マイナー薬物まで徹底解説!薬物事件を取り締まる法律の種類と刑罰

薬物事件

マイナー薬物まで徹底解説!薬物事件を取り締まる法律の種類と刑罰

薬物犯罪は、一度手を出してしまうとなかなか抜けられなくなる犯罪です。

覚せい剤や大麻などは聞き慣れているかもしれませんが、それ以外にも「麻薬・向精神薬」として禁止されているもの、「毒物・劇物」として取り締まられるものなど、いろいろな種類の禁止薬物があります。

今回は、どのような薬物犯罪があるのかや、その内容について、刑事事件への専門的な取り組みを進めている弁護士が解説いたします。

1.薬物事件の種類

(1) 薬物四法、薬物五法

薬物犯罪というと、覚せい剤取締法違反や大麻取締法違反の罪が有名ですが、日本には、これら以外にもたくさんの薬物犯罪があります。

薬物犯罪については「薬物四法」「薬物五法」という言葉があります。
薬物四法とは、以下の通り、主な薬物を禁止する4つの法律です。

  • 覚せい剤取締法
  • 大麻取締法
  • あへん法
  • 麻薬及び向精神薬取締法

これらに、以下の1つを足したものを「薬物五法」と言います。

  • 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等に関する法律

(2) 薬物が禁止される理由

これらの薬物が禁止されるのは、社会の安全や風紀を守るためです。

薬物が乱用されると、社会全体が大きく衰退します。人は働けなくなるので生産性が低下しますし、中毒状態となって病院患者も増えます。
個人が心身をむしばまれるだけではなく、社会全体が損害を受ける犯罪です。

実際、日本では、戦後3回にわたって薬物が大流行したことがあります。
1回目は、昭和20年代から30年代にかけて流行った覚せい剤です。敗戦によって社会全体が疲弊したことと、社会情勢が混乱したことによって広まりました。

第2回目は、昭和30年代に流行ったヘロインです。ヘロインは、戦後徐々に増加傾向にあったのですが、昭和36年頃に急増して、大都市を中心として全国的に流行しました。

3回目は、昭和45年頃から再度流行り始めた覚せい剤です。覚せい剤は、今でも流通量が非常に多く、使用者も多いです。ピークは昭和59年頃ですが、現在においても毎年15,000人~16,000人程度の逮捕者があり、高水準です。

また、大麻やあへん、向精神薬等の乱用も相変わらず使われています。

そこで、こうした4つの薬物(覚せい剤、大麻、麻薬及び向精神薬、あへん)は厳しく禁ずるべきと考えられ、薬物四法が制定されました。
これらの薬物規制は、国際的な潮流にも即したもので、薬物四法は条約内容をも反映するものす。

(3) 薬物四法から薬物五法へ

また、近年では、薬物によって不法に収益を上げようとするものが増えています。
国際的な組織が輸出入や販売などにより、薬物を収益化しており、日本でもコカインやヘロイン、大麻などの違法薬物の使用や所持犯が増加しているのです。

そこで、こうした麻薬を取り締まるための法律が制定されました。

それが「麻薬及び向精神薬取締法等の一部を改正する法律」と「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」です。これらは平成4年7月1日から施行されています。

そして、先に紹介した薬物四法にこれを足して、薬物五法となったのです。

(4)薬物四法(五法)が禁止する内容

以下では、それぞれの薬物取締法が禁止している内容について、ご紹介します。
薬物取締法が禁止する行為には、以下の種類があります。

  • 輸出入
  • 製造
  • 栽培
  • 譲渡・譲受
  • 所持
  • 使用

犯罪類型により、これらのうちどの行為が禁止されるのかが変わります。

①覚せい剤取締法

覚せい剤取締法違反は、いわゆる覚せい剤を取り締まる法律です。覚せい剤とは、フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパンという成分を含んでいる物質です。

覚せい剤は非常に依存性が高く、人間の心身に対する影響も大きいので、厳しく規制されます。覚せい剤そのものだけではなく、覚せい剤の原料(エフェドリンなど)の輸出入や製造、譲渡や所持使用などの行為も規制対象です。

覚せい剤取締法は、以下の行為を禁じています。

  • 輸出入
  • 製造
  • 譲渡、譲受
  • 所持
  • 使用

②大麻取締法

大麻取締法は、無資格者による「大麻」の取扱いを禁じる法律です。大麻は、大麻草のことで「マリファナ」と呼ばれることもあります。

大麻も依存性があり、人間の心身に有害と考えられているので、法律によって禁止されます。
大麻取締法が禁じているのは、大麻に関する以下の行為です。

  • 輸出入
  • 栽培
  • 譲渡、譲受
  • 所持

大麻取締法には「使用罪」がありません。ただ、栽培や所持罪があるので、使用する人は通常これらの罪で取り締まられることになります。

③あへん法

あへん法は、あへんの取扱いを規制する法律です。あへんとは「ケシ」「ケシガラ」によって生成した薬物です。

あへんも中毒性が強く、過去に中国で「あへん戦争」が起こった経緯からもわかるとおり、亡国の薬物でありますから、厳しく禁止されます。

あへん法によって禁じられるのは、以下の行為です。

  • ケシの栽培
  • ケシガラの輸出入、譲渡、譲受、使用、所持
  • あへんの輸出入、製造、譲渡・譲受、所持、使用

なお、法律上、あへんの「使用」行為については「吸食」と表記されており、あへんの「製造」行為については、「採取」と表記されています。

④麻薬及び向精神薬取締法

麻薬及び向精神薬取締法は、ヘロインやコカインなどの麻薬や向精神薬を規制する法律です。

禁止される「麻薬」は、ヘロイン、コカイン、モルヒネやMDMAなどの依存性の強い薬物です。麻薬の原料となる植物(マジックマッシュルームなど)についても規制が及びます。

向精神薬とは、人の「中枢神経系」にはたらきかけて、精神活動に影響を与える薬物です。一般的には精神医学や精神薬理学において使用されます。

医学的な研究や医師が処方するのであれば問題はありませんが、一般人が勝手に使用するとさまざまな問題が発生するため、禁止されます。

麻薬及び向精神薬取締法によって禁止される行為は、以下の通りです。

  • 麻薬(コカイン、ヘロイン、MDMAなど)の輸出入、製造、譲渡・譲受、所持、使用
  • 麻薬の原料(マジックマッシュルームなど)の輸出入、栽培、譲渡・譲受、所持、使用
  • 向精神薬の輸出入、製造、譲渡、譲渡目的での所持

向精神薬については、「譲受」や「使用」は処罰の対象になりません。また、譲渡目的での所持のみが処罰対象であり、単純所持は処罰の対象になりません。

なお、「使用」について、法律上は「使用」ではなく「施用」と表記されています。

(5) 毒物及び劇物取締法

薬物に関する規制法としては、薬物四法(五法)以外に「毒物及び劇物取締法」や「薬事法(医薬品医療機器法)」もあります。以下で、どのような法律なのか、みてみましょう。

まずは、毒物及び劇物取締法について説明します。
毒物及び劇物取締法は、いわゆる「危険物」の取扱い方法を定めた法律で、略して「毒劇法」と呼ばれることなどもあります。

毒物及び劇物取締法によって規制されるのは、いわゆる「化学薬品」などの物質です。
化学薬品には人体に危険を及ぼすものも多いので、専門的な資格を持った取扱者以外のものが勝手に使用してはいけません。

毒劇法は、そもそも「薬」を取り締まるものではないのですが、こうした毒物・劇物の中には依存性があったり人体に対して悪影響を及ぼすものもあったりするので、薬物犯罪で問題になります。

よくあるのが、シンナー・トルエンです。

未成年者などが軽い気持ちで「シンナーの吸引」などを行うことがありますが、そうした場合には、毒物及び劇物取締法違反となって処罰を受けることとなります。

毒物及び劇物取締法によって規制される行為は、シンナーなどの毒物・劇物を摂取、吸入、販売、授与することです。

(6) 薬事法(医薬品医療機器等法)

もう1つ、薬物四法(五法)以外に薬物犯罪となるものとして、薬事法があります。

ただし、この法律は、近年改正されて「医薬品医療機器等法」という法律に名称が変わっています。内容としては、医薬品の取扱いを定めている点で、大幅な変更はありません。

医薬品医療機器等法は、略して「薬機法」と呼ばれることがあります。

薬機法は、医薬品の取扱いを規制する法律です。医師が患者を治療するとき、薬物の使用は非常に重要です。しかし、医薬品は人体に対するさまざまな影響を及ぼすものですから、適切に使用されないと危険です。

そこで、薬機法は、医薬品を分類して、どの範囲までであればどのような販売方法をとることができるのかなどを定めています。

(7) 脱法ドラッグ

薬機法で薬物犯罪と絡んで問題になるのは、「脱法ドラッグ」です。

「脱法ドラッグ」というのは、先にご紹介した薬物四法(五法)などの法律により、明確に禁止されていない薬物のことです。しかし、上記で紹介した薬物と似た効用(幻覚、幻聴、気分の効用等)があったり、さらに強い効用があったりします。

こうした脱法ドラッグは、「危険ドラッグ」と呼ばれることもあります。

このように、禁止薬物に似た効用のある禁止薬物が流通すると、非常に危険です。

そこで、薬機法では、厚生労働大臣に、危険薬物を「指定」する権限を与えています。

これまで規制されていなかった薬物でも、厚生労働大臣によって指定されると「指定薬物」となり、製造や輸入、販売、営利目的での貯蔵・陳列などの行為が禁止されます。

近年までは、薬物については、輸出や製造、譲渡などの行為は取り締まられましたが、輸入や使用、所持に対する規制はありませんでした。
そこで、そうした薬物が「脱法ドラッグ」として広く流通してしまったのです。

そこで、薬機法の改正が行われ、平成26年4月1日からは処罰対象が拡大して、それまでは処罰されなかった輸入、譲受や所持・使用も処罰されることとなりました。

薬機法によって、厚生労働大臣が違法薬物の指定をすることができるので、今は合法とされる薬物であっても、今後いつ違法となるか、わかりません。

常に厚生労働省から発信される情報をチェックすることなどできないでしょうから、よくわからない薬物には手を出さないことが重要です。

2.罰則の適用

以上のように、違法薬物については、かなり細かく分類されており、それぞれの行為に対する罰則が定められています。
以下では、違法薬物の利用に対する刑罰の内容を、それぞれの犯罪について確かめていきましょう。

(1) 覚せい剤

覚せい剤については、覚せい剤そのものか、覚せい剤の原料についての罪かで罰則の内容が異なります。

【覚せい剤そのものの場合】
輸出入、製造
非営利目的の場合:1年以上の有期懲役
営利目的の場合:無期又は3年以上の懲役刑。1000万円以下の罰金が併科される可能性がある
譲渡、譲受、所持、使用
非営利目的の場合:10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。500万円以下の罰金を併科される可能性がある

【覚せい剤の原料について】
輸出入、製造
非営利目的の場合:10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。情状により500万円以下の罰金を併科される可能性がある
譲渡、譲受、所持、使用
非営利目的の場合:7年以下の懲役刑
営利目的の場合:10年以下の懲役刑。300万円以下の罰金を併科される可能性がある

(2) 大麻

輸出入、栽培
非営利目的の場合:7年以下の懲役刑
営利目的の場合:10年以下の懲役刑。300万円以下の罰金が併科される可能性がある
譲渡・譲受、所持
非営利目的の場合:5年以下の懲役刑
営利目的の場合:7年以下の懲役刑。200万円以下の罰金を併科される可能性がある

(3) あへん

あへんの場合「ケシ」についての犯罪か、「ケシガラ」についての犯罪か「あへん」についての犯罪かによって、刑罰の内容が異なります。
以下で、分けて見ていきましょう。

【ケシについて】
ケシの栽培
非営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。300万円以下の罰金が併科される可能性がある

【ケシガラについて】
ケシガラの輸出入
非営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。300万円以下の罰金が併科される可能性がある
ケシガラの譲渡、譲受、使用、所持
非営利目的の場合:7年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑。100万円以下の罰金が併科される可能性がある
ケシガラの使用
7年以下の懲役刑

【あへんについて】
あへんの輸出入、製造
非営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。300万円以下の罰金が併科される可能性がある
あへんの譲渡・譲受、所持
非営利目的の場合:7年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑。100万円以下の罰金が併科される可能性がある
あへんの使用
7年以下の懲役刑

(4) 麻薬

麻薬は、麻薬の種類によって刑罰が変わります。「ヘロイン」と「ヘロイン以外の麻薬」に分けられており、ヘロインの場合に刑罰が重くなります。

また、麻薬原料となるマジックマッシュルームなどの栽培についても、別途刑罰が適用されます。

【ヘロイン】
ヘロインの輸出入、製造
非営利目的の場合:1年以上の有期懲役
営利目的の場合:無期又は3年以上の懲役刑。1000万円以下の罰金が併科される可能性がある
ヘロインの譲渡・譲受、所持、使用
非営利目的の場合:10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。500万円以下の罰金を併科される可能性がある

【コカイン、モルヒネ、MDMAなどの他の麻薬】
その他の麻薬の輸出入、製造
非営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。500万円以下の罰金を併科される可能性がある
その他の麻薬の譲渡、譲受、所持、使用
非営利目的の場合:7年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑。300万円以下の罰金を併科される可能性がある

【麻薬原料の栽培(マジックマッシュルームなど)】
麻薬原料の輸出入、栽培
非営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。500万円以下の罰金を併科される可能性がある
麻薬原料の譲渡、譲受、所持、使用
非営利目的の場合:7年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑。300万円以下の罰金を併科される可能性がある

(5) 向精神薬

輸出入、製造
非営利目的の場合:5年以下の懲役刑
営利目的の場合:7年以下の懲役刑。200万円以下の罰金が併科される可能性がある
譲渡、譲渡目的の所持
非営利目的の場合:3年以下の懲役刑
営利目的の場合:5年以下の懲役刑。100万円以下の罰金を併科される可能性がある

(6) シンナー・トルエン

シンナーやトルエンについての毒物及び劇物取締法違反の刑罰は、以下の通りです。

摂取、吸入、それらの目的で所持することを知って販売、授与した場合、2年以下の懲役もくしは100万円以下の罰金刑または併科となります。

(7) 危険ドラッグ(指定薬物)

①指定薬物の場合

薬機法による指定薬物に対する罰則は、以下の通りです。

製造や輸入、販売や授与、販売・授与を目的として貯蔵・陳列を業として行った場合
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金刑となり、併科される可能性もあります。
指定薬物の輸入、譲受、所持、使用の場合
3年以下の懲役刑もしくは300万円以下の罰金刑、それらの併科となります。

②無承認許可医薬品の場合

なお、薬機法で違法とされるドラッグには「無承認許可医薬品」に該当するものがあります。これは、「医薬品」の中でもまだ承認を受けていないものです。

これらの場合、罰則は3年以下の懲役刑もしくは300万円以下の罰金刑、またはそれらの併科となります。

3.薬物で逮捕された場合

薬物犯罪で逮捕されたときには、いくつか他の犯罪類型とは異なる注意点があります。

詳しくは「依存性が高い薬物事件で逮捕されたら実刑?不起訴のための弁護士依頼」をご参照ください。

4.薬物事件も弁護士にご依頼ください

以上のように、ひとくちに「薬物事件」と言っても、様々な種類の薬物があり、該当法や刑罰は様々です。時には法律で明確に禁止されていない薬物が「脱法ドラッグ」として横行している可能性もあります。

もしも薬物事件に巻き込まれてしまったという方やそのご家族は、お早めに泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。薬物事件の逮捕後の流れには多くの注意点がありますが、泉総合法律事務所には刑事弁護の経験が豊富な弁護士が多数在籍しているため、薬物事件の弁護についても徹底的なサポートが可能です。

初回のご相談は無料となっておりますので、実刑や前科を免れるためにも、ぜひお早めにご連絡ください。

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