財産事件 [公開日]2020年5月25日

友人が借りたお金を返さない!何の罪になるのか

「借りパク」という言葉には聞き覚えがあるでしょう。
借りパクとは、借りたお金を返さずに自分の利得とすることを言います。

お金を貸したが、その友人が音信不通になった等で借りパクされた、あるいは、自らしてしまった場合、道徳的に非難されることは致し方ありません。

それでは、道徳的な非難を超えて、借りたものを返さないことは罪、つまり、犯罪になるのでしょうか?

ここでは、「借りパク」した場合に成立しうる犯罪について解説します。

1.借りたお金を返さないことは犯罪?

友人や家族等、個人のお金の貸し借りで、又は銀行や消費者金融からお金を借りたものの、返すのが面倒になり、借りたお金を返さなかったとします。

この場合、犯罪が成立し、逮捕・起訴される可能性があるのでしょうか?

(1) 民事上の債務不履行となる

金銭の貸し借りは、民法上の金銭消費貸借契約であり、借りたお金を期日までに返さなかった場合には、契約違反となり、民事上の債務不履行となります。

債務不履行の責任といっても、金銭債務の場合は、元金に利息(遅延損害金)を加えて返済する責任があるだけです。ただ、責任を果たさなければ、場合によっては、訴訟などの法的手段をとられることもあるでしょう。

もっとも、友達同士の金銭の貸し借りだと、借りた・借りていないの水掛け論となる場合も多いでしょうし、たとえ借りていても、高額でない限り、わざわざ裁判所に訴えを提起するという方はあまりいないと思われます。

(2) 借りパクは犯罪か?

それでは、民事上の責任を超えて、借りパクは犯罪となるのでしょうか。

刑法上、借りたお金を返さないこと自体を処罰する規定はありません。つまり、借りパクの罪は存在しないのです。

そのため、警察が自宅まで来て事情を尋ねてくるといったこともありませんし、逮捕、起訴されることもありません。

これは、金銭の貸し借りの場合だけでなく、債務不履行全般に当てはまります。

債務を履行しなかったり、自己の債務が不能になったりした(売る約束をした物が焼失した等)場合、民事上の責任が問われる可能性はあっても、債務を履行しない、履行できないというだけで刑事上の責任が問われることはありません。

2.犯罪が成立しうる場合

もっとも、借りパクをすると刑法に定められている詐欺罪が成立する場合があります。

刑法246条
1項「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」
2項「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」

詐欺罪は、①詐欺行為(相手をだます行為)によって②相手が錯誤におちいり、③その錯誤に基づいて④財物や財産上の利益を他人に移転した場合に成立します。

現金や商品のような「財物」をだまし取る場合を「1項詐欺」、それ以外の経済的な利益(例えば、債権やサービスの提供を受ける等)を受ける場合を「2項詐欺」と呼びます。

借りパクをした場合に詐欺罪が成立する可能性があるのは、以下の場合が考えられます

(1) 当初から返す意思がなかった場合

当初から返す意思がないのに、「返す」と嘘をついてお金を借りた場合には、1項詐欺罪が成立します。これは詐欺罪の典型的なパターンです。

”返すと嘘をついてお金を借りた”というのが重要で、当初は返済するつもりだったが借りた後に返還したくなくなった場合は、詐欺罪が成立しません。

というのも、詐欺罪の成立には、相手をだます行為の時点で、自分が「だます行為をしている」ことを認識していること、すなわち詐欺の故意が必要だからです。

そのため、「友人にお金を貸してくれと依頼した時点では、お金を返すつもりがあった」という場合、詐欺の故意がないので詐欺罪は成立しないのです。

【詐欺の故意は立証困難?】
詐欺罪の故意ですが、特に借りパクにおいては、立証が困難と言われます。
故意というのは、内心の状態ですから、本来は、本人以外にはわからないものです。そのため、刑事手続等においては、故意を裏付ける客観的証拠が必要です。
例えば、「借用証を書かなかったこと」が、返済するつもりがなかったことの証拠になるのではと思われるかも知れません。
しかし、友人との金銭の貸し借りにおいて、借用書等を書かないことも珍しくはないので、それだけで故意があったと判断することはできないのです。
もっとも、多くの友人からお金を借りていて、一度も返したことがなく、しかも収入も資産もなく返済能力がないなどの一連の事実事情がある場合には、その各事実が、最初から返すつもりがなかったことを裏付ける証拠と評価され、詐欺の故意ありとされるケースもありえます。

(2) お金を借りていないと主張した場合

さて、当初は返済するつもりで借りたため、1項詐欺罪が成立しない場合でも、その後の行動によっては、2項詐欺罪が成立するケースがあるのです。

それは、嘘をついて借金の返済を免れた場合です。返済するべき金銭を返済せずに済んだのですから、「財産上不法の利益を得」たと言えるのです。

ただし、「嘘をついて借金の返済を免れる」と言っても、色々なケースがあります。

例えば、返済する意志を失っているのに、「来月、必ず返すから待ってくれよ。」と嘘をついて、友人に、その日の催促をやめさせたという程度では、未だ「財産上の利益」を受けるための詐欺行為があったとは評価されません。

財産上の利益には、様々なものが含まれるので、処罰の範囲を明確にする観点から、1項詐欺における「財物の交付」と同程度に具体的で確実な内容が要求されるからです。

最高裁の判例も、次のように述べています。

「債務者が、欺罔手段によつて、一時債権者の督促を免れたからといつて、ただそれだけのことでは、刑法246条2項にいう財産上の利益を得たものということはできない。」(最高裁昭和30年4月8日判決

したがって、借りパクが詐欺罪となるのは、例えば、真実は友人からの借金があるのに、それが存在しないと誤信させて、何らの債権債務も存在しないと確認する合意書に署名・押印をさせた場合のように、ある程度、返済を免れる意思があることが確実な場合に限定されるでしょう。

3.まとめ

このように、借りパクをした場合に刑事上の責任を問われるケースは限定的です。

しかし、民事上の責任を問われる可能性はあります。場合によっては、お金を貸してくれた友人が法的手段をとることがあるのです。

刑事上の責任と民事上の責任は異なるものです。「詐欺罪じゃないから、借りた金は返さなくても問題ない」とはならないので注意しましょう。

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