盗撮で初犯の場合|逮捕・起訴される?
盗撮行為で初犯の場合は、仮に現行犯逮捕されたとしても、身元の確認さえできれば釈放されて「在宅事件」となることがほとんどです。
釈放の場合は通常、家族が身元引受人として警察署に迎えに来ることがあります。家族と連絡がとれない場合には、職場の上司に連絡して、上司が身元引受人になることがあります。
在宅事件なら、捜査機関からの呼び出しがあり得るものの、通勤・通学が普段通り可能です。
事件前の日常とライフサイクルが変わらないため、混乱や不安を抱えつつも、事件をそのままにして警察の連絡を待つ方も少なくありません。
しかし、そのままにしておくと前科などの重大な不利益を残すことになりかねません。
在宅事件であっても、必ず刑事弁護に詳しい弁護士に相談すべきです。
今回は、盗撮(特に初犯)で在宅事件となったケースで、在宅でも起訴をされてしまう可能性や、被疑者の方が前科などの不利益を避けるためにするべきことについて解説します。
1.在宅事件とは?
刑事事件を起こしてしまっても、逮捕後にすぐ釈放され、そのまま捜査が進行する事件を「在宅事件」と言います。
つまり、在宅事件では身柄を拘束されません。
最初から逮捕されていない場合だけでなく、逮捕・勾留されたが途中で釈放された場合も在宅事件に含まれます。
在宅事件では、捜査が進行している間も家庭で普通に生活を送ることができ、通勤や通学も自由ですが、捜査機関から呼び出しが来た時には出頭することになります。

[参考記事]
在宅事件とは?起訴・前科がつくことはあるのか
これに対し、被疑者が逮捕・勾留されて、身柄を拘束されたまま捜査が進行する事件を「身柄事件」と言います。
身柄事件では、検察官が被疑者を起訴するか不起訴とするかの処分を決めるまでの期間は、逮捕から最大23日以内という期間制限があります。
しかし、在宅事件では期間の制限がありません。
このため、在宅事件では処分の結果が出るまで数ヶ月、長い時には数年以上かかる場合があります(期間は捜査機関の忙しさなどに左右されるので、予測は困難です)。
2.在宅事件で起訴される可能性
在宅事件での捜査が進行し、被疑者の取り調べ、関係者の事情聴取など証拠の収集が終了した段階で、検察官は処分を決めます。
処分は、「起訴」と「不起訴」に分かれます。
起訴とは、裁判所に対して被疑者の処罰を求めるもので、通常の裁判にかけられる「公判請求」と、公判を開かず書面審理だけで100万円以下の罰金または科料の刑罰を課す「略式命令請求」のどちらかとなるのが通常です。
検察は十分な捜査の上、証拠を揃えてから起訴を行うため、起訴されたならば無罪となることはほとんどなく、原則として有罪判決となるでしょう。
一方の不起訴とは、裁判にかけられないということです。
犯罪が行われたことが明らかな場合でも、反省の度合いや示談・被害弁護など被害回復の状況を鑑みて検察官は訴追を見送ることがあります。
不起訴となると、その盗撮行為を理由として今後逮捕されたり、刑事処分を受けたりすることは事実上ありません。
在宅事件の場合、家で自由にできることから「軽微な犯罪だ」と思われがちですが、在宅事件でも起訴となる可能性は十分になります。
寧ろ、在宅事件だからといって事件を捜査機関に委ねたまま何もしないでおくと、起訴されてしまうことが多いでしょう。
3.盗撮で在宅起訴となった場合の影響
では、在宅で起訴となった場合、どのような影響があるのでしょうか。
(1) 刑事処分を受ける
まず、犯罪を行ったことに対する刑罰を受けます。
盗撮の場合、各都道府県の迷惑防止条例違反や、軽犯罪法違反(軽犯罪法第1条23項)となるでしょう。

[参考記事]
軽犯罪法違反の盗撮|迷惑行為防止条例違反との違いと示談方法
重要なのは、たとえ罰金や科料であっても有罪判決による刑罰を受けたことになるので「前科」がついてしまうことです。
仮に今後再就職となったケースで、履歴書に「賞罰」欄を設けられている場合には、ここに犯罪歴を記載しなかったことが後に発覚すると、懲戒解雇される場合があります。
また、前科により資格制限が生じる職業もあります。
(2) 解雇等の懲戒処分
有罪判決を受けて前科がつくと、勤務先を解雇されるリスクが飛躍的に高まります。
①民間企業の場合
民間企業では、就業規則において、「会社の名誉、対面、信用を毀損したとき」には解雇を含めた懲戒処分を行うと定められていることが一般的であり、盗撮行為はこれに該当するものとして懲戒解雇をされてしまう場合があります。
法律的には、盗撮など業務と無関係な私生活上の犯罪行為を原因として解雇することは例外的な場合を除いては許されず、そのような解雇は無効です(最高裁昭和49年3月15日判決)。
しかし、法的に無効といっても、実際に解雇されればそれまでです。民事訴訟で争わなくてはならなくなり、時間的にも費用的にも大変なコスト負担となります。
②公務員の場合
公務員の場合、国家公務員でも地方公務員でも、有罪判決が公務員としての欠格事由とされており、当然に失職となります(国家公務員法38条、76条。地方公務員法16条、28条)。

[参考記事]
公務員が刑事事件を起こしたら懲戒処分?
このように、罰金等の刑事処分も、解雇等の不利益処分も、起訴され前科がつくことで現実味を帯びてきます。
逆に言えば、起訴処分を受けないこと、すなわち不起訴処分を獲得することが極めて重要になるわけです。
4.在宅事件で不起訴を獲得する方法
では、不起訴処分を獲得するためには、何が必要なのでしょうか。
最も有効な方法は、被害者との示談です。
刑事事件における示談では、示談金を支払う代わりに、被害者からもはや被疑者の処罰を望んでいないという意思を示してもらい、それを記載した示談書を作成します。
示談が成立したら、示談書に、「被疑者を宥恕(ゆうじょ)する」あるいは「寛大な処分を求めます」「処分を求めない」などの文言を記載してもらい、これを検察官に提出します。
(※「宥恕」とは寛大な気持ちで許すという意味です。)
盗撮行為が初犯で、示談が成立していれば、特別な事情のない限りほとんどのケースで不起訴となります。
被疑者本人が示談交渉を行うのは実際上現実的ではないため、示談交渉は刑事弁護の依頼を受けた弁護士が行うのが通例です。

[参考記事]
刑事事件における示談の意義、タイミング、費用などを解説
盗撮では、被害者を特定できないケースもあります。その場合は示談ができません。この場合、示談に代わるものとして、贖罪寄付(しょくざいきふ)をするという方法もあります。
贖罪寄付とは、被害者のいない犯罪の被疑者や、被害者に示談を拒否された被疑者が、罪を反省して償う気持ちを示すために行う寄付です。
たとえば、日本弁護士連合会や各地の弁護士会が贖罪寄付を受け付けており、寄付された金銭は公益的な目的で使われ、寄付を受けたという証明書を発行してくれます。この証明書を被疑者が反省している証拠のひとつとして検察官に提出して不起訴処分を求めるのです。示談の成功ほどの強力な効果はありませんが、裁判実務においては有利な事情として考慮されています。
参考:贖罪寄付・供託により本当に情状が考慮されるのか?
5.まずは弁護士に相談を
在宅事件であっても、盗撮行為で起訴され有罪判決を受けたならば「前科」がついてしまいます。
在宅事件の捜査が始まったばかりならば、出来ることは沢山あります。
しかし、時間の経過により被害者との示談は難しくなっていきます。刑事事件は時間との勝負ですので、いち早く弁護士に相談すべきです。
泉総合法律事務所には、刑事事件を得意とする弁護士が多数在籍しており、解決実績も豊富です。
盗撮事件でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。