否認事件の弁護のあり方〜黙秘を貫き不起訴を勝ち取った詐欺事件

刑事事件簿

否認事件の弁護のあり方〜黙秘を貫き不起訴を勝ち取った詐欺事件

今回は、泉総合法律事務所所属弁護士の刑事弁護体験談をご紹介いたします。否認事件に対する弁護のあり方を、具体例を元に紹介させていただきます。

黙秘を貫き不起訴を勝ち取った詐欺、商標法違反事件

事件内容

警察から被疑者として何度か呼び出され、取り調べを受けている、という依頼者(被疑者)が事務所に相談に来ました。

疑われているのは詐欺罪、そして商標法違反でした。具体的には、インターネットオークションで本物のブランド品として出品し売却したものが、実は偽物だった、というものでした。

本人の主張(否認)

依頼者(被疑者)がそのブランド品を出品しそして売却したことは間違いありませんでした。しかし、依頼者(被疑者)はそれが本物のブランド品だと思っていた、つまり、偽物であるとの認識がありませんでした。これは、詐欺及び商標法違反の「故意」がなく、罪には問われない、ということです。

刑事弁護活動内容

私の経験上、いずれ間違いなく逮捕される事件であると感じました。そこで、依頼者(被疑者)にはその覚悟をしてもらったうえで、逮捕されてから私が面会に行くまでの対応をアドバイスしました。数日後、警察から依頼者(被疑者)を逮捕したという連絡が入りました。

このような状況で弁護人が直ちに判断しなければならないことは、捜査機関の取調べで、依頼者(被疑者)に話をしてもらうのか、それとも一切話をしない、つまり黙秘をしてもらうのかです。私は捜査機関に話をするメリットがない限りは、基本的に黙秘をするべきだと考えています。そこで、この事件で依頼者(被疑者)が捜査機関に話をするメリットがあるかを考えました。

事件の争点

この事件の争点は先ほど述べたとおり、依頼者(被疑者)に詐欺や商標法違反の故意があったかどうか、つまり、依頼者(被疑者)が「出品したブランド品が偽物であることを認識していたかどうか」です。このような人の内心の証明は、その人自身の供述に限るため、非常に困難なものとなります。

このような場合、捜査機関は依頼者(被疑者)自身にその事を認めさせようと躍起になって取り調べを行います。それは、刑事裁判の大原則として、依頼者(被疑者)が有罪であること、この事件で言えば依頼者(被疑者)が偽物であると認識していたことは捜査機関が証明しなければならない、というルールがあるからです。

依頼者(被疑者)には、自分が無実であることを証明する義務はないのです。このルールは、国家権力を使って捜査をする側と、一個人でしかない依頼者(被疑者)との力の差を考え、公平にするために定められたものです。

客観的な証拠が必要

また、依頼者(被疑者)がいくら「偽物だとは知らなかった」と言い張ったとしても、それだけではあまり意味はありません。依頼者(被疑者)が「偽物だとは知らなかったこと」を裏付ける別の客観的な証拠が必要となるのです。

実は、依頼者(被疑者)自身も、今回出品していたブランド品をインターネットオークションで購入していました。しかも出品したのと同じサイトにおいてです。そして、その際の購入金額は、明らかに本物のブランド品であることを前提とした非常に高い金額でした。

これらのことは、捜査機関であれば依頼者(被疑者)が何も言わなかったとしても、絶対に捜査し見つけることが出来る事実です。そして、私はこの事実だけで依頼者(被疑者)自身も本物だと騙されて購入した被害者であることが明らかになると確信しました。

これらのことを考えて、私は依頼者(被疑者)には捜査機関に話をするメリットはないと判断しました。そこで、依頼者(被疑者)に、黙秘をするよう、指示しました。

結末(勾留後に釈放、不起訴処分)

身柄解放活動なども並行して行いましたが、残念ながらすべて認められず、依頼者(被疑者)は約20日間勾留されてしまいました。依頼者(被疑者)には、おそらく身柄解放は認められず、20日ほどの高速になることはあらかじめ伝えておきました。そして、なぜ黙秘をするべきなのかもしっかりと説明し、依頼者(被疑者)にもきちんと納得してもらいました。依頼者(被疑者)は私との約束をしっかり守ってくれましたし、私も頻繁に依頼者(被疑者)に面会に行きました。

結果、依頼者(被疑者)は勾留最終日に釈放され、後日、不起訴処分となりました。

黙秘の重要性について

刑事事件では、どんな事件であっても、被疑者となった人は捜査機関の取り調べを受けることになります。そして、特に否認事件では、取り調べに対する対応がその後の結末を大きく左右します。弁護士はその取り調べに対するアドバイスをします。そして、黙秘をすべきか話をするべきか、即座に判断しなければなりません。一度話をしてしまい、それが証拠として残ってしまえば、その後黙秘しても効果は大きく下がるからです。

取り調べはほとんどが撮影

現在、裁判員裁判対象事件では、警察での取り調べも検察での取り調べも、ほぼすべてがビデオで撮影されています。裁判員裁判対象事件以外の事件でも、否認事件の場合には、検察での取り調べはほとんどが撮影されています。昔は、警察官などが取り調べの最後に作成する「供述調書」に署名をしなければ、何を話しても証拠として扱われることはありませんでした。

しかし、現在はもう状況が違います。話をしている依頼人の姿がすべて録音され録画されており、それ自体が証拠になる危険があるのです。供述調書に署名しなかったからといって、その録音録画映像が証拠として使えなくなることはないのです。

多くの弁護士は、「黙秘をさせる必要があるか」という考え方をしています。しかし、話をするメリットがない限り、基本的には黙秘をするべきでしょう。否認事件の場合には、それが鉄則だと考えます。

泉総合法律事務所は全力で弁護活動をいたします

泉総合法律事務所は、各支店の男性弁護士全員が刑事事件弁護に取り組んでおり、全ての弁護士が豊富な刑事弁護経験を持っております。刑事事件専門の弁護士事務所と同等の実力と実績がありますので、逮捕されて被疑者になってしまったという方は、どうぞ泉総合法律事務所にご相談ください。

各弁護士が釈放・不起訴に向け、全力で弁護活動をいたします。

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