国際手配(国際指名手配)とはそもそもどのような制度なのか?

刑事事件弁護

国際手配(国際指名手配)とはそもそもどのような制度なのか?

犯罪には国境がないといわれて久しく、近年は、国際的な交通網や通信網の発達、特にインターネットの急速な普及に伴い、種々の国際犯罪が敢行されるようになっています。

ニュースでよく「国際指名手配」という言葉を聞くことがあると思います。しかし、下記の「ICPO」の関係では「国際手配」の用語が用いられ、また、日本国内の手続の関係では「指名手配」(犯罪捜査規範31条、32条)の用語が用いられていますので、以下においては、「国際指名手配」ではなく、「国際手配」の用語を用いることにします。

そこで、国際刑事警察機構、国際手配制度、国際逮捕手配後の自首、国際逮捕手配された事件・容疑の具体例などに触れながら、国際手配について詳しく説明していきます。

1.国際刑事警察機構

国際刑事警察機構(International Criminal Police Organization。なお、日本国内では頭文字「ICPO」の略称で呼ばれていますが、海外ではインターポール[Interpolは、International Policeの短縮形で、テレグラフの符号からとったもの。]の名称で呼ばれることが多いようです。以下「ICPO」といいます。)は、57か国・地域の警察機関を構成員として発足し、2017年(平成29年)6月末現在の加盟国数は、190の国・地域となっています。日本は、1952年(昭和27年)に加盟しました。

ICPOの目的は、「刑事警察間における最大限の相互協力の確保及び推進並びに一般法犯罪の予防及び鎮圧に効果があると認められるあらゆる制度の確立と発展」(憲章2条)です。この目的の達成のため、ICPOは、様々な活動を行っており、その活動のひとつとして、国際手配制度があります。

2.国際手配制度

(1) 国際手配制度の趣旨

国際手配制度は、ICPOが開発し、発展させてきた制度であり、全加盟国の警察の組織力を通じて、国外逃亡被疑者の所在発見、行方不明者の発見、身元不明死体の身元確認等に努めるものです。

(2) 国際手配の手続

国際手配を希望する場合、一般的には、加盟各国に設置された国家中央事務局(National Central Bureau[以下「NCB」といいます。]。NCBは、自国の警察とICPOの事務総局や加盟各国の警察とをつなぐ窓口機関に当たるもので、国際犯罪者に関する情報の提供、偽造犯罪に関する情報の収集・提供等の任務を行います。日本では警察庁が指定されています。)が、ICPOの事務総局に国際手配をして欲しい旨要請します。

国際手配を要請されたICPOの事務総局は、国際手配をすることに問題がないかどうかを検討し、問題がなければ要請された内容に沿って国際手配書をICPO加盟国のNCBに配布して手配します。

国際手配書を受領したNCBは、警察機関の各部署に国際手配書の内容を伝達し、伝達された警察機関の各部署は、国際手配の内容に従って犯罪者の身柄を拘束したり、情報を提供したりします。

(3) 国際手配書の種別

各NCB等の依頼等により、ICPOの事務総局が発行する国際手配書による手配には、次の9つの種別があります。

①国際逮捕手配書(赤手配書)

引渡しを目的として、逃亡犯罪人の身柄の拘束を求めるもの。

②国際情報照会手配書(青手配書)

被手配者の所在発見を求め、又は被手配者の正確な人定事項、犯罪経歴等に関する情報を求めるもの。

③国際防犯手配書(緑手配書)

常習的国際犯罪者に関する情報を通報し、各国警察に注意を促すもの。

④国際行方不明者手配書(黄手配書)

行方不明者、自救無能力者等に関する情報を求めるもの。

⑤国際身元不明死体手配書(黒手配書)

国内で発見された身元不明死体について通報し、その身元を照会するもの。

⑥武器等警告手配書(オレンジ手配書)

偽装爆弾、小包爆弾その他危険物について、各国警察、公的機関及び国際機関等に警告をするもの。

⑦特殊手口手配書(紫手配書)

特異な事件や手口について通報し、各国警察の注意を促すもの。

⑧ICPO国際連合特別手配書

国際連合安全保障理事会タリバーン・アルカーイダ制裁委員会から要請があったテロリストについて周知するもの。

⑨盗難美術品手配書

盗難された美術品又は文化的価値を有する物品を探し出すことや、疑わしい状況で発見された物品を特定することを目的とするもの。

また、他にも、NCB間で直接行われる斉報手配(ICPO通信網を使用して全NCBに対して行われるもの)や個別手配も活用されています。

3.国際逮捕手配後の自首

国際逮捕手配された後に、警察に自首(出頭)した場合、罪は軽くなるのでしょうか。

自首とは、犯人が捜査機関に対し、自己の犯罪事実を申告してその処分を委ねる意思表示ですが、刑法上の自首は、罪を犯した者が「捜査機関に発覚する前」に申告することを要します。

したがって、国際逮捕手配された者が自首しても、刑法上の自首には当たりませんので、実体法上、刑の減免(刑法42条、80条、93条、228条の3等)の恩恵を受けることはできません。

しかも、国際逮捕手配される容疑は、極めて重大かつ悪質、あるいは凶悪な事件が対象とされるため、仮にその容疑者が警察へ出頭したとしても、実体法上の自首には当たりませんし、もちろん事件・容疑内容によるとはいえ、裁判の量刑上有利に斟酌されるのは難しいとされています。

4.国際逮捕手配された事件・容疑の具体例

(1) 日本人が国際逮捕手配されている主な事件・容疑

  1. よど号ハイジャック事件(容疑者:赤木志郎・若林盛亮・魚本公博・岡本武・小西隆裕)⇒容疑(強盗致傷・所在国外移送目的略取)
  2. 山岳ベース事件(容疑者:坂東國男)⇒容疑(殺人・傷害致死・死体遺棄)
  3. あさま山荘事件(容疑者:坂東國男)⇒容疑(殺人・殺人未遂・銃刀法違反)
  4. テリアビブ空港乱射事件(容疑者:岡本公三)⇒容疑(殺人・殺人未遂等)
  5. 連続企業爆破事件(容疑者:大道寺あや子・佐々木規夫)⇒容疑(殺人・殺人未遂・殺人予備・爆発物取締罰則違反)
  6. ハーグ事件(容疑者:奥平純三)⇒容疑(逮捕監禁・殺人未遂等)
  7. クアラルンプール事件(容疑者:奥平純三)⇒容疑(逮捕監禁等)
  8. ダッカ日航機ハイジャック事件(容疑者:坂東國男・佐々木規夫)⇒容疑(ハイジャック防止法違反)
  9. 欧州における日本人男性拉致事件(容疑者:森順子)⇒容疑(結婚目的誘拐)
  10. 欧州における日本人男性拉致事件(容疑者:若林[旧姓・黒田]佐喜子)⇒容疑(結婚目的誘拐)
  11. 欧州における日本人女性拉致事件(容疑者:魚本[旧姓・安部]公博)⇒容疑(結婚目的誘拐)
  12. 近未來通信事件(容疑者:石井優)⇒容疑(詐欺)

(2) 国際逮捕手配されていた容疑者が日本で逮捕された主な事件・容疑

  1. ドバイ日航機ハイジャック事件・ダッカ日航機ハイジャック事件(容疑者:丸岡修)⇒容疑(ハイジャック防止法違反等)・・無期懲役が確定(服役中に病死)
  2. ハーグ事件(容疑者:重信房子)⇒容疑(逮捕監禁・殺人未遂等)・・懲役20年の刑が確定(服役中)

5.まとめ

自分には関係ないと思っていた刑事事件でも、思わぬところで加害者となり逮捕されることがあります。刑事事件に関わってしまった人やその家族は、お早めに弁護士に相談してください。

泉総合法律事務所には、元検事の弁護士を始め、刑事専門の弁護士が多数在籍しています。刑事事件に関する様々なお悩みに専門家が親身になって対応いたしますので、是非一度無料相談をご利用ください。

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