財産事件 [公開日]2020年3月18日

警察は万引きを捜査する?現行犯以外の後日逮捕は難しいか?


万引きは発生率の高い犯罪の1つです。しかし、「警察は万引き事件を取り扱わない」あるいは「警察は万引きを全然捜査しない」と言われることがあるようです。また、「警察が捜査したとしても、万引きは現行犯以外では逮捕することができない」と言われることもあります。

実際に、警察は万引きを捜査しないのでしょうか?また、万引きは現行犯以外では逮捕できないというのは本当なのでしょうか?

ここでは、万引きの罪について、万引きで逮捕される場合や警察の万引き捜査、万引きで逮捕されるのを防ぐ方法について解説します。

1.万引きは窃盗罪にあたる

万引きは犯罪です。万引きの罪は、刑法235条の窃盗罪で処罰されます。

刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

コンビニでおにぎり1つ盗んでも、宝石店でダイヤの指輪1つ盗んでも「財物を窃取した」ことに変わりありませんので、両者ともに窃盗罪が成立します。
万引き以外に窃盗罪で処罰される有名なものは、空き巣、ひったくり、すり等です。

10年以下の懲役とあるように、万引きは長期にわたり刑務所に入る可能性のある犯罪です。「万引きなんて軽い犯罪だ」と考えるべきではないということです。

2.万引きで逮捕される場合とは

逮捕には、通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の3種類があります。万引きで逮捕されることが最も多いのは現行犯逮捕ですが、事案によっては通常逮捕(後日の逮捕)が行われる可能性もあります(なお、緊急逮捕は滅多に行われないため、ここでの説明は割愛します)。

(1) 現行犯逮捕

現行犯逮捕についての規定は以下のようになっています。

刑事訴訟法第212条1項
現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者を現行犯人とする。

例えば、お店で物を鞄に入れた瞬間に取り押さえられた場合や、レジで一部の商品だけを会計後に万引きGメン等から声を掛けられた場合に、現行犯逮捕が成立します。

また、以下の場合には、現行犯に準じるものとして現行犯逮捕されます(準現行犯逮捕)。

第212条2項
左の各号の一にあたる者が、罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
1号「犯人として追呼されているとき。」
2号「贓物(ぞうぶつ)又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。」
3号「身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。」
4号「誰何(すいか)されて逃走しようとするとき。」
※贓物とは窃盗など財産犯罪の被害品です。誰何とは呼びとがめられることです。

例えば、万引きして店舗から出たけれど、気づいた店員に追いかけられ、走って逃げたが捕まってしまったという場合、準現行犯逮捕が行われます。

また、現行犯逮捕は、後述する通常逮捕と異なり、一般の方でも行うことが可能です。万引きによる逮捕は、店員による現行犯逮捕が多いのが現状です。

第216条
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

(2) 通常逮捕

通常逮捕とは、警察官・検察官が裁判官に令状を請求して行う逮捕です。

第199条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。

現行犯逮捕とは異なり、私人による通常逮捕は不可能です。また、捜査機関が勝手に被疑者を逮捕できるわけではなく、あらかじめ裁判官の審査を受ける必要があります。

万引きした者が通常逮捕されるのは、万引きした後に防犯カメラの映像から犯行が発覚した場合や、店員や目撃者等の証言により身元が割れた場合、万引きが発覚した時点で現行犯逮捕はされなかったが後に逮捕の必要性が生じた場合(被疑者が捜査に非協力的、逃亡・罪証隠滅のおそれがある等)などです。

(3) 通常逮捕は難しい?

上記の通り、万引きは現行犯以外で逮捕されないというのは誤りです。しかし、万引きは現行犯以外での逮捕が難しいというのは事実です。

犯罪捜査でもっとも難しいのは、「その犯行が誰によるものか」を裏付ける証拠の発見・収集です。

例えば殺人事件では、刺し傷のある死体という被害事実の証拠があると、現場に残された凶器の指紋、犯人の衣服の繊維、唾液や毛髪等からわかるDNA、そして怨恨などの人間関係から、殺人という犯行を行った者を特定することができます。

これに対し、レジを通っていないのに棚から消失している商品があれば、万引きにあったという被害の事実は判明しますが、万引きという犯行を行った犯人が誰であるかがわかる証拠が残ることは通常はありません。

店内の防犯ビデオに犯行の状況や犯人の容姿が記録されている場合もありますが、その場合でも、通常は、犯人がどこの誰かを特定できるわけではありませんから、犯人を捜し出すことができないのです。

このように、万引きの事実が発覚しても、犯行がいつ行われたのかが分からない犯人を特定するに足りる証拠も残らないため、基本的に犯人を割り出すことが困難です。

そのため、万引きは現行犯以外での逮捕が難しいとされるのです。

【警察は万引きを捜査しない?】
警察は万引きを捜査しないと言われますが、「捜査しない」ではなく「捜査できない」といった方が適切です。その理由は、先述した万引きの性質(犯人を特定する証拠が残りにくい)や、事件の多さや警察組織の人的限界のためです。
警察が認知する事件は年に90~100万件と言われるように膨大な数の事件が警察によって把握されます。他方、警察官の人数はおよそ25万人です。また、警察官の職務は事件の捜査に限られません(例えば交通整理)。そのため、全ての犯罪を捜査することは不可能で、認知した事件のうち優先順位が高いものから捜査を行うことになるのです。

3.万引きで逮捕・勾留されるのを防ぐには

万引きをして、その場で現行犯逮捕されなかったとしても、後に警察がやってきて通常逮捕がなされる可能性があります。逮捕されると、2~3日間の身体拘束がなされます。その期間は仕事や学校に行くことができなくなります。

また、逮捕に続いて勾留(長期の身体拘束)がなされると、更に10日の身体拘束が続きます。

そして、場合によっては、窃盗の罪で起訴され更に身体拘束(起訴後の勾留)が続く可能性があります。裁判で有罪判決が出されると、前科者となってしまい様々な不利益を受けます。

(1) 万引きによる逮捕・勾留を防ぐには

万引きによる逮捕・勾留を防ぐには、被害者との間で「示談」を成立させることが重要です。

示談は、被疑者と被害者が行うもので、被害額等を弁償して犯行事実を許してもらうものです。

逮捕以前に被害者との示談が成立していると、被疑者の身体を拘束して取調べ等の捜査を行う必要性がないとされる可能性が高まります。これは逮捕・勾留されてしまった被疑者にも言えることです。

逮捕・勾留中に示談が成立すると、身体拘束から早期に解放される可能性が高まります(もっともこの場合は、自ら示談交渉ができないため、弁護士に示談交渉を依頼することになります。)

また、示談が成立すると、検察官が被疑者を起訴する可能性が低くなります。検察官は示談の成立という事実を被疑者に有利な事実として考慮してくれます。

第248条
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

【自首をするべきか?】
逮捕・勾留を免れる手段として、示談以外に自首があります。逮捕・勾留は逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れがある場合に行われるのですが、自ら進んで犯罪を明らかにし、上記恐れがないことを示すことで、逮捕・拘留されるのを防ぐことが可能になります。しかし、自首=逮捕・勾留されないというわけではなく、捜査機関は様々な事情を考慮して逮捕するか否かを判断します。もっとも、自首したという事実は、被疑者に有利な事情として考慮してくれます。

(2) 示談は弁護士に依頼するのが安心

示談が成立するか否かは後の人生を左右する重大な分岐点です。そのため、法律のプロである弁護士に示談交渉を依頼すべきです。

刑事事件はスピードが重要と言われるように、示談の成立が遅れるにつれて、起訴され有罪になる可能性が高まります。早期に適切な方法で示談を成立させるために、弁護士に示談の依頼をするのがベストです。

4.まとめ

万引きで後日に通常逮捕されることがある以上は、早期に示談を成立させ、逮捕・勾留の可能性を低くすることを考えるべきです。

万引きをして逮捕されるか不安に思う方は、お早めに示談経験豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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