薬物事件 [公開日]2018年2月2日[更新日]2019年10月29日

薬物事件を取り締まる法律の種類と刑罰

薬物犯罪は、一度手を出してしまうとなかなか抜けられなくなる犯罪です。
中毒になった有名芸能人が何度も薬物犯罪で逮捕されるのは、薬物の依存性質によります。

そのため、絵などを用いたポスターによって、様々なところで薬物使用防止が図られています。

しかし、一概に薬物といっても、覚せい剤、シンナー、大麻など様々です。

今回は、主要な薬物犯罪の内容・罰則を、刑事事件への専門的な取り組みを進めている弁護士が解説いたします。

1.薬物事件の種類

薬物犯罪については「薬物四法」「薬物五法」という言葉があります。

薬物四法とは、以下の通り、主な薬物を禁止する4つの法律です。

  • 覚せい剤取締法
  • 大麻取締法
  • あへん法
  • 麻薬及び向精神薬取締法

これらに、以下の1つを足したものを「薬物五法」と言います。

  • 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等に関する法律

これらの薬物が禁止されるのは、社会の安全や風紀を守るためです。
薬物が乱用されると、社会全体が大きく衰退します。人は働けなくなるので生産性が低下します。また、中毒状態となって病院患者も増えますし、最悪の場合死に至ることもあります。

薬物犯罪は、個人が心身をむしばまれるだけではなく、社会全体が損害を受ける犯罪なのです。

2.薬物四法(五法)が禁止する内容

薬物使用とはいっても、薬物禁止法という名称の法律が存在するわけではありません。現行法では、使う薬物ごとに適用される法律が異なります。

一般に、禁止される行為は六種類あります。

  • 輸出入
  • 製造
  • 栽培
  • 譲渡・譲受
  • 所持
  • 使用

ここで重要なのは、禁止される行為が薬物によって異なるという点です。
以下では、それぞれの法律が禁止している内容・罰則について、ご紹介します。

(1) 覚せい剤取締法

覚せい剤取締法違反は、いわゆる覚せい剤を取り締まる法律です。覚せい剤とは、フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパンという成分を含んでいる物質です。シャブ、エス、スピードなどと呼ばれることもあります。

覚せい剤は非常に依存性が高く、瞳孔を大きくする、血圧を挙げるなどの特徴を備えています。乱用を続けると、幻覚、幻聴や、歯が溶けるなどします。

覚せい剤取締法は、覚せい剤そのものだけではなく、覚せい剤の原料(エフェドリンなど)の輸出入や製造、譲渡や所持使用などの行為も規制対象です。

禁止行為罰則
輸出入、製造非営利目的の場合:1年以上の有期懲役
営利目的の場合:無期又は3年以上の懲役刑。1000万以下の罰金が併科される可能性がある
譲渡、譲受、所持、使用非営利目的の場合:10年以下の懲役
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。500万円以下の罰金を併科される可能性がある。
原料の輸出入、製造非営利目的の場合:10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。情状により500万円以下の罰金を併科される可能性がある
原料の譲渡、譲受、所持、使用非営利目的の場合:7年以下の懲役刑
営利目的の場合:10年以下の懲役刑。300万円以下の罰金を併科される可能性がある

(2) 大麻取締法

大麻取締法は、無資格者による「大麻」の取扱いを禁じる法律です。大麻は大麻草のことで、マリファナ・ハッパと呼ばれることもあります。

大麻も依存性があり、心拍数の増加、吐き気や幻覚、異常行動などの症状を引き起こします。また、乱用を続けると知能が低下するなど、脳を蝕むようになります。

禁止行為罰則
輸出入、栽培非営利目的の場合:7年以下の懲役
営利目的の場合:10年以下の懲役刑。300万円以下の罰金が併科される可能性がある
譲渡、譲受、所持非営利目的の場合:5年以下の懲役刑
営利目的の場合:7年以下の懲役刑。200万円以下の罰金を併科される可能性がある

大麻取締法には「使用罪」がありません。ただ、栽培や所持罪があるので、使用する人は通常これらの罪で取り締まられることになります。

(3) あへん法

あへん法は、あへんの取扱いを規制する法律です。あへんとは「ケシ」「ケシガラ」によって生成した薬物です。

あへんの場合「ケシ」についての犯罪か、「ケシガラ」についての犯罪か「あへん」についての犯罪かによって、刑罰の内容が異なります。

なお、法律上、あへんの「使用」行為については「吸食」と表記されており、あへんの「製造」行為については、「採取」と表記されています。

禁止行為罰則
ケシの栽培非営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。500万円以下の罰金が併科される可能性がある
ケシガラの輸出入非営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。500万円以下の罰金が併科される可能性がある
ケシガラの譲渡、譲受、使用、所持非営利目的の場合:7年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑。300万円以下の罰金が併科される可能性がある
あへんの輸出入、製造非営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。500万円以下の罰金が併科される可能性がある
あへんの譲渡、譲受、所持非営利目的の場合:7年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑。300万円以下の罰金が併科される可能性がある
あへんの使用7年以下の懲役刑

(4) 麻薬及び向精神薬取締法

麻薬及び向精神薬取締法は、麻薬や向精神薬を規制する法律です。

ア 麻薬

禁止される「麻薬」は、ヘロイン、コカイン、モルヒネやMDMAなどの依存性の強い薬物です。麻薬の原料となる植物(マジックマッシュルームなど)についても規制が及びます。

刑罰は「ヘロイン」と「ヘロイン以外の麻薬」に分けられており、ヘロインの場合に刑罰が重くなります

また、麻薬原料となるマジックマッシュルームなどの栽培についても、刑罰が適用されます。

禁止行為罰則
ヘロインの輸出入、製造非営利目的の場合:1年以上の有期懲役
営利目的の場合:無期又は3年以上の懲役刑。1000万円以下の罰金が併科される可能性がある
ヘロインの譲渡、譲受、所持、使用非営利目的の場合:10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。500万円以下の罰金を併科される可能性がある
ヘロイン以外の麻薬の輸出入、製造非営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。500万円以下の罰金を併科される可能性がある
ヘロイン以外の麻薬の譲渡、譲受、所持、使用非営利目的の場合:7年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑。300万円以下の罰金を併科される可能性がある
麻薬原料の輸出入・製造非営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上の有期懲役刑。500万円以下の罰金を併科される可能性がある
麻薬原料の譲渡、譲受、所持、使用非営利目的の場合:7年以下の懲役刑
営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役刑。300万円以下の罰金を併科される可能性がある

イ 向精神薬

向精神薬とは、人の「中枢神経系」にはたらきかけて、精神活動に影響を与える薬物です。一般的には精神医学や精神薬理学において使用されます。

医学的な研究や医師が処方するのであれば問題はありませんが、一般人が勝手に使用するとさまざまな問題が発生するため、これが禁止されます。

向精神薬については、「譲受」や「使用」は処罰の対象になりません。また、譲渡目的での所持のみが処罰対象であり、単純所持は処罰の対象になりません。

なお、「使用」について、法律上は「使用」ではなく「施用」と表記されています。

禁止行為刑罰
向精神薬の輸出入、製造非営利目的の場合:5年以下の懲役刑
営利目的の場合:7年以下の懲役刑。200万円以下の罰金が併科される可能性がある
向精神薬の譲渡、譲渡目的の所持非営利目的の場合:3年以下の懲役刑
営利目的の場合:5年以下の懲役刑。100万円以下の罰金を併科される可能性がある

3.薬物で逮捕された場合

薬物犯罪で逮捕されたときには、いくつか他の犯罪類型とは異なる注意点があります。

詳しくは以下のコラムをご参照ください。

[参考記事]

依存性が高い薬物事件で逮捕されたら実刑?不起訴のための弁護士依頼

4.薬物事件も弁護士にご依頼ください

以上のように、ひとくちに「薬物事件」と言っても、様々な種類の薬物があり、該当法や刑罰は様々です。
時には法律で明確に禁止されていない薬物が「脱法ドラッグ」として横行している可能性もあります。

もしも薬物事件を犯してしまったという方やそのご家族は、お早めに泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

薬物事件の逮捕後の流れには多くの注意点がありますが、泉総合法律事務所には刑事弁護の経験が豊富な弁護士が多数在籍しているため、薬物事件の弁護についても徹底的なサポートが可能です。

初回のご相談は無料となっておりますので、実刑や前科を免れるためにも、ぜひお早めにご連絡ください。

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