本屋での犯罪は万引きだけではない!盗撮で逮捕・起訴される場合

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本屋での犯罪は万引きだけではない!盗撮で逮捕・起訴される場合

「盗撮」といえば電車やバスなどの事件を想像するかもしれませんが、最近、本屋(書店)での盗撮被害も多く発生しています。
本屋で盗撮してしまった場合、どのような罪となるのでしょうか。前科をつけないための対策方法も押さえておく必要があります。

今回は、本屋で盗撮をして見つかったときに適用される刑罰と、とるべき対処方法について、弁護士が解説します。

1.盗撮とはどのような犯罪か

本屋の犯罪というと、「万引き」と思われるかもしれません。
しかし、実際には、本屋での「盗撮」被害が増えています。盗撮した画像をネットにアップしている人もいますし、盗撮だけでは済まず、女子高生に体液をかけてしまった男性が逮捕された事例などもあります。

ところで、盗撮をすると、どのような犯罪が成立するのか、ご存知でしょうか?

(1) 本屋での盗撮は「迷惑防止条例違反」

実は、日本には「盗撮罪」という犯罪の類型は、ありません。盗撮をすると、多くのケースでは「迷惑防止条例違反」となります。

迷惑防止条例とは、各都道府県が定めている条例で、人に不快感を催させるような迷惑行為や暴力行為を禁止するものです。自治体によっては「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という名称になっていることもあります。

迷惑防止条例は、各都道府県が定めるので、細かい内容は自治体によって異なりますが、盗撮は、どこの条例でも禁止されています。

たとえば東京都の場合「公共の場所や乗り物で、下着や身体を撮影した場合」に処罰されると規定されています。刑罰は、「一年以下の懲役又は百万円以下の罰金」です(東京都の場合)。

迷惑防止条例が適用されるのは、「公共の場所」で盗撮行為をした場合です。たとえば、駅や電車などの乗り物の中や、花火大会、各種イベントなどの人が集まる場所などで盗撮をすると、迷惑防止条例違反となります。本屋で盗撮したときにも、迷惑防止条例違反となるでしょう。

(2) 公共の場所以外の盗撮は、軽犯罪法違反

公共の場所以外で盗撮をした場合には、軽犯罪法という法律違反が成立します。軽犯罪法では、のぞき見行為を禁止しているからです(軽犯罪法1条23号)。

たとえば、家やお風呂、トイレや更衣室などで盗撮をすると、軽犯罪法違反となります。
その場合、同時に住居侵入罪が成立することも多いです。

2.迷惑防止条例が成立する要件

盗撮によって迷惑防止条例違反が成立するのは、どのようなケースなのでしょうか?その要件を確認していきましょう。

(1) 公共の場所で撮影する

まずは、公共の場所で撮影をする場合であることが必要です。迷惑防止条例違反は、基本的に「公共の場所」で行われた犯罪を取り締まるものだからです。

本屋は、不特定多数の人が利用する場所ですから、通常は公共の場所に該当するでしょう。

(2) 通常、衣類で隠されている部分を撮影する

迷惑防止条例が成立するためには、「通常は衣服で隠れている部分」を撮影することが必要です。

普段から露出されている腕や脚を撮影しても「盗撮」にはなりません。海水浴場やプールで人の水着姿を撮影することも、盗撮にはなりません。

(3) 下着や身体を撮影する

迷惑防止条例違反で規制される「盗撮」は、「下着や身体」を撮影する行為です。たとえば、スカートの下にカメラを差し入れてパンツやお尻を撮影すると、盗撮となります。

それ以外の、衣類やアクセサリーなどを撮影しても、盗撮にはなりません。

(4) 相手の許可無く撮る

「盗」撮というくらいですから、相手の許可無く撮影をすることも、要件となります。
相手が撮影を許諾しているなら、下着や身体を撮影しても盗撮にはなりません。

3.本屋での盗撮方法と発覚するパターン

本屋で盗撮が行われるとき、どのような方法で行われて、どのようなきっかけで発覚することが多いのでしょうか?盗撮のパターンを見てみましょう。

(1) 本屋で多い盗撮のパターン

本屋で多いのは、本を読んでいる女性に近づいて、スカートの下にカメラを入れて撮影するパターンです。女性が本を読むのに熱中しているので、盗撮されていることに気づきにくいのです。

また、本屋では、自分も本を立ち読みしているフリをすれば、長時間同じ人の隣にいても不自然ではありません。周囲の人や本屋の店員にも気づかれずに盗撮することができます。

本屋には常連がいるので、頻繁に通ってきて盗撮していても、まさか盗撮犯人とは思われませんし、ときどき本当に雑誌などを買っていったら、本屋にとってはお得意様です。万引き犯のように目をつけられることもありません。

また、本屋には、いろいろな年代やタイプの女性が来るので、いろいろな好みの人がターゲットを見つけることができます。

(2) 本屋での盗撮が発覚するパターン

それでは、本屋で盗撮していると、どのようなきっかけで発覚するのでしょうか?

①被害者本人が気づくパターン

1つには、被害者が気づくパターンがあります。

いくら本に熱中しているとは言っても、ふとしたきっかけで視線をずらして下を見ることもあります。また、動いた拍子に盗撮犯人の手やカメラが見えたり身体に当たったりすることもあります。

②本屋の店員が気づくパターン

また、本屋の店員が気づくこともあります。

本屋の店員は、本を片付けたり、万引き犯を見張ったりするために店内を巡回・監視して、怪しい動きをする人がいないか、チェックしています。特に、最近は盗撮犯も増えているので、そういった人に注意をしている本屋もあるでしょう。

そこで、女性に近づいて不自然な動きをしている客がいたら、注意深く観察されて、ふとしたきっかけで盗撮を発見されます。

③他の客が気づくパターン

また、他の客が見つけることもあります。後ろを通りがかった客が盗撮犯人に気づいて本屋の店員に報告し、騒ぎになってその場で現行犯逮捕されるのです。

また、本屋に監視カメラが設置されているケースでは、カメラに盗撮犯が写っていて、後に盗撮が発覚するケースもあります。

4.盗撮が発覚したら逮捕されるのか

盗撮が発覚したら逮捕されるのか

盗撮が発覚すると、逮捕されるのでしょうか?
盗撮では、現行犯逮捕される場合と通常逮捕される場合、逮捕されない場合の3つのパターンがあると考えましょう。

比較的多いのは、逮捕されない場合と現行犯逮捕される場合です。

(1) 現行犯逮捕される場合

盗撮しているところを被害者や店員、他の客などに見つかると、その場で現行犯逮捕されてしまうことがあります。そして、そのまま警察を呼ばれて、警察に連行されてしまいます。

この場合、そのまま勾留請求されて身柄拘束される可能性もありますが、勾留されずに釈放されることもあります。その場合、被疑者在宅のまま、捜査が進められます(在宅捜査)。

(2) 後日逮捕される場合

盗撮犯人の場合、現行犯逮捕されないこともあります。盗撮しているときには気づかれなかった場合や、怪しまれていたけれどもはっきりと犯行を確認されなかったケースなどです。

この場合、後から被害者や店員などが監視カメラを確認することにより、盗撮が発覚します。そして、後日、被害者が警察に被害届を出して、警察が捜査を開始し、犯人の身元を突き止めて、通常逮捕をします(後日逮捕)。

(3) 逮捕されない場合

盗撮をしても、逮捕されないこともあります。特に、初犯で悪質ではないケースでは、逮捕されないことが多いです。

ときどき、テレビなどで「校長先生が盗撮した」「警察官が盗撮した」などとショッキングな報道が流れていますが、こうした事案では、逮捕されていないことが多いでしょう。

(4) 逮捕の基準

それでは、盗撮で逮捕されるか、されないかは、どのような基準で決まるのでしょうか?
これについては、以下のような要素を考慮して決まると考えましょう。

・犯行の悪質性
・常習性
・逃亡のおそれ
・証人威迫のおそれ

犯行態様が悪質であれば、逮捕の可能性が高くなります。
常習性が高く、以前に同様の犯罪をしていたら、逮捕の可能性が高まります。

逃亡のおそれがある場合にも逮捕の可能性が上がります。住居不定のケース、1人暮らしで定まった仕事をしていないケース、家族がいないので、身元保証してくれる人がいないケースなどでは、逮捕される可能性がかなり高くなると考えましょう。

さらに、被害者を威迫する可能性があると考えられる場合、逮捕される可能性があります。

(5) 逮捕されなくても起訴されることがある

逮捕されなくても、後日被害者が被害届を提出したら、被疑者在宅のまま捜査が進められます。

一端逮捕されても、身柄拘束されずに釈放されたケースでも同じです。これらの場合でも、証拠が揃ったら、後日に起訴される可能性もあるので、注意が必要です。

在宅のまま起訴された場合、多くのケースでは「略式裁判」という手続きとなります。略式裁判では、実際には裁判所で審理が開廷されることはないので、被告人が裁判所に出席する必要はありません。

自宅で普通に生活していたら、起訴状と罰金の納付書が送られてくるので、それに従って支払をしたら、刑罰を終えたことになります。

ただ、罰金であっても、刑罰は刑罰ですし、盗撮(迷惑防止条例違反)の前科がついてしまうので、注意が必要です。

前科は、一度ついたら一生消えることがなく、次に何らかの犯罪を犯したときには、捜査機関によって参照されてしまいます。

そこで、在宅捜査となったときにも、不起訴処分を獲得することが重要です。不起訴処分になると、略式を含めた刑事裁判にならないので、罰金刑が適用されることもなく、前科がつくこともないからです。

5.逮捕された後の手続きの流れ

盗撮で逮捕されてしまったら、その後の手続きの流れがどうなるのか、確認しましょう。

逮捕されると、その後48時間以内に検察官の元に送られます。
そして、その後24時間以内に勾留が行われます。このとき、勾留されずに釈放されることもあります。その場合には、逮捕されないケースと同様に、在宅捜査となります。

勾留された場合には、勾留期間が原則10日となりますが、さらに10日間、勾留延長される可能性があります。そして、合計20日間の勾留期間が切れると、検察官は起訴するか不起訴にするかを決定しなければなりません。
起訴されたら刑事裁判となり、多くの場合、罰金刑が適用されます。

これに対し、不起訴になったら裁判にはならず、刑罰を適用されることはありませんし、前科がつくこともありません。

6.盗撮における示談

(1) 示談で不起訴になる可能性が高くなる

盗撮で、在宅捜査が進められる場合であっても身柄拘束されて捜査が進められる場合であっても、重要なのは「不起訴処分」を獲得することです。
不起訴になったら、裁判になることがなく、前科がつくことを避けられるからです。

不起訴処分を獲得するためには、被害者と示談をすることが重要です。刑事手続では、示談ができると、被疑者や被告人にとって良い情状として評価されるからです。

盗撮事件の場合で、起訴前に示談ができると、検察官はほとんどのケースで不起訴処分とします。

(2) 盗撮の示談金の相場

盗撮の示談金は、初犯か常習犯か、犯人の社会的地位などによっても異なります。

通常の方法(本屋でスカートの下にカメラを入れて撮影)で初犯の場合には、犯人がしっかり反省していたら、10万円~30万円程度で済むことが多いです。

これに対し、特に悪質なケース、常習犯のケースや、社会的地位が高い人、収入の高い人などの場合、50万円やそれ以上になることも普通です。

(3) 示談を進める方法

盗撮してしまったときに被害者と示談を進めるときには、弁護士に対応を依頼することが重要です。

まず、本屋で盗撮するとき、犯人は、通常被害者と面識がないものです。そのまま逮捕されてしまったら、被害者の連絡先がわかりません。逮捕されないケースでも、被害者の連絡先を教えてもらうことは、通常できません。

また、連絡先を知っているケースでも、被疑者が自分で連絡をすると、被害者は示談に応じないことがほとんどです。

弁護士に依頼すると、弁護士は検察官を通じて被害者の連絡先を確認することができます。そして、法を守る立場のものとして被害者に連絡をして、被疑者の客観的な状況や反省、初犯であったことなどを伝えて理解を求め、示談交渉を進めることができます。

弁護士が被害者に依頼して、示談をすると同時に、嘆願書を書いてもらうことも可能です。嘆願書とは、被害者が、被疑者の処分を軽くしてほしいと望む内容の書面です。これがあると、被疑者の情状はさらによくなるので、不起訴になる可能性が非常に高くなります。

示談が成立したら、弁護士が検察官に示談書と嘆願書を送付して、検察官に不起訴処分を求めます。

不起訴が決定したら、弁護士が本人にそのことを伝えます。このことで、盗撮をした人は、「被疑者」の立場から解放されて、一般市民と同じ立場で生活していけるようになります。

7.盗撮の示談は泉総合法律事務所へ

本屋では、盗撮しやすいのでついつい盗撮行為に及んでしまうことがありますが、見つかると逮捕されたり起訴されたりする可能性があります。たとえ略式裁判でも、罰金刑の前科がついてしまうので注意が必要です。

このような事態を避けるためには、早期に被害者と示談を成立させるなど、防御活動が重要でとなります。早めに、刑事事件についての専門的な知識を持った弁護士に相談をしましょう。

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