社内・職場での窃盗|逮捕される?どんな処分になるか?

[公開日]2020年6月1日

たとえ自分が所属する会社内にあるものでも、会社の金銭・機材・その備品等を盗むことは犯罪です。

犯罪を犯すと、逮捕・起訴(裁判)される可能性があるのはご存知でしょう。それだけにとどまらず、社内のものを盗んだ場合、会社から処分を受ける可能性があります。
刑事罰と会社の処分は別個のものなので、混同してはいけません。

ここでは、社内の物を盗んだ場合に行われる処分について説明します。

1.社内の物を盗んだ場合に成立しうる犯罪

社内の物を勝手に持ち出して自分のものにしてしまったり、処分してしまったりすることは犯罪です。この場合に成立しうる犯罪は、窃盗罪横領罪です。

  • 窃盗罪(刑法235条) 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
  • 横領罪(刑法252条1項) 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
  • 業務上横領罪(刑法253条)  業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

窃盗罪と横領罪の違いは、犯行時にその物の占有が誰にあったかです。
占有とは、その物を事実上支配している状態です。被害品が他人の占有に属していた場合には窃盗罪が、自分の占有に属していた場合には横領罪が成立します。

会社の物を自分が占有しているか否かは、具体的な事情により判断します。

例えば、社屋内に設置された金庫に入っている現金を盗んだ場合や、会社に備え付けられているパソコン等を奪った場合は、その現金やパソコンは、会社経営者やその物品の管理責任者が占有していると評価されるので、窃盗罪が成立します。

他方、会社から自分が預かって自宅に保管している商品や、社屋外で自由に扱うことが許されている会社の器具等を処分してしまうなど、ほしいままに自分の物にした場合には横領罪が成立します。

なお、会社の金銭を管理する経理部門の従業員のように、その社会生活上の地位に基づき反復継続して被害品を占有する者が横領行為をしたときは、業務上横領罪として刑が重くなります。

[参考記事]

業務上横領罪で刑事告訴・被害届!横領・着服事件の示談の重要性

2.捜査機関による逮捕と会社からの処分

窃盗罪が成立するにせよ、横領罪が成立するにせよ、犯罪を犯した場合には捜査機関により逮捕・起訴される可能性があります。

これは刑法に触れる行為をしたことにより、国家から受ける刑事処分です。それとは別に、自分が働いている会社からも懲戒処分を受ける可能性があります。

ここでは、両者を分けて説明します。

(1) 刑事処分(逮捕・起訴、裁判所による有罪判決)

犯罪を行った場合、捜査機関により逮捕・勾留の身体拘束がなされる可能性があります。

もっとも、逮捕・勾留は闇雲にできるというものではなく、それを行う理由と必要性が求められます。

例えば、被疑者が犯罪の証拠を隠滅する可能性がある、又は処罰を免れるため逃亡するおそれがあるといった場合です。

また、逮捕・勾留に続き起訴処分がなされる可能性があります。起訴がなされると裁判となります。

日本の刑事司法は有罪率が非常に高いので、有罪判決を避けるためには、起訴を回避することがとても重要です。

たとえ罰金刑であっても有罪判決である以上、前科として記録されてしまいますし、罰金刑でなければ、執行猶予付きの判決がなされない限り、懲役刑として、刑務所に服役することになります。

(2) 会社からの処分

国から受ける刑事処分とは別に、会社から懲戒処分を受ける可能性があります。

会社が行う懲戒処分は、各会社の就業規則に基づいて行われます。懲戒処分には各企業毎に様々な内容がありますが、多く見られるものとして、以下のものがあります。

  • 戒告・・・口頭で注意すること
  • 譴責(けんせき)・・・始末書を提出させて戒めること
  • 減給
  • 出勤停止
  • 降格
  • 諭旨解雇・・・懲戒解雇が相当な事案でも、罪一等を減じて退職金の一部又は全部を支給する解雇とする場合や、会社と従業員の話し合いのうえで自発的な退職を促す場合(応じないときは懲戒解雇とする)など、様々なパターンがあります。
  • 懲戒解雇・・・会社による一方的な解雇処分で、退職金全部の不支給を伴うことが通常です。

解雇については、労働契約法による制限があります。「解雇権濫用」法理と呼びます。

労働契約法16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする

窃盗や横領は重大犯罪ですが、懲戒処分は企業内の秩序維持を目的とするものですから、犯罪行為が会社業務と無関係な私生活上の非行に過ぎない場合は、懲戒解雇をすることは「解雇権濫用」であり認められないことがあります。

しかし、会社の物品を窃盗・横領したとなれば、企業秩序違反(職場規律違反)は明白ですので、諭旨解雇や懲戒解雇が相当な場合も多いでしょう。

なお、会社の物品を窃盗・横領したことで会社に経済的な損害を与えた場合には、損害賠償義務を負いますから、賠償金を支払わない場合、民事訴訟を提起され、損害賠償を請求されることがあります。

3.もし職場の物を盗んでしまったら

以上のことから分かるように、会社の物を盗む等すると、以下の事態になる可能性があります。

①窃盗罪・横領罪が成立することで、逮捕・勾留、起訴され、懲役刑・罰金刑に処される
②会社内の秩序を乱したことにより、戒告・解雇等の懲戒処分がなされる
③会社に損害を与えたことにより、損害賠償の支払いを請求される

これらのことが一挙に重なると、被疑者の生活はままならなくなってしまいます。

この事態を回避するためにも、早めに弁護士にご相談ください。弁護士は以下のことをしてくれます。

(1) 示談交渉

示談とは、示談金を支払う代わりに犯罪事実を許すとする当事者間の合意を言います。

窃盗・横領事件では、被害者との示談が非常に重要です。
示談が成立することで、検察官が起訴を控える判断をしてくれる可能性が高まります。

会社側との示談によって、懲戒解雇を回避して諭旨解雇や普通解雇としてもらえたり、退職金の一部支給を受けることができたり、賠償金の一部減免を認めてもらえたりという有利な条件を引き出せる場合もあります。

(2) 会社の処分を争う

前述のとおり、会社の物品を窃盗・横領したときは、会社から、企業秩序を乱すものとして、懲戒解雇等の重い懲戒処分を受ける可能性が高くなります。

しかし、たとえ窃盗・横領が事実あっても、懲戒解雇に限らず、懲戒処分の内容は、規律違反行為の内容、程度、その他諸事情に照らして相当なものでなくてはなりません(懲戒処分の相当性原則)。

例えば、長年にわたり誠実に勤続し、勤務態度も良好で、会社に貢献してきた営業部員が、顧客から預かった売上金のうち、数万円程度を、ついパチンコで使ってしまったという事案を考えて見てください。

そのような行為を何度も繰り返していた事実があるならともかく、今回発覚した件が初めてで、単なる出来心に過ぎないという場合、懲戒解雇が相当とは言えません。

また、会社側が窃盗・横領だと主張して懲戒処分を下しても、労働者の身に覚えがない場合、懲戒処分の前提である犯罪事実の有無自体を争う余地があります。

これらのような場合、労働事件に強い弁護士に依頼し、代理人として、会社側との交渉を行ってもらうことができます。

会社側が応じなければ、労働審判や民事訴訟で、懲戒処分が無効であることを主張してもらうことができます。

4.まとめ

会社の物を盗むのはもちろん良いことではありません。反省して、以後同じことを繰り返さないように誓う必要があります。

しかし、そうだとしても、過度の制裁を行うことは妥当ではありません。
不当な制裁を免れるべく、会社の物を盗んでしまった方は、弁護士にご相談ください。

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