酔った勢いで電車でスリをしてしまい警察沙汰に…どうすればいい?

財産事件

酔った勢いで電車でスリをしてしまい警察沙汰に…どうすればいい?

金曜になると、多くのサラリーマンが飲みに出かけ、酔っ払って家に帰る光景を目にします。仕事のストレスを週末に発散する方が大変多くいらっしゃるということでしょう。

しかし、お酒に酔うこともほどほどにしないと、大変なことになってしまいます。

実は、週末になると弁護士事務所に急遽かけこんで、「家族がスリで捕まった」というご相談を受けることがあります。酔っ払った勢いで電車内にてスリを働いてしまい、逮捕されたというご事情です。

逮捕されてから「なんてことをしたのか…」と反省する方もいらっしゃれば、「全く記憶にない」という方もいます。

スリは窃盗罪という犯罪になるため、警察沙汰になってしまった後は多くの人に迷惑をかけることになってしまいます。

そこで、今回は酔っ払って電車内でスリをはたらいてしまった場合の窃盗罪について解説します。

1.スリは窃盗罪

(1) 被害者にも加害者にもなり得るスリ事件

スリ」と聞くとどのようなイメージをお持ちですか?

道端でぶつかったとき、あるいはすれ違いざまに、電車内で財布をとられてしまうといったイメージでしょうか。

また、犯人は刑務所を出たばかりでお金がない、あるいは何度も犯行を行っている常習犯というイメージを持たれているかもしれません。

スリとは、道や車内、建物内などで人の所持品を盗むことです。スリの常習犯は被害者に気付かれず犯罪を行うことが得意で、「気づいたら、財布がなかった!」というケースもよくあります。

実際、電車内ではスリが数多く発生しています。電車内で酔っ払って寝ている人はターゲットになりやすく、つい最近も電車内でのスリの事件が起きています。

2018年5月23日未明に起きた事件では、JR山手線の車内で寝ていた男性のポケットから財布を盗んだとして、男性が逮捕されています。

彼は10回以上犯行を繰り返しており、「刑務所を出たばかりで収入がなかった」と話しています。

犯人は捕まりましたが、スリの報告は相次いでいるため、引き続き警察が注意を促しているようです。

酔っ払って電車に乗るのは危険だということです。

しかし、酔っ払って電車に乗った場合、スリ被害に遭うだけではありません。逆に、スリを行ってしまう人もいます。

普通のサラリーマンが、酔っ払った勢いで人の財布を電車内で盗んでしまい、逮捕されてしまったが記憶にないというケースです。

初犯であればすぐに釈放されることも多いですが、犯行を重くみた場合、起訴されてしまうこともあります。

このように、酔っ払って電車にのると、自分が被害者になるだけではありません。

気が大きくなり加害者になってしまうケースもありますので、十分に気をつけてください。

(2) スリは窃盗罪

電車内で他人の所持品を盗み取った場合には、窃盗罪が成立します。窃盗罪は、刑法235条に定められた犯罪です。

刑法235条 窃盗罪
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

窃盗罪の代表例としては、万引き、空き巣、スリなどがあります。

窃盗罪とは違う一般名称がついていることから、特に万引きは軽く見られがちですが、10年以下の懲役の可能性もある犯罪です。

窃盗罪が成立するためには、①他人が占有する財物を、②窃取すること、③不法領得の意思があることが必要です。

これらは、窃盗罪の構成要件と呼ばれています。

①他人が占有する財物

他人が占有する財物とは、占有権を有する財物についてのみ窃盗罪が成立するということです。誰のものでもない非占有物や占有離脱物に関して窃盗罪は成立しません。

また、財物とは、有体物を指します。

例えば、電気は財物にあたりません。人の支配がある有体物については法的保護を与えましょうということです。

②窃取すること

窃取することとは、占有者の意思に反して占有を自己または第三者に移転させることをさします。

勝手に他人の物を取った場合は、「窃取」に当たる可能性があります。

③不法領得の意思があること

不法領得の意思があることとは、物の効用に従って利用・処分する意思と権利者を排除する意思のことをさします。

簡単に言うと、自分の物として当該財物を使う意思のことです。

盗んだのだから当たり前と思うかもしれませんが、領得罪や毀棄罪等と区別するためにこれが必要となります。

スリの場合、所持者の意思に反して「占有する財物」である財布等を盗んでおり「窃取」といえます。

また、中身の金銭を使用するなどの目的もあるため、「不法領得の意思」が存在し、窃盗罪の構成要件を満たします。

このように、スリは窃盗罪として起訴させる可能性のある犯罪です。決して軽い罪ではないことを憶えておきましょう。

(3) 酔っ払っている場合は免責されないのか

では、酔っ払って犯行に及んでいる場合、免責などは受けられないのでしょうか。

刑法39条には、「心神喪失者の行為は、罰しない。」「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。」との規定があります。

心神喪失者とは、行為の善悪や是非について判断ができない状態の人、心神耗弱者とは、行為の善悪や是非について判断が著しく困難である状態の人を指します。

精神障害のある人などを想定して作られた規定ですが、酩酊、いわゆるお酒に酔った状態の人も対象となります。

しかし、酩酊(=お酒に酔った状態)の場合でも、「少し酔っているな」「今日はいつもより酔っ払っているかも」くらいの意識があれば、39条の適用外となります。この場合は、責任能力があると判断され、スリを働いた場合は窃盗罪が成立するでしょう。

また、飲み始める段階で責任能力があり、酔うことを利用して犯行を行った場合などは完全責任能力があると判断されることもあります。

他方、異常酩酊(=興奮して記憶が断片的になったり、意識障害を発症し妄想など意味不明な言動が出てしまったりした状態)の場合は、心神耗弱や心神喪失が認められる可能性もあります。

しかし、いくら泥酔していたとしても、窃盗という行為を実際に行っている以上、犯行当時には意識があったと警察官は判断するものです。このため、実際に記憶がないとしても、その主張は受け入れられないことがほとんどです。

以上のように、酔っ払ってスリを働いた場合であっても、原則免責はされないと考えるべきでしょう。

2.酔っぱらった状態でのスリの逮捕後

(1) 窃盗罪のほとんどは微罪処分

酔っ払って万引き等の窃盗罪を犯してしまった場合、ほとんどのケースでは問い詰めると意識があります。気が大きくなって犯行を行ってしまったというケースです。

この場合は、窃盗に関する犯行事実を認めているため、初犯であり、反省の意思もある場合はすぐに釈放されることも多いでしょう。

軽微な事案については、検察には送致されず、警察で処分を完結させることがあります。これを微罪処分といいますが、スーパーでの万引きをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。

スーパーでの万引きをしてしまった場合、初めてであれば警察での注意で止まることも多くなっています。もちろん、すぐに商品の対価を支払うことが前提です。

もっとも、犯行の態様等から微罪処分で済まされないケースもあります。

微細処分にするための要件としては、窃盗金額が2万円以下であること、初犯であること、犯行態様が悪質でないことが挙げられます。

このように、窃盗罪は、ほとんどのケースでは微罪処分で済まされることが多いでしょう。

もっとも、犯行を重く捉えたケースでは、微罪処分では済まされない場合もあります。

(2) 微罪処分にならない場合

逮捕、勾留、起訴の可能性も

では、微罪処分とならなかった場合はどうなるのでしょうか。

窃盗に関する事実を否認している場合やスリという犯行態様を重く捉えられた場合、あるいは初犯ではなかった場合には、検察に送致されることになります。

逮捕から48時間以内に検察に送致され、その後24時間以内に勾留請求を行うかどうかが判断されます。

勾留請求が行われた場合には、最大20日間ほど身体拘束が続く場合もあります。

勾留請求が行われない場合は、逮捕から2-3日程度で家に帰ることができますが、勾留が決定した場合には長く勾留されることになるため、社会生活にも影響が出ます。

会社を休まなければいけなくなる、逮捕がバレて生活しづらくなる、という可能性もあります。

逮捕後、勾留期間中は基本的に警察による取り調べを受けることになります。

勾留期限が終わる頃、検察は起訴をするかどうかの判断を行い、不起訴となればそこで事件は終了です。起訴となれば、裁判が約1ヶ月後に開始されます。

起訴するかどうかは検察の判断次第です。起訴された場合は、ほとんどのケースで有罪となります。

このように、微罪処分とならなかった場合は、逮捕、勾留、起訴の可能性も十分にあります。

(3) スリと他の窃盗類型

実は、スリは窃盗罪の中でも犯行類型として重く捉えられがちな犯罪です。

窃盗罪の場合、先にお話しした通り、ほとんどは微罪処分で済まされることが多くなっています。

もちろん、常習であった場合や、犯行が明らかであるのに事実を認めず反省の色もない場合は例外です。

この点、スリの場合、被害者が犯行に気づかないケースが多く現行犯逮捕ができるのはほんの一部と考えられています。

犯人が他にも犯行を行っている可能性があるため、微罪処分ではなく、しっかりと捜査を行い他にも余罪がないかチェックされることが通常です。

そのため、窃盗罪の中でもスリについては、重い処分が行われる可能性が高い犯罪となっています。

スリの場合は、初犯であっても微罪処分とならず、また起訴が壊れる可能性も高い犯罪行為となっているのです。

必ず重い判断が下されるとは限りませんが、窃盗罪の中の類型でいうと比較的重い判断が下されることが多いということです。

このように、スリは他の窃盗罪よりも起訴を受けやすく、重い犯罪として捉えられる傾向にあります。

そのため、早期釈放や不起訴を勝ち取るためには、適切な弁護活動が必要です。

3.スリ行為の刑事弁護

スリ行為の刑事弁護

次に、酔っぱらった状態での電車内でのスリ行為について、量刑相場や民事の傾向、刑事弁護の方法をお伝えします。

(1) 窃盗罪の量刑相場

では、窃盗罪の量刑はどの程度になることが多いのでしょうか。

最初にご説明した通り、窃盗罪は「十年以下の懲役又は50万円以下の罰金」がかされる可能性があります。

もっとも、実際上は、懲役の場合で3年以下のケースが多く、罰金刑の場合でも20-30万円以下の罰金が多くなっています。

もちろん、これは事件の内容にもよるため、これ以上の重さになること十分に考えられます。したがって一応の目安程度に考えておきましょう。

また、懲役刑と罰金刑の比率ですが、有罪となった場合には9割近くが懲役刑、残り1割程度が罰金刑となっています。

窃盗罪の場合、犯行の悪質性だけでなく、被害金額の大きさが量刑に影響します。

数千円、数万円であれば罰金で済む可能性も高いですが、数十万、数百万といった場合には懲役刑になる確率もあがるということです。

また、他の犯罪と同様に、初犯よりも再犯の方が刑罰は重くなります。

スリ行為の場合、何度も犯行を繰り返しているケースでは、常習性が高いと判断され刑罰も重くなってしまうでしょう。

このように、窃盗罪の場合は、3年以下の懲役、または20-30万円程度の罰金が多くなっています。

窃盗罪の場合は被害金額も量刑に大きく影響することも覚えておきましょう。

(2) 民事の損害賠償請求。被害者への慰謝料はどうなるの?

では、被害者に民事の損害賠償を請求された場合、どのくらいの慰謝料が要求されるのでしょうか。

また、他の窃盗罪とスリの場合とで慰謝料額は変わるのでしょうか。

スリなどの窃盗罪を犯した場合、被害者から損害賠償を請求されることがあります。

これは、窃盗罪という刑事罰とは別に民事における問題です。罰金が科されても、これとは別に被害者から損害賠償請求を受ける可能性があるのです。

窃盗罪に関する損害賠償請求は、主に精神的苦痛に対する慰謝料です。慰謝料の額は損害の大きさに比例します。

とはいっても、精神的苦痛に対する損害を金額で測るのは難しいです。実際、慰謝料額は事件によって異なるため、一概にいくらということはできません。

しかし、おおよその目安としては数万円〜数十万程度が多くなっています。

スリの犯行の場合、相手に怪我をさせた場合や精神不安定となり、病院に通院しなければいけなくなった場合には、治療費も支払わなければいけません。

この場合は、治療費分だけ損害賠償額が高くなります。

また、スリの場合に他の窃盗よりも慰謝料額が高くなる・低くなる等はいえません。

犯行態様によって被害者の損害が大きいと判断できる場合には、損害賠償額も大きくなることはあります。

このように、慰謝料を含む損害賠償額は多くて数十万円程度でしょう。

しかし、犯行内容にもよるため、一概にいくらと判断することは難しいといえます。

(3) 早期釈放・不起訴にするためには?

弁護士による示談で解決

では、早期釈放や不起訴にしてもらうためには、どうすればよいのでしょうか。

酔っ払って電車内でスリをしてしまった場合、酩酊状態である場合はその場で現行犯逮捕となるでしょう。

他方、家に帰ってから犯行に気づいた場合は、後で後日逮捕となるケースがあります。

逮捕が行われた後は、できる限り早く被害者と示談をまとめることが大切です。

被害者に被害金額を弁償・私物を返納し、誠意ある謝罪と示談金を受け取ってもらうことで、早期釈放・不起訴処分を目指すことになります。

示談は、起訴・不起訴を検察官が判断する際の考慮すべき材料となります。示談が成立している場合と、してない場合とでは起訴の確率は大きく変わってきます。

仮に起訴が行われると、有罪になる確率もかなり高いため、軽い罰金刑となった場合でも前科が残ります。

前科を残さないためにも、早期に被害者と示談をすることが大切なのです。

示談は、当事者同士でもできると考えるかもしれません。

確かに、不可能ではありませんが、被害者は加害者と直接話したくはないものです。また、加害者の家族とも面会を拒否するケースが多いでしょう。

この点、弁護士であれば、「話をしてもいい」と言ってもらいやすくなります。第三者である弁護士が代理人となることで、示談成立もスムーズに進みます。

このように、早期釈放や不起訴を目指すなら、示談が先決です。

トラブルを避けるためにも、当事者同士だけで解決しようとせず、法律のプロである弁護士に任せることをおすすめします。

4.スリをしてしまったら弁護士に相談を

刑事事件とは無関係のサラリーマンでも、たった一夜の飲酒がきっかけで事件を起こしてしまう可能性はあります。

酔った勢いで記憶のないまま、スリをしてしまった方も実際にいらっしゃるのです。みなさんも、週末の飲み会では酔いすぎないように気をつけてください。

仮に酔っ払って事件を起こしてしまうと、目が覚めたら大変なことになっています。自分でもどうしたらいいかわからないと困惑してしまうこともあるでしょう。

もしそんな事態に陥ってしまった、あるいは家族が巻き込まれた場合には、弁護士にご相談ください。

お話しした通り、スリは窃盗罪の中でも重く受け止められがちな犯罪です。もっとも、被害者と早期に示談をすることで、起訴を回避することもできます。

当事者同士で話し合うよりも、間にプロを挟んで交渉を進め行くほうが示談もスムーズに進みます。

突然、事件に巻き込まれた場合は、泉総合法律事務所にご相談ください。

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