者に接見して事件内容を把握するとともに、検察官の取り調べに対する対応につき、豊富な弁護経験に基づいた助言をします。
家族には、家族の身元引受書や上申書、嘆願書を作成してもらうとともに、被疑者や家族からの聴取内容とこれまでの刑事弁護経験を踏まえた、検察官が勾留請求を思いとどまるような内容の弁護人意見書を作成し、これらを弁護人選任届とともに検察官に提出します。
このような釈放活動の結果、検察官が裁判所に勾留を請求せず、被疑者を釈放することも多くあります。
検察官が裁判所に対して勾留請求をした場合には、検察官に提出した書類を再検討し、書類を補充するなどして、裁判官の勾留質問(これにより被疑者を勾留するかどうか決定します)に先立ち、書類を勾留質問担当の裁判官に提出します。書類だけでは伝えきれない事情などがある場合、必要に応じて裁判官と面会をすることもあります。
このような刑事弁護活動の結果、勾留請求後でも、裁判官が勾留決定をせずに釈放となることが多数あります。
【参考】家族が逮捕された!家族はどう知るのか、何をするべきか?
(2) 勾留決定後
強制わいせつの痴漢やかなり悪質な痴漢の場合、否認している場合には、通常10日間の勾留決定がされ、裁判所から家族へと勾留決定となった旨の連絡がいきます。
勾留決定の場合、担当弁護士は、勾留取消請求や、釈放を求める裁判(準抗告)を申し立てることができます。
しかし、これらはめったに認容されません。
否認の場合、原則として準抗告は却下されますが、泉綜合法律事務所は,強制わいせつの痴漢や悪質な痴漢の場合でも、準抗告認容や、勾留決定取消・釈放を勝ち取ったことがあります。
泉総合法律事務所は、痴漢以外でも様々な事案で準抗告を認めてもらい、釈放を勝ち取っていますので、最後まで諦めないことが重要です。
【参考】勾留請求とは?準抗告で釈放を目指すなら泉総合法律事務所へ!
(3) 逮捕されない事件(在宅事件)の場合
在宅事件の場合、警察で上申書と調書を作成し、捜査は終了します。
警察での初回の取調べが終わった時、家族に身元引受人として警察に迎えに来てもらうのが通常ですが、家族と連絡が取れないなどの事情がある時には、まれに警察から職場に連絡を入れ、上司が身元引受人として迎えに来てもらうことで会社に発覚することもあります。
身元引受人に迎えに来てもらう時、警察には、会社に絶対連絡しないように強く訴える必要があります。
逮捕されない在宅事件で、警察での調書作成が終わると、検察庁に書類送検され、検察官が刑事処分を下します
強制わいせつ以外の痴漢は、罪を認めていて弁護士に刑事弁護を依頼していなければ、通常罰金刑となります。
しかし、罰金刑でも前科ですので、安易に考えると大きな後悔をすることになります。資格に影響を与えることがありえますので、十分気を付けることをお勧めします。
罰金刑だからとあまく考えず、刑事弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼して、被害者から示談を取り付けてもらい不起訴の獲得をめざすことを強くおすすめします。
【参考】在宅事件でも起訴・前科!?長期化するからこそ弁護士に相談を!
(4) 強制わいせつの痴漢の場合
強制わいせつ罪は、2017年7月に刑法が改正されてから、親告罪ではなくなりました。よって、以前のように、示談が成立すれば不起訴となるとは限りません。前科があったり、犯行態様が悪質だったりすれば、示談が成立しても検察官の判断で起訴、正式裁判となり、執行猶予付き懲役刑(同種前科などから実刑となることもあります)を宣告されることもあります。
それだけに、強制わいせつの痴漢の場合、刑事弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼されることをお勧めします。
【参考】家族が強制わいせつで逮捕された場合、どのような弁護活動がされる?
(5) 酔っぱらって痴漢した場合(否認)
酔っぱらっていて痴漢をしたことを覚えていない、という方がいらっしゃいます。しかし、「覚えていないから痴漢行為をしていない」ということにはなりません。
この場合、痴漢行為を否認したとして逮捕されることが多いです。
逮捕された後の取り調べで「覚えていない」と供述すれば、最大20日間勾留され、最悪の場合会社を解雇されてしまう可能性があります。このような事態を避けるためにも、酔っぱらって痴漢し逮捕されてしまった方の家族は、お早めに泉総合法律事務所に刑事弁護をご依頼ください。
【参考】泉総合の弁護活動:酔っ払っての刑事事件(痴漢、暴行・傷害、窃盗)
4.否認している場合の弁護
被疑者が否認しており、他方で目撃証言など確実な証拠があった場合には、逮捕、勾留の後に起訴となり、保釈までは警察の留置場ないし拘置所に長期間勾留されるのが通常です。
起訴するのは確実な証拠があるからですので、正式裁判(公判)で無罪判決を勝ち取ることは難しいのが現状です。
(1) 強制わいせつの痴漢の場合
強制わいせつの痴漢の場合、罰金刑はありませんので、否認を続けると示談交渉できず執行猶予付き判決が厳しくなる(つまり実刑判決になる)可能性が高くなるという大きなデメリットがあります。
(2) 迷惑行為防止条例違反の痴漢の場合
迷惑行為防止条例違反では、判決は通常、罰金刑です。
争うことで失うもの(会社の解雇と罰金刑)と、痴漢を認めて示談が成立することで得られる結果(初犯なら不起訴)を考えてもらい、否認を貫くかどうかをご本人に決めていただくことになります。
(3) 否認を続けた場合はどうなるか
被疑者の方の大半は中年男性(いわゆる家庭の大黒柱)ですから、会社を解雇されれば家族が路頭に迷うことになります。
被疑者の方からは、どうすれば早く帰宅でき、会社を解雇されないで済むのか、といった質問を当然多く受けます。
そのような質問を受けた場合には、遅くとも検事調べの時に「覚えていないからやっていないとも言えないし、証拠があるのであればやったのだと思う」という限度で痴漢行為を認めるしかないと回答します。
それに加えて、痴漢行為を認めても、被害者と示談できれば(前科などがなければ)不起訴となり、経歴に傷がつかないことを伝えます。
(4) 示談交渉による不起訴獲得
被害者と示談をすることで、通常の場合不起訴となり、会社を解雇されずに経歴にも傷がつきません。否認を続けるか、示談を成立させて不起訴となるか、どちらを選択するかは被疑者本人の問題です。弁護士はその判断に従って弁護活動をすることになります。
泉総合法律事務所が今まで経験したケースでは、どなたも会社、家族の生活を守るために痴漢を認め、検事調べの段階で釈放となっています。いずれの場合も被害者の方からお許しを得て示談が成立し、不起訴となりました。
【参考】痴漢事件の逮捕後の流れと示談交渉を弁護士に依頼するメリットとは?
(5) 痴漢冤罪の場合
稀ですが、痴漢冤罪を訴える方がいます。
痴漢冤罪で逮捕され否認をしている場合、弁護士によって刑事弁護方針が違います。
泉総合法律事務所では、被疑者に対し、
- 検事調べで勾留請求がされ、その後に行われる裁判官の勾留質問を経て、10日間の勾留決定がされること
- 否認している場合、準抗告でも勾留決定を取消すことはできないこと
- 勾留延長でさらに10日間勾留延長されて、合計22日間身柄拘束されること
- 被害者や目撃証言の信用性が十分なもので、その段階でも犯行を否認していれば、検察官が起訴して正式裁判になる可能性があること
- 今までの痴漢を争う裁判では、一部を除いて有罪判決となっていること
- 結果、会社を解雇されるのが通常であること
などを伝えます。