財産事件 [公開日]2018年2月28日[更新日]2019年10月30日

置き引きの手口|置き引きをしたら窃盗罪で逮捕される!

置き引き」という用語はよく聞くかと思いますが、具体的に何という罪に問われ、どのような刑罰が科されるのか、ご存知ではないという方も多いと思います。

「つい魔がさして財布などを置き引きしてしまった」という方がいらっしゃるかもしれませんが、その場合、防犯カメラなどから後日逮捕されることはあるのでしょうか。また、捕まった場合、罪の重さはどのようになっているのでしょうか。

以下においては、置き引きの手口、刑罰、逮捕の類型などについて解説します。
なお、以下の刑法における条文は、単に条文番号のみを掲げています。

1.置き引きの手口

置き引きは、置いてある他人の荷物などを持ち去ることをいいます。
例えば、パチンコ店、ゲームセンターやスーパーマーケットに置き忘れた財布、公衆トイレ内に忘れてあった財布、自転車の前かごに取り忘れられていたカバン、ATMから下ろして持ち帰るのを忘れていった現金などを持ち去れば、置き引きに当たります。

なお、よく似た手口の犯行として「ひったくり」があります。
ひったくりとは、すれちがいざまなどに、他人の持っている物を奪って逃げることをいいます。

例えば、ぶつかりざまに人の物を取ったり、夜間の人通りの少ない路上で歩いていた女性の後ろからバイクや自転車で近づいて、女性の持っているバッグなどを奪って逃げたりすれば、それはひったくりに当たります。

2.置き引きの罪

(1) 窃盗罪・占有離脱物横領罪

置き引きは、窃盗罪(刑法235条)が成立するのが原則です。
また、窃盗罪は未遂も処罰されます(同法243条)。

刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

また、置き引きは占有離脱物横領罪(254条)の成立にとどまる場合もあります。

刑法第254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料に処する。

両者の刑罰には大きな差がありますが、その違いは「他人の財物」を「窃取」したか、「漂流物その他占有を離れた他人の物」を「横領」したかによります。

実務では、置き引きについて窃盗罪又は占有離脱物横領罪のいずれの罪が成立するのかが争われる事例も少なくありませんが、以下の事例で確認をしてみましょう。

(2) 置き引きの事例

①最判昭32.11.8刑集11・12・3061
バスに乗るために行列に加わっていた者が、カメラを身辺約30cmの箇所に置き、行列の移動につれて改札口手前約3.6mの所に来たとき(時間にして約5分、距離にして約20m)に、カメラを持ち去った犯人の場合⇒窃盗罪が成立

刑法上の占有は人が物を実力的に支配する関係であって、その支配の態様は(中略)必ずしも物の現実の所持又は監視を必要とするものではなく、物が占有者の支配力の及ぶ場所に存在するを以て足りると解すべきである。

②東京高判昭54.4.12判時938・133
乗車券等を買おうとした者が、駅出札所のカウンター(指定券、特急券窓口)で特急券を買った際、そこに財布を置き、別のカウンター(乗車券窓口)で乗車券を買ったとき(時間にして僅かに1~2分、距離にして約15m)に、財布を持ち去った犯人の場合⇒窃盗罪が成立

被害者は駅出札所のカウンターから離れた直後に本件財布を置いたことに気づいており、しかも乗車券窓口に至った時点において駅出札所のカウンター上の本件財布に対し、被害者の目が届き、その支配力を推し及ぼすについて相当な場所的区域内にあったものと認められるから、かかる時間的、場所的状況下にあった本件財布は、依然として被害者の実力的支配のうちにあったと認めるのが相当である。

③最決平16.8.25刑集58・6・515
本件ポシェットをベンチの上に置き忘れたまま、友人を駅の改札口まで送るため、友人とその場を離れた者が、公園出口にある横断歩道橋を上り、上記ベンチから約27mの距離にあるその階段踊り場まで来たときに、本件ポシェットを持ち去った犯人の場合⇒窃盗罪が成立

(被害者が本件ポシェットのことを一時的に失念したまま現場から立ち去りつつあったことを考慮しても)被告人が本件ポシェットを領得したのは、被害者がこれを置き忘れてベンチから約27mしか離れていない場所まで歩いて行った時点であったことなど、(中略)被害者の本件ポシェットに対する占有はなお失われておらず、被告人の本件領得行為は窃盗罪に当たる。

④東京高判平3.4.1判時1400・128
大規模なスーパーマーケットの6階ベンチの上に本件札入れを置き忘れたままその場を去った者が、エスカレーターを利用しても片道約2分20秒を要する地下1階にまで移動し、約10分余り経過したときに、本件札入れを持ち去った犯人の場合⇒占有離脱物横領罪が成立

被害者が本件札入れを置き忘れた場所を明確に記憶していたことや、右ベンチの近くに居合わせた女性が本件札入れの存在に気づいており、持ち主が取りに戻るのを予期してこれを注視していたことなどを考慮しても、(中略)被害者の本件札入れに対する支配力が及んでいたとはたやすく断じ得ない

3.置き引きで逮捕されるケース

置き引きでは、周囲の人が犯行現場を目撃して現行犯逮捕されるケースでなく、防犯カメラの映像などから犯行が発覚し、後日、警察に逮捕され、調書を取られることがよくあります。

最近は、そこかしこに設置された防犯カメラの精度も上がってきている他、駅構内で置き引きをした場合、Suicaには出入場履歴が記録されます。
「昔のことだから気づかれていないはず」「逃げられたのだからもう大丈夫」などと思わずに、置き引きを犯してしまったならば弁護士に相談することをお勧めします。

起訴になれば、上記に見たように厳しい処罰も考えられます。たとえ罰金で終わったとしても前科となるので、置き引きが発覚して逮捕されてしまう前に、弁護士に相談して対処法を考えましょう。

なお、置き引きの被害者と示談交渉をすることになった場合、被害金額はもちろんのこと、クレジットカードなどの再発行にかかった費用なども、損害賠償金として弁償をすることになるでしょう。

窃盗事件や横領事件の弁護内容については、以下のコラムもご覧ください。

[参考記事]

「万引」「窃盗」「横領」の違いとは?不起訴のために示談したい!

【「落ちていたので警察に届けようとしていた」と主張したい場合】
誰かに犯行現場を見られた場合、本意かどうかはともかく「落ちていたので警察に届けようとしていた」と咄嗟に言ってしまうケースも多いでしょう。
この場合、本当に盗むという意思はなく、警察に届けるつもりであったことが立証できるのならば、現行犯逮捕とはなりません。
しかし、「鞄の中から財布だけを取り出した」「拾った財布の中身は使っていないが、自分の財布に現金を移し替えていた」などといった場合には、警察に届けるつもりであったことを立証することが難しくなります。

4.置き引きで逮捕されたら弁護士へご相談を

警察の捜査能力は非常に高く、特に置き引きははっきりと防犯カメラに映っていることが多いため、忘れた頃に家に警察がやってくるということがあるようです。

置き引きをしてしまって、いつ逮捕されるか不安な日々を送っている方、実際に警察に逮捕されてしまったという方は、お早めに泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください
当事務所では、置き引きに関する弁護も経験がございます。

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