有罪判決でも刑務所に行かないことはあるのか?
犯罪を犯した場合、逮捕・勾留され、検察官に起訴される可能性があります。検察官に起訴されると、裁判となり、有罪判決が出されると刑罰が科されます。
刑罰と言うと、刑務所に入ることをイメージすることが多いと思います。しかし、そんなことはなく、有罪判決が出されても刑務所に行かないことが多々あります。
ここでは、有罪判決(実刑判決が出された場合を含む)が出された場合で、刑務所に行かないですむときについて解説します。
1.刑罰の種類
刑罰にはいくつかの種類があります。
(1) 懲役
刑罰と聞いて真っ先にイメージするのが、懲役だと思います。懲役とは、犯罪者を刑事施設に拘置して、所定の作業を行わせる刑罰です。
懲役には期限がない無期懲役と、有期懲役(1月以上最大30年以下)とがあります。
暴行罪、傷害罪、窃盗罪、強盗罪等、多くの犯罪に懲役刑が定められています。
(2) 禁錮
禁錮とは、犯罪者を刑事施設に拘置する点では懲役と変わりませんが、所定の作業を行うことが科されない刑罰です。禁錮も無期禁錮と1月以上最大30年以下の有期禁錮とがあります。
禁錮刑が定められている犯罪として、公務執行妨害罪、業務上過失致死傷等罪、名誉毀損罪等があります。
[参考記事]
禁固刑、懲役刑はどちらが重い?違いと刑務所での生活について解説
(3) 罰金
罰金とは、一定の金銭を国に支払う刑罰です。罰金は1万円以上とされており、上限については犯罪について定めた規定がそれぞれ明示しています。
(4) 拘留・科料
拘留とは、1日以上30日未満、刑事施設に拘置する刑罰です。科料とは、1000円以上1万円未満の金銭の支払いをする刑罰です。
拘留・科料は侮辱罪などで定められています。
(5) 死刑
死刑は、その名の通り、犯罪者の生命を奪う刑罰です。絞首により執行されます。
死刑の言い渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置されます。
現住建造物等放火罪、殺人罪、強盗殺人罪などで定められています。
2.刑務所に行かない場合
上で説明したことから分かるように、刑務所に行く可能性のある刑罰は懲役・禁錮・拘留・死刑です(罰金・科料が払えない場合、労役場留置の可能性がありますが、ここでの説明は割愛します)。
それでは、有罪判決が出された場合に刑務所に行かないで済むのはどのような場合でしょうか。
[参考記事]
刑務所の中の生活。家族・友人はどんな暮らしをしているの?
(1) 執行猶予が付いた場合
執行猶予付きの判決が出た場合、刑の執行が猶予されますので、とりあえずは刑務所行きを免れます。
執行猶予期間を経過するまでに、執行猶予が取り消される行為(例えば、再び犯罪を行って懲役刑や禁錮刑に処せられた場合など)をせず平穏に暮らしていれば、刑が執行されることはなくなります。
執行猶予を科すことができるのは、3年以下の懲役・禁錮、50万円以下の罰金の言い渡しを受けた場合です。これは法定刑(条文に規定されている刑罰)ではなく、実際に処断された刑罰を指します。
例えば、殺人罪の法定刑は死刑・無期懲役・5年以上の懲役となっていますが、自首の成立など法定の減軽事由があることによって一度減軽がされると2年6月以上の懲役まで下限が下がります。
そのため、3年以下の懲役に処される可能性があり、その場合には執行猶予付きの判決が出されることがあります。
他方で、殺人罪など犯し、死刑判決や無期懲役の判決が出された場合には、執行猶予はつかないので、確定すれば、すぐに刑務所に行くこととなります。
[参考記事]
執行猶予とは?執行猶予付き判決後の生活|前科、仕事、旅行
(2) 刑の執行が停止された場合
有罪判決が確定しても、刑の執行が停止された場合には、刑務所に行かないことになります。
刑の執行が停止される場合は様々です。例えば、死刑、懲役・禁錮・拘留の言い渡しを受けた者が心神喪失状態にある場合には、法務大臣や検察官は執行停止が義務付けられます。刑の意味を理解できない者に対する刑罰の実施は制裁として無意味だからです。
刑の執行により著しく健康を害する場合、70歳以上の場合、受胎後150日以上の場合等には、人道的見地から、検察官の裁量によって執行を停止することが可能です。
もっとも、これらの事情が無くなった後に刑は執行されます。
(3) 刑の時効
公訴時効とは別に、刑の時効という制度も存在します。刑の時効とは、判決の確定から一定の期間、刑が執行されずにいた場合、刑の執行が免除される制度です(死刑を除く)。
ただし、刑の時効は、もっとも短期の拘留・科料であっても、刑の確定から1年以上経過する必要があるので、刑の時効が完成する事態はほとんどないでしょう。
3.刑務所に行かないためにはどうすればいいか
刑務所に行かないようにするためには、犯罪を犯さないことが一番です。
犯罪を犯してしまった場合には、まずは検察官に不起訴処分としてもらうことを目指します。それでも起訴されてしまった場合には、懲役刑と比べて負担の少ない罰金刑の獲得、加えて執行猶予の獲得を目指します。
不起訴処分や罰金刑・執行猶予付きの判決のため最も重要なのは、被害者との示談です。示談とは示談金を支払う代わりに、犯罪行為を許してもらうという被疑者と被害者の合意を指します。
示談が成立すれば、被疑者を処罰する必要性が、示談がない場合と比べ相対的に減少したとしてとして、検察官が不起訴処分とする可能性が高まります。
また、裁判となっても、示談の成立は被告人に有利な事情として考慮されます。
加えて、早い段階で示談が成立すれば逮捕・勾留等の身体拘束も防げる可能性があります。
[参考記事]
刑事事件の示談の意義・効果、流れ、タイミング、費用などを解説
逮捕、勾留を刑罰と同様の制度と誤解している方がいますが、違います。
刑罰は犯罪に対する制裁であり、刑事裁判を経て犯罪事実が立証されたことが必要です。
他方、逮捕・勾留は、犯罪の疑いがある段階で、証拠の隠滅と逃亡を防いで、後の刑事裁判の適正と被疑者の出頭を確保するために行われますから、刑事裁判で要求される厳密な立証は不要です。逮捕・勾留されたことは、その者が犯罪を犯したことを直ちに意味するわけではありません。
4.まとめ
刑務所に収監されると、仮釈放を受けるか、刑期を満了するまで外に出る事は出来ません。これからの人生のためには、犯罪事実を反省しつつ、後の人生を刑務所で過ごすことを防ぐ必要があります。
犯罪を犯した方は、すぐに泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。