財産事件 [公開日]2020年8月21日

自転車窃盗の刑罰|初犯・未成年でも刑罰は科されるの?

自転車窃盗は、窃盗犯の中でも特に多い犯罪類型の1つです。
駅や商業施設に置かれてある自転車は所有者の目を離れているので、勝手に他人が乗っていってしまうことも少なくありません。

大学生などが軽い気持ちで自転車を盗んでしまったというケースや、飲み会の帰りに酔った勢いでそのまま知らない人の自転車に乗って帰ってしまったというケースもあるようです。

しかし、これはれっきとした犯罪(窃盗罪)です。

では、自転車を盗んでしまったら、どのような罪に問われるのでしょうか?

今回は、自転車窃盗について解説します。

1.自転車を窃盗した場合は「窃盗罪」

他人の自転車を盗むという行為は、刑法上「窃盗罪」に該当します。

刑法235条では「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」とすると定めています。

刑法では、ある行為が犯罪にあたるための条件を「構成要件」と呼びます。
窃盗罪の構成要件としては、まず他人の財物を「窃取」すること、すなわち財物に対する占有(事実上の支配状態)を侵害するという客観的要件が必要です。

さらに、客観的要件以外にも、主観的要件として「不法領得の意思」が必要です。

「不法領得の意思」とは、「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い、利用し処分する」ことを指します。

かつて、自転車窃盗は単なる一時的な無断借用に過ぎず、権利者を排除して他人の物を自己の所有物とする意思に欠けるので、乗り捨てにして返還をしないつもりでない限り、窃盗罪は成立しないとされ、裁判所もこれを支持していました。

しかし、今日では、たとえ自転車を返還するつもりであっても、一般的に持ち主が許さないであろう態様での利用であれば、不法領得の意思に欠けることはないと理解されるようになり、裁判例でも窃盗罪の成立が認められる傾向にあります。

自転車窃盗の場合、他人の家や商業施設、駅などに駐輪している自転車を持っていけば、窃盗罪が成立します。

窃盗罪で逮捕されると「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処される可能性があります。

また窃盗罪以外にも、人の家や商業施設の敷地内に置いてある自転車を盗った場合には、住居・建造物侵入罪(130条)として「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」に処される可能性もあります。

さらに、自転車の鍵を壊した場合には、261条の器物損壊罪として「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」の可能性もあります。

このように、自転車窃盗で捕まった場合、想像しているよりも重い刑罰が課される可能性があるのです。

2.自転車窃盗の処罰の重さ

(1) 初犯の場合

重い罪に処されるといっても、「実際には起訴もされず、釈放されるのだろう」と考えている方も多いでしょう。
しかし、これはケースバイケースといえます。

確かに、初犯で被害金額も少なく、他に前科等もない場合には、被害者と示談をしていればすぐに釈放してもらえて、そのまま不起訴となる可能性が高いでしょう。

これに対し、自転車窃盗を何度も繰り返しており、被害者が複数となり、被害金額の合計額も相当な金額になってくると、起訴される可能性は十分にあります。

また、たとえ起訴されても、初犯の場合は罰金刑で済んだり執行猶予がついたりする可能性が高いですが、再犯の場合や、被害者が多く被害金額も高額になってくる場合は懲役刑の実刑もありえます。

(2) 未成年の場合

未成年の場合、「若気の至りでママチャリを盗んでしまった」というケースもあります。

では中学生や高校生など、20歳未満の犯罪の場合、逮捕され刑罰に処されることはあるのでしょうか?

まず、犯行が発覚すれば逮捕される可能性はあります。
しかし、逮捕後は、原則として成人と同じ刑事裁判を受けることはなく、家庭裁判所に送致され、少年鑑別所(悪質な場合や再犯の場合)に収容された後、少年審判を受け、保釈請求や少年院送致などの保護処分を受ける可能性があるでしょう。

14歳未満の場合には刑法上の犯罪とはなりませんが、触法少年として児童相談所などに送られ、一時保護という名目で身柄を拘束される場合があります。

さらに、児童相談所の判断により家庭裁判所に送致される場合もあり、その後は14歳以上の場合と同じ手続となります。

このように、未成年者の自転車窃盗で成人と同じ刑事処分を受ける可能性はありませんが、無条件に簡単に許されるというわけではなく、未成年者の保護育成のために用意された手続による扱いを受けることになります。

[参考記事]

未成年犯罪と成人犯罪との違い。手続、裁判、審決

3.自転車窃盗で逮捕されたらどうなる?

では、自転車窃盗で逮捕された場合、その後どのような手続きになるのでしょうか。

(1) 一般的な逮捕後の手続き

窃盗罪で逮捕された場合、一般論としては次のように手続きが進んでいきます。

まず、逮捕後48時間は警察官による取り調べを受けるでしょう。
48時間以内に釈放されなければ、事件と身柄は検察に送致され、送致から24時間以内(逮捕から72時間以内)に裁判官へ対して勾留請求を行うか判断されます。

逃亡の可能性や罪証隠滅の可能性があると判断された場合には勾留請求が行われ、裁判官により勾留決定が下ったら、勾留請求の日から10日間は原則として身柄が拘束されます。
また、勾留が延長されればさらに最大10日間(最高で逮捕から23日間)家に帰れなくなってしまうでしょう。

勾留中に起訴・不起訴が決定します。不起訴となれば釈放されますが、起訴となると被告人勾留が続きます。

起訴されると99%の確率で有罪となり、窃盗罪の場合は罰金刑、懲役刑の可能性があります。

このように、逮捕されると長期間の身柄拘束や起訴につながる可能性もあります。

(2) 逮捕後の釈放の可能性

自転車窃盗で逮捕されたら、すぐに釈放されることはあり得るのでしょうか?

一般的に初犯の場合であれば、警察に捕まった後きちんと反省しており、被害者に処罰意思もない(自転車を返還している、弁償して示談が成立しているなど)場合であれば、検察官への送致を要しない「微罪処分」としてすぐに釈放してもらえる可能性はあるでしょう。

しかし、先にお伝えした通り、窃盗罪には重い刑罰が規定されているため、悪質であったり再犯の場合には逮捕後に正式な手続きが進められ身柄が勾留されることもあります。

個々の具体的な事案でどのようになる可能性があるのかは、刑事事件の実績豊富な弁護士に見通しを聞いてみることをお勧めします。

自転車窃盗の時効は7年

なお、窃盗事件を起こした場合、永遠に逮捕される可能性があるわけではありません。

刑事事件には公訴時効があり、これは一定の期間が過ぎると起訴できなくなってしまう制度を指します。
起訴できないということは、裁判にかけられないので刑罰に処されることもないということです。

犯罪ごとに公訴時効が定められていますが、窃盗罪の場合は7年で時効となります。

具体的には、窃盗をした日から7年以上経過すると、公訴時効となります。

一般論としては、公訴時効が完成しているか否かは捜査を尽くしてみないと判明しませんので、時効期間を過ぎていても逮捕されないわけではありません。

しかし、単なる自転車窃盗では7年以上も捜査が継続することはあり得ませんから、時効期間を過ぎれば実際に逮捕される可能性はないと考えて良いでしょう。

もっとも、これは刑事事件の話であり、逮捕されなくても公訴時効後に被害者から損害賠償を求められることはあるでしょう。民事上の賠償責任の時効と公訴時効は別個の制度であり、前者は被害者が自転車が盗難された事実とその犯人を知ったときから3年又は盗難から20年が消滅時効期間です。

したがって、被害者が犯人を知らないままだと、少なくとも20年間は損害賠償を請求される可能性が続くことになります。

被害品がビンテージの高額なロードバイクであるケースや、その自転車に深い思い入れがある場合には、被害者が諦めず、損害賠償請求の可能性は残ります。

自転車窃盗を犯してしまったが、まだ逮捕されておらず不安というケースもあるでしょう。
しかし、そういった不安を抱えたまま生活していくよりは、警察あるいは弁護士に話し、自首して罪を告白すれば不起訴などの良い結果につながることもあります。

4.自転車盗における示談について

自転車窃盗の場合被害者と示談をしたら、どのような効果があるのでしょうか?

最後に、示談は刑罰や量刑に影響するのか、支払うべき示談金はどれくらいなのかをご説明いたします。

(1) 示談の効果

窃盗罪で逮捕された場合、できるだけ早い段階で被害者との示談交渉に動くべきです。
というのも、示談が成立していれば「不起訴」になる可能性も高いためです。

示談とは、当該事件に関して被害者と和解をすることを指します。示談交渉の際には、被害者への誠意ある謝罪と被害金額の弁償、慰謝料の支払いなどが必要となります。

起訴・不起訴を判断するのは検察ですが、通常示談が成立している窃盗事件であれば、(被害金額が大きく、再犯であるケースでない限り)不起訴の可能性が高くなります。
検察も、被害者との和解が済んでいる事件を無理に起訴しようとはしないためです。

また仮に起訴されたとしても、被害者との示談は量刑においても評価されます。

起訴されてしまうと、ほぼ確実に有罪となってしまい前科はつきますが、示談が考慮され罰金刑で済む可能性も高くなります。執行猶予がつく可能性もあるでしょう。

このように、示談をすることには、不起訴を獲得しやすくなる、執行猶予付き判決や量刑等で考慮してもらえるなど多くのメリットがあります。

(2) 自転車窃盗の示談金の相場

示談を成立させると、不起訴になる可能性が高まるなど、たくさんの利点があります。
しかし、示談をするためにかかる示談金の相場も気になるところです。

示談金がいくらになるのかは、被害者が何を求めているかにも左右されます。

例えば、自転車窃盗の場合は、「盗んだ自転車を返してくれれば良い」とする被害者もいるでしょう。この場合、自転車を返還すればそれで示談金が不要となることもあります。

他方、自転車を壊した、他に売ってしまった場合には、代わりの自転車を用意するためのお金が必要になるでしょう。

さらに被害者が「許せない」と考えている場合には、自転車の代金に加え、慰謝料として数十万円程度支払うこともあります。

最近ではロードバイクが人気ですが、通常のママチャリと違い、ロードバイクは数十万円することもあります。この場合、通常の自転車よりも被害弁償にお金がかかるという可能性もあるでしょう。

このように、自転車窃盗の示談金といっても多種多様です。

どのような自転車を盗み、弁償代金はいくらなのか、被害者が和解のために何を求めているのか、によって示談金額は変わってきます。
詳しくは弁護士にお尋ねください。

5.自転車窃盗で捕まったら、弁護士に相談を

自転車窃盗を犯してしまった場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は今とるべき対応に関するアドバイスだけでなく、示談交渉までサポートしてくれるでしょう。

また、逮捕されてしまった場合にも、できるだけ早く弁護士に依頼してください。

刑事事件では早期釈放を目指し、日常生活にできる限り支障がないように示談を進めていくべきです。早く動けば、その分示談成立も早まり、不起訴処分が得られる可能性も高くなります。

窃盗事件を起こしてしまった方は、刑事弁護の実績豊富な泉総合法律事務所の弁護士に一度ご相談ください。

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