盗撮 [公開日]2022年1月31日

盗撮再犯で逮捕された!初犯との違い

盗撮の再犯は罪が重くなると言われます。これは本当なのでしょうか?

この記事では、そもそも「再犯」とは何か?「常習犯」とは違うのか?盗撮の再犯で注意するべき点などについて説明します。

1.盗撮の罰則

まず前提として、盗撮を罰する条文を引用して説明します。

盗撮は、国レベルの法律ではなく、各都道府県が制定する地方条例で処罰されます。正式名称は様々ですが、通称「迷惑防止条例」と呼ばれ、ほぼ同様の内容となっています。

東京都の条例を例として説明しましょう。

東京都の迷惑防止条例は、正式名称を「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」と言います。

盗撮行為を禁止する条文は、次のとおりです(盗撮と関係しない部分は省略しています)。

第5条1項 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。

第1号(略)
第2号 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

このように東京都の場合、禁止対象には①撮影する行為②撮影機器を差し向ける行為、設置する行為があることがわかります。

これら禁止行為の罰則を定めた条文も引用しましょう。

第8条1項 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第1号(略)
第2号 第5条第1項(中略)の規定に違反した者(次項に該当する者を除く。)

第8条2項 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
第1号 第5条第1項(第2号に係る部分に限る。)の規定に違反して撮影した者
(以下略)

第8条7項 常習として第2項の違反行為をした者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
第8条8項 常習として第1項の違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

この罰則は、非常にわかり難い記述なので、違反行為と罰則の関係を表にまとめてみましょう。

違反行為 刑罰
人の通常衣服で隠されている下着又は身体を撮影する行為
(5条1項柱書、同2号)
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(8条2項1号)
【常習犯】
2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(8条7項)
人の通常衣服で隠されている下着又は身体を撮影するために撮影機器を差し向け又は設置する行為
(5条1項柱書、同2号)
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(8条1項2号)
【常習犯】
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(8条8項)

2.常習犯と再犯の違い

上の条文のように、盗撮犯は「常習として」違反行為を行った場合は、刑が加重されます。これを「常習犯」と呼びます。

では、この「常習犯」は、「再犯」と同じなのでしょうか?それとも異なるのでしょうか?
迷惑防止条例には、「再犯」に関する定めはないので、まず「常習犯」から説明しましょう。

(1) 「常習犯」とは?

「常習犯」は、法律用語としては、同一の犯罪を「反覆累行する習癖あるもの」と定義されます(「累行」とは重ねることを意味します)。

「習癖」とは、「性癖、習慣化された生活ないし行動傾向、人格的、性格的な偏向など」を意味し、当該犯行がその者の習癖の発現であると認められる場合であって、はじめて「常習犯」としての罰則が適用されます。

したがって、盗撮犯の場合、性的な衝動を抑えることができずに盗撮を繰り返してきた場合が典型的です。

ただし、性的動機に限らず、例えば、盗撮した画像をネットなどで販売する営利的な動機で盗撮行為を繰り返したケースなどにも、やはり同一犯罪を繰り返す習癖があるとして、常習犯とされる可能性もあります(最高裁昭和54年10月26日決定)。

常習性の有無を左右する明確な基準を定めた法令や判例はなく、前科、前歴、犯行態様、動機などの諸事情を総合考慮して裁判官が判断します。

多くの場合、同一犯罪の前科があること、すなわち同一犯罪での確定した有罪判決が重視されますが、それも判断要素のひとつに過ぎず、たとえ前科がなくとも、犯行が習癖の発現と判断されれば常習犯とされます(最高裁昭和25年3月10日決定)。

(2) 「再犯」とは?

再犯とは、一般的な用語としては、いちど犯罪を犯した者が、再び犯罪を繰り返すことを意味します。
法律上の用語としては、一定の要件を満たす場合に、刑を加重する制度のひとつを意味します。これを「刑法上の再犯」と呼びます。

刑法上の再犯(刑法第56条)は、①懲役に処せられた者が、②その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から、③5年以内に更に罪を犯した場合において、④その者を有期懲役に処する場合を指します。

再犯とされた場合、その法定刑の長期は、その罪について定めた懲役刑の長期の2倍となります(刑法第57条)。短期は加重されません。

例えば、東京都において、被害者の下着を撮影した行為の懲役刑は1年以下ですが、再犯に該当すれば2年以下の懲役刑となります。
撮影した行為が常習犯の行為と認定されれば、通常の懲役刑は2年以下ですが、再犯に該当すれば4年以下の懲役刑となります。

再犯が加重処罰されるのは、懲役刑を受けた経験があるのに、反省して行いを改めておらず、強い非難に値するからです。

なお、再犯と混同されやすい言葉に「余罪」があります。これは捜査対象となった被疑事実や起訴された公訴事実ではない犯罪事実のことを意味します。
したがって、余罪は再犯(刑法上の再犯、一般用語としての再犯)や常習犯罪に該当する場合もあります。

[参考記事]

余罪とは?警察の捜査内容や逮捕・起訴への影響

(3) 常習犯と再犯の違いのまとめ

前の犯罪とは別種類の犯罪でも再犯となる

刑法上の再犯は、前の犯罪が同一犯罪や同種犯罪であることは要件ではありません。この点で、同一犯罪の反復を内容とする常習犯とは異なります。

再犯の要件は決まっている

常習犯か否かは、裁判所の総合判断によるのに対し、刑法上の再犯か否かは、要件が厳格に決まっているという違いもあります。

複数犯罪の取扱いの違い

常習犯は、複数回にわたり犯行を重ねても、それがひとつの習癖の発現と認められる限り、包括して一個の常習犯罪一罪として処罰されます(最高裁昭和26年4月10日判決)。

ただし、盗撮行為の場合、犯行場所が異なる自治体で、別個の迷惑防止条例が適用されるケースでは、違反した条例が異なる以上、一罪と扱うことはできないので、常習犯であっても一罪ではなく、別個に数罪として刑が加重されます(併合罪加重・刑法45条、47条)(東京高裁平成17年7月7日判決)。

他方、再犯では、後の犯罪が2つ以上ある場合を「三犯」と呼び、3つめ以上の犯罪も再犯と同様に加重処罰されます(累犯加重・刑法59条)。

3.再犯で注意すべきこと

さて、上に説明したとおり、盗撮行為における刑法上の再犯に該当する可能性があるのは、盗撮行為を含む何らかの犯罪で懲役刑を受け、刑の執行を終了等してから5年以内の場合です。

一般的な用語としての再犯であれば、盗撮行為で立件され起訴猶予となったか、起訴されて有罪判決を受けた事実がある場合を指します。

また、これらのうち、複数回の盗撮行為が習癖の発現であれば、それは常習犯と認定される可能性があります。

これらのいずれの場合でも、発覚すれば逮捕・勾留される可能性、起訴される可能性は高くなります。
何故なら、懲りておらず、ここで処罰しなくては将来的にも更に犯行を繰り返す危険性があると評価されるからです。

【盗撮の初犯は起訴されない?】
なお、盗撮行為を何回繰り返せば立件されるのか?初犯は起訴されないのか?との質問を弁護士が受けることがありますが、立件・起訴される犯行回数の基準はありません。
検察官は、たとえ1回目の盗撮でも起訴する権限がありますので、前科前歴もなく、初犯の盗撮行為であっても、反省の情がないと判断されれば起訴される可能性はあるでしょう。

4.再犯の盗撮こそ弁護士に依頼すべき理由

盗撮行為が露見したときは、逮捕された場合はもちろん、身柄を拘束されていない場合でも、直ちに弁護士に弁護を依頼するべきです。

再犯の場合、「2度と犯罪は犯しません」「今後、盗撮は致しません」などの言葉を信用する検察官、裁判官はいません。既にその約束を破った実績があるからです。

少なくとも2度にわたり罪を犯しているわけですから、①「1度目の反省が不十分で2度目である今回の犯行を行った原因は何か?」、②「前の反省と今回の反省は、どこが違うから3度目はないと約束できるのか?」という点について、検察官・裁判官に説得的に説明できなくては、今後も犯行を繰り返す危険が大きいと判断されてしまいます。

これは家族も同様です。今までの監督方法ではダメだったのですから、その原因を考え、どのように監督方法を変更するか説明できなくては、検察官や裁判官を納得させることはできません。

とはいえ、これらは非常に難しい作業です。現実に、今後の犯行を防止するには、どのような対策があるか、具体的に頭を捻る必要があります。

例えば、次のようなケースがあります。

  • 女子学生等が多い交通機関に乗らないよう、通勤経路を変更する
  • 毎日、帰宅後はスマホを妻が保管し、保存された画像をチェックする
  • パソコンは家族共用のものだけとし、家族がデータをチェックする
  • 性的衝動を抑制するため、カウンセリングを受け、通院をする

大切なのは、本人と家族が、真剣に再犯してしまった原因と向き合い、ひとつひとつは不完全な策であっても、色々な防止策を考え、これを実行する決意を持っていると知ってもらうことです。

このようなことから、再犯事件における弁護士の役割のひとつは、法的専門知識と刑事弁護の経験からこのような本人と家族の作業が進むようアドバイスを与え、その結果を書面や口頭で、検察官・裁判官に伝えて、処分の軽減を働きかけることにあると言えるのです。

5.まとめ

再犯事件では、未だ更生の可能性が残っていることを検察官、裁判官に理解してもらう必要があり、刑事弁護の経験豊富な弁護士を依頼するべきです。
刑事事件に力を注いでいる泉総合法律事務所にぜひご相談ください。

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