盗撮 [公開日]2022年2月1日[更新日]2023年1月12日

教員が盗撮で逮捕された場合のリスクと対処法

この記事では、教員が盗撮で逮捕された場合に生じるリスクと、その対処法を説明します。

教員が盗撮、しかも自分の職場のトイレや更衣室などにカメラを設置するなどしたことが発覚し、逮捕されるケースが跡を絶ちません。

教員が盗撮で逮捕された場合、仕事や教員免許はどうなるのでしょうか?
また保護者に知られたり、実名報道されたりする危険はあるのでしょうか?

1.盗撮は何罪?

盗撮は、各地方自治体が制定する通称「迷惑防止条例」で禁止される犯罪行為です。

例えば、東京都の場合は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」があります。

この条例では、公共の場所・公共の乗物・その他不特定または多数の者が利用、出入りする場所・乗物、住居・トイレ・浴室などのように通常人が衣服を着けないでいる場所などで、人の通常衣服で隠されている下着や身体を撮影する行為を禁止し、その違反は1年以下の懲役刑または100万円以下の罰金刑(常習犯は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)としています(同条例第5条1項柱書、同項2号、第8条2項1号、同7項)。

学校も盗撮行為が禁止されている場所のひとつです。
また、実際に撮影を完了していなくとも、撮影のためにカメラなどの撮影機器を人に差し向ける行為や機器を設置する行為も禁止対象であり、その違反は、6月以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑(常習犯は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)となります(8条1項2号、同8項)。

したがって、学校の部室、更衣室、トイレなどにカメラを仕掛けた場合は、それだけで条例違反となります。

[参考記事]

盗撮の定義とは?カメラを向けた、設置しただけ…どこからが犯罪か

また、盗撮に伴い他人の住居などを覗いた場合は、軽犯罪法違反として拘留又は科料に処せられる可能性があり(同法第1条23号)、他人の家や敷地に侵入した場合は、住居侵入罪(刑法130条)として3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられる可能性もあります。

2.盗撮で解雇されるリスク

では、盗撮が発覚した場合、職場である学校を解雇されてしまうのでしょうか?

(1) 盗撮で「禁錮以上の刑」に処せられたとき

盗撮で「禁錮以上の刑」に処せられた者は、校長及び教員となることはできません(学校教育法第9条1項)。

「禁錮以上の刑」とは禁錮刑、懲役刑、死刑を指しますから、盗撮行為による条例違反の場合は「懲役刑」を意味します。
「処せられた」とは、懲役刑の有罪判決を受け、その判決が確定した場合です。

したがって、たとえ執行猶予付き判決で、実際には刑務所で服役しないで済んだとしても、判決が確定した以上、校長及び教員となることはできません(教員免許は失効します)。

公立学校では当然に失職し、私立では解雇事由(懲戒解雇事由・普通解雇事由)となります。

(2) 「禁錮以上の刑」に処せられたとき以外

では「禁錮以上の刑」に処せられたとき以外の場合、すなわち①起訴猶予となった(不起訴)、②罰金刑となった場合は、どうなるのでしょうか?
公立学校と私立学校に分けて説明します。

①公立学校

東京都の公立学校を例にとりましょう。

地方公務員法では、「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合」に、懲戒処分として「戒告」「減給」「停職」「免職」をなしうると定めています(地方公務員法29条1項3号)。

これを受けて、東京都教育委員会では、「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」を定めて、懲戒処分の基準を明らかにしています。

これによると、「痴漢行為・盗撮等の迷惑防止条例違反」は「免職」が標準とされています。

懲戒処分の内容は、最終的には個別事情に応じて総合判断される建前となっていますが、盗撮の場合、もっとも重い「免職」が原則扱いとなっているのです。

また、懲戒処分と刑事処分はまったく別個の手続ですから、教育委員会は盗撮の刑事裁判が継続中で判決の結論が出ていない間であっても、独自に事実を調査・判断して、懲戒処分を行うことが可能です(例:東京都「職員の懲戒に関する条例」第5条、国家公務員法第85条)。

なお、公立学校の教員が懲戒免職となった場合は、同時に教員免許も失効します(教育職員免許法10条1項2号)。

②私立学校

私立学校の教員が、盗撮で①起訴猶予、②罰金刑となった場合は、その学校法人における就業規則に定められた懲戒規定にしたがって、懲戒処分の対象となります。

この場合の懲戒内容は就業規則の規程次第ですが、一般的には、「戒告」「減給」「降格」「出勤停止」「論旨解雇」「懲戒解雇」などとなっています。

懲戒処分が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効となりますが(労働契約法15条)、教員の盗撮の場合は懲戒解雇が相当であり、有効な解雇とされる可能性が高いでしょう。

なお、私立学校の教員が懲戒解雇を受けた場合、教員免許は取り上げられてしまいます(教育職員免許法11条1項、10条1項2号)。

3.盗撮で教員免許を失うリスク

教員免許についても既に説明しましたが、ここでまとめておきます。

①盗撮で、禁錮以上の刑の有罪判決が確定したときは、たとえ執行猶予でも、教員免許は失効します(教育職員免許法第10条1項1号、第5条1項3号)。

②盗撮で、不起訴(起訴猶予)または罰金刑となった場合でも、公立学校の教員が懲戒免職となったときは教員免許は失効します(教育職員免許法10条1項2号)。私立学校の教員が懲戒解雇となったときは教員免許は取り上げとなります(同法11条1項、10条1項2号)。

教員免許は、失効または取り上げから3年で再取得は可能ですが(同法5条1項4号、5号)、再就職できるかどうかは別問題です。

4.教員の盗撮は保護者にバレる?実名報道はされる?

(1) 盗撮が保護者にバレるか

教員の盗撮が保護者にバレるかどうかは、ケースバイケースです。

勤務先と無関係な(電車内や店舗内などでの)盗撮が発覚しても、事実を素直に認め、盗撮の前科前歴がなければ、逮捕まではされないか、仮に逮捕されても比較的早期に釈放されて勤務先に犯行が露見しない可能性が高いでしょう。
その場合は、保護者にバレることも通常ありません。

他方、学校内での盗撮が発覚すれば、当然、学校に知れます。
学校が事実を知りながら保護者への報告・説明を怠れば、「隠蔽」と非難されますから、盗撮の事実は必ず保護者に知られることになるでしょう

(2) 実名報道されるリスクはあるか?

盗撮が実名報道されるかどうかは「運」と言わざるを得ないでしょう。

どのような犯罪を報道するか、実名を報ずるか否かについては、(少年犯罪以外には)その基準を定めた法律はなく、個々の報道機関が独自に判断をしているに過ぎません。

昨今、盗撮を含め、教師による性犯罪は残念ながら日常茶飯事ですから、各別ニュースバリューがあるわけではありません。
それでも、その日に格別他のニュースネタがなく、紙面を埋める必要性がある場合などには、実名報道されてしまうこともあります。

逆に、たまたま他に重大事件や有名人の結婚報道などがあれば、実名どころかまったく報道されないケースもあります。

なお、弁護士を依頼したからといって、必ず実名報道の危険を回避することはできません。
もちろん、弁護士から報道機関に対して実名報道をしないよう要望を申し入れることは可能ですが、報道機関に従う義務があるわけではないのです。

5.教員が盗撮で逮捕された場合に弁護士へ相談すべき理由

教員が盗撮で逮捕された場合には、真っ先に弁護士に相談し、刑事弁護を依頼するべきです。

(1) 早期の示談交渉が可能

その理由の一つ目は、弁護士によって直ちに示談交渉をスタートすることが可能となり、早期に示談が成立することによって、有利な結果が期待できるからです。

まず、職場の学校とは無関係な場所での盗撮の場合、通常は被害者と面識もなく連絡先もわかりませんが、捜査機関はまず連絡先を教えてはくれません。

しかし、弁護士がつけば、捜査機関は被害者の意向を確認して、弁護士に連絡先を教えてくれる可能性があるので、その場合、示談交渉を開始することができます

【弁護士によらない示談交渉は避けるべき】
学校での盗撮で、被害者が生徒など面識があり、その保護者の連絡先がわかっていても、盗撮した教員本人やその家族などが直接に連絡をして示談を申し入れることは避けるべきです。
何故なら、被害者の生徒、その保護者は、盗撮犯に対する嫌悪感・恐怖感・不信感・強い怒りから、通常は直接のやりとりを拒否するからです。
仮に連絡に応じてくれても、感情的な対立を招来して、余計に問題をこじらせてしまう危険もあります。

(2) 示談成立で早期釈放、不起訴も期待できる

たとえ逮捕されても、早々に示談を成立させることができれば、逮捕から最長23日間という身体拘束期間の途中で釈放されることも期待できます。

また、検察官が示談成立を有利な事情として考慮し、不起訴処分となる可能性や、起訴されたとしても書類上の手続で裁判所が罰金刑を命ずる略式起訴となる可能性も高まります。

(3) 身柄解放で学校に露見しない

身柄拘束期間が短ければ、学校に発覚する危険性も少ないですし、露見しないまま不起訴や罰金刑で済めば、懲戒処分を受ける危険性は少なくなります。

他方、学校での盗撮で逮捕されてしまえば、学校に隠すことはできませんから、盗撮が事実である以上、懲戒処分を免れることはできないでしょう。

それでも、弁護士によって被害者との示談を成立させることができれば、刑事処分自体を軽くできる可能性が高まります。

(4) 有利な刑事処分で懲戒処分を軽くする

刑事弁護人として弁護士を依頼すれば、懲戒解雇などの懲戒処分を回避できるとは限りません。

懲戒処分と刑事処分は別個のもので、懲戒するか否か、どのような懲戒内容とするかは、公立学校では教育委員会、私立学校では学校法人の理事会が判断することだからです。

ただ、別個の手続とはいえ、懲戒の判断にあたっても刑事処分の内容が斟酌されることはもちろんです。

したがって、やはり弁護士を依頼し、示談をまとめることなどで、少しでも軽い刑事処分を受けることが、懲戒内容を軽減することにもつながります。

6.まとめ

教員が盗撮を行うことは言語道断と言えますが、間違えることは誰しもあります。
反省しているならば、早期に弁護士を依頼して、軽い処分にとどめてもらい、再出発を目指しましょう。

泉総合法律事務所は、盗撮・痴漢などの事件について、多くの被疑者の方をサポートしてきた実績が豊富です。
盗撮をしてしまった、バレてしまったという方は、お早めに当事務所の無料相談をご利用いただければと思います。

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