児童ポルノ禁止法違反が発覚する経緯と逮捕後の流れ
最近、児童ポルノ禁止法違反で逮捕される事例が多くなっています。
この記事では、児童ポルノ法違反が発覚する経緯、その後の流れ等について解説します。
なお、児童ポルノ禁止法の内容については、以下のコラムをご覧ください。
[参考記事]
児童ポルノ禁止法とは?児童ポルノと児童買春の規制
1.児童ポルノ禁止法違反が発覚する経緯
まずは、児童ポルノの所持や製造、児童買春が発覚するパターンを見ていきましょう。
(1) 児童ポルノに関する罪が発覚する経緯
児童ポルノを所持している場合、そういった画像をネット掲示板や各種サイト、SNSなどに掲示してしまうケースがあります。そうすると、警察によるサイバーパトロールで発見され、摘発される可能性があります。
近年、ネットを使った犯罪が増加していることもあり、警察は随時ネット上を見回って「サイバーパトロール」という捜査をしていますから、注意が必要です。
また、児童ポルノを撮影して「製造」した場合には、対象となった児童が被害申告したことで発覚する可能性があります。
かつて恋人関係にあった児童の性的な画像を撮影して所持していた場合でも、児童と恋人関係を解消した後、児童が親や彼氏に事実を告げることで、事件が発覚するケースも見られます。
児童とポルノ画像のやり取りをしているところを周囲に見られて不審に思われたり、親が児童の行動を不審に思ってスマホなどを見ることにより、発覚したりするケースもあります。
このように、児童ポルノに関しては、さまざまなきっかけで「バレる」可能性があり、「単に所持しているだけなら大丈夫」ということはありません。
(2) 児童買春罪が発覚する経緯
児童買春罪については、児童ポルノ所持罪などの罪よりも、より発覚しやすいです。
援助交際をしている児童は、何度も繰り返していることが多いものです。そうすると、いつかは親にバレます。
すると、過去に児童が会った男性が、スマホなどの記録によって洗いざらい明らかにされて捜査対象となり、一気に摘発されるのです。
また、児童が援助交際に嫌気がさして、自ら親や彼氏に事実を告げてしまうことがあります。
すると、やはり一気に警察の捜査が入り、過去の児童買春者をつまびらかにして、一斉摘発されます。
援助交際の際にわいせつな写真を撮っていてパソコンなどに保存している場合などには、児童買春罪と児童ポルノ製造罪が両方成立してしまうので、罪が重くなります。
以上のように、児童ポルノの製造・所持をしていたり、児童買春(援助交際)していたりすると、行為時から相当の日数が経過した後であっても、いきなり警察が自宅にやってきて任意同行を求められたり逮捕されたりすることもあり、決して安心することはできません。
2.児童ポルノ禁止法違反で逮捕された後の流れ
もしも児童ポルノ禁止法違反が発覚して逮捕されてしまったら、その後どういった流れになるのでしょうか?
(1) 送検と勾留
逮捕中は、弁護士以外は家族であっても面会できません。
逮捕後48時間以内に、被疑者の身柄が検察官のもとに送られます。このことを「送検」と言います。
そして、検察官が「勾留」の必要性を判断します。児童ポルノ禁止法違反では多くのケースで勾留が必要と判断されて、勾留請求されます。
裁判所が勾留決定をすると、被疑者の身柄は引き続いて警察の留置所に拘束され続けることになります。
送検から勾留請求までの期間は24時間以内で、かつ逮捕から72時間以内です。逮捕後勾留決定までの期間は概ね3日となります。
勾留に切り替わると、原則として、家族も面会が認められるようになります。
弁護士であれば、逮捕直後から被疑者と接見して、身柄の解放を含め具体的な弁護方針を立てることができます。
(2) 取り調べ
逮捕・勾留されると、被疑者は警察の留置所内で、警察による取り調べを受け続けることになります。
取り調べでは、厳しく犯罪内容を追及されるので、精神的に参ってしまう被疑者の方も多いです。圧力に耐えかねて真実と異なる犯行を認めてしまい不利益な調書を取られるケースも多々あります。
いったん調書化されてしまうと、後の刑事裁判で真実を主張しても認めてもらうことは著しく難しくなります。
弁護人がついていれば、被疑者に適切なアドバイスをすることができるので、被疑者が取り調べに耐える力と知識を得ることができます。
勾留期間は原則として10日ですが、10日では捜査が終了しない場合、さらに10日間、勾留延長することができますので、勾留期間は最大20日間です。
(3) 起訴・不起訴が決定される
勾留が満期になったら、検察官は、被疑者を「起訴」するか「不起訴」にするかを決定します。
起訴とは、被疑者を刑事裁判にかけるよう裁判所に求める行為です。起訴されると、被疑者は「被告人」となり、裁判所で裁かれることになります。
不起訴とは、刑事裁判にはせず、不問に付すことです。
不起訴になると、被疑者は身柄を解放されて、基本的にはそれ以上児童ポルノ禁止法違反を追及されることはありません。
(4) 刑事裁判になる
起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
軽微な犯罪の場合には、簡易裁判所における略式裁判となり、罰金刑が科されます。
[参考記事]
略式起訴・略式裁判で知っておくべきこと|不起訴との違い
重大な犯罪の場合や前科がある場合などには、裁判所に起訴されて、公開法廷で審理が開かれます。
通常の刑事裁判になると、勾留されている被告人は裁判が行われるたびに留置施設から裁判所に連れて行かれて審理を受けることになります。
ただ、起訴がされたら保釈が認められる可能性が出て来るので、身柄拘束を受けている場合には、早期に保釈申請を弁護士に依頼するのが良いでしょう。
審理は、月1回くらいのペースで開廷されます。特に争いのない事件であれば、1回か2回程度で審理が終わり判決が言い渡されますが、無罪を争う場合などには非常に長い期間がかかるケースもあります。
3.逮捕された場合の対処方法
もしも自分や家族が児童ポルノ禁止法違反で逮捕されてしまったら、その後どのように対応したら良いのでしょうか?
(1) 不起訴を目指す
逮捕されたら、まずは「不起訴」を目指しましょう。不起訴になったら、刑事裁判にならないので、有罪判決を受けることもなく、前科がつくこともありません。
また、それまで身柄拘束されていたケースであっても、不起訴になったら身柄を解放されます。
不起訴になるためには、いくつか重要な要素がありますので、以下で説明します。
(2) 被害者と示談する
まず、不起訴獲得のためにもっとも言って良いほど重要なのが、被害者との示談交渉です。
一般的に刑事事件では、被害者と示談が成立していると、被疑者被告人にとって良い情状と評価されます。示談によって、被害が金銭的に回復し、被害者の処罰感情が消滅・低減したことが明らかになるからです。
しかし、児童ポルノ禁止法は、児童の性的自由を保護するにとどまらず、児童を性欲の対象として捉える風潮を是正し、性的搾取・性的虐待を防止することをも目的としています。被害者の個人的法益だけでなく、社会的な法益を守る法律であり、いわば、「社会も被害者である」と理解されているのです。
この観点からは、児童ポルノ禁止法違反について、被害児童との示談が成立しても、被疑者・被告人に有利に働く効果は限定的と言わざるを得ず、大きな期待は禁物です。
ただ、だからといって、被害児童との示談を成立させる努力すらしないというのは絶対におすすめできません。
示談に向けて真摯に努力をしたことを示すことができなければ、検察官や裁判官に、「本当に反省しているのか?」「当然になすべき後始末もしていないのか?」と、むしろ不利益、マイナスに評価されてしまいます。
したがって、児童ポルノ禁止法違反であっても、被害児童との示談交渉は必ず行うべきです。
ただ、児童ポルノ禁止法違反で示談を成功させることは簡単なことではありません。児童ポルノ禁止法違反の被害者本人は児童ですが、示談の相手はその保護者である親になるためです。
通常、自分の子どもの児童ポルノを撮影・所持していた犯人や援助交際の相手に対しては激怒しているので、厳罰を科してほしいと親は希望します。
そこで、ご本人やご家族などが示談交渉をしようとしても、話し合いにすら応じてもらえないことが多いです。
弁護士であれば、被疑者の反省や状況を伝えて、冷静に示談の話を進めることができます。
また、示談金を決めるとき、ご本人が交渉をすると、相手から高額な金額を提示されたときに減額を申し出ることもできず交渉が頓挫することが多いのですが(犯人である本人から減額を申し出られると被害者側が激怒するのは当たり前です)、弁護士であれば、被疑者・被告人の味方でありつつも、法律と裁判の専門家としての知見から、過去の示談事案や裁判例の慰謝料額を示すなどして妥当な金額の提示が可能となりますから、より現実的な金額で示談に持ち込める可能性が高くなります。
示談を成立させるには、必ず弁護士に刑事弁護を依頼すべきと言えます。
[参考記事]
刑事事件の示談の意義・効果、流れ、タイミング、費用などを解説
(3) 反省の態度を示す
不起訴処分を勝ち取るためには、被疑者がしっかり反省していることが一番重要です。
被害者に対して謝罪文を送ったり、自分の過去の行状を見つめ直す反省文を書いたりして、検察官に反省の気持ちを示しましょう。
(4) 贖罪寄付
被害者の保護者の怒りが強く、示談ができない場合などには、贖罪寄付をして反省の気持ちを示す方法もあります。
弁護人に相談していただけましたら、手続きしますので、示談の進み具合に応じて検討しましょう。
[参考記事]
贖罪寄付・供託により本当に情状が考慮されるのか?
(5) 周囲による監督
被疑者が再犯に及ばないためには、周囲の監督も重要です。被疑者に配偶者や両親がいて、周囲が監督することを期待できるなら、そういったことを検察官にアピールすべきです。
定職に就いており、勤務先が安定していることも良い情状となります。
家族や雇い主に嘆願書を書いてもらって検察官に提出するなどするのも一定限度効果がありますが、こうした手続きも、刑事弁護人が行います。
4.まとめ
ここまで述べた対処方法は、自分一人では効果的に行うことはできません。刑事事件の経験豊富な弁護士があってこそのものです。児童ポルノ禁止法違反で逮捕された方は、すぐに泉総合法律事務所にご相談ください。