刑事弁護 [公開日]2018年2月28日[更新日]2023年11月15日

検察の「取り調べ」と「供述調書」とは?警察の取り調べとの違い・注意点

刑事事件では、ほとんどの事件で警察の捜査が先行して証拠物が収集され、参考人・被疑者の取り調べによって供述調書が作成されます。
検察官は、警察から送られた証拠物と供述調書をチェックし、有罪を証明するために足りない証拠物の捜査を警察に求めると共に、自らも取り調べを実施して供述調書を作成します。

こうした警察・検察の捜査によって集められた証拠資料に基づき、検察官が被疑者を起訴するか否か(刑事裁判にかけるか否か)を決します。

今回は、刑事事件で逮捕されてしまった方やその家族に向けて、警察・検察の取り調べの具体的な内容の違いと、取り調べの際に気をつけるべきこと、弁護士が行ってくれる取り調べに関する弁護活動を解説します。

1.警察と検察の取り調べの違い

警察官も検察官も捜査権限をもっています。事件が発生し、その被疑者・被害者・目撃者などの参考人となった者は、警察官や検察官から取り調べを受けることになります。
当事者の取り調べをすることは、警察・検察の重要な捜査活動と言って良いでしょう。

被疑者は、逮捕により身柄を拘束されている身柄事件ならば、留置場から連れ出され、個室で手錠など外された上で取り調べを受けます。
(身柄を拘束されていない在宅事件の場合には、警察署に呼び出しがなされて、警察官によって取り調べが行われます。)

なお、身柄事件の場合、警察官は被疑者の身柄を拘束してから48時間以内に、被疑者の身柄を検察官に送致しなければなりません。
その後、被疑者の身柄を受け取った検察官も取り調べを行います。

検察による取り調べは、警察による取り調べ内容のチェックをする機能もありますが、それにとどまるものではありません。
警察官と異なって、検察官は法律家です。事件を裁判にかけて有罪判決を得ることができるか否かという厳密な法律的観点から捜査を実施するのです。

したがって、警察が取り調べ済みで既に供述調書が作成されている内容であっても、検察官は独自に取り調べた上で、自らも供述調書を作成します。

2.検察が作成する供述調書について

取り調べの結果は「供述調書」に記載されます。
供述調書というのは、簡単に言えば取り調べで聴取したことを書き記したものです。

(1) 警察と検察の供述調書の違い

警察官の取り調べの場合、通常は、最初の1回目の聴取では話を聞きメモをとることが主となります。
2回目以降になると、1回目のメモの内容をまとめて確認し、さらに聴取していなかった事項などを追加して聴き取り、供述調書を作成することになります。

検察官の取り調べでは、聴取のたびに調書を作成することが通常です。

警察官作成の供述調書(警察官調書)と検察官作成の供述調書(検察官調書)の違いは、公判(裁判)の場で明らかになります。

被告人の供述内容を録取した供述調書であれば、警察官調書も検察官調書も扱いに差はありません(刑訴法322条1項)。
これに対し、被害者・参考人の供述内容を録取した供述調書は、警察官調書も検察官調書も、弁護人がこれを証拠とすることに同意しない場合、原則として証拠として法廷に提出することはできません(刑訴法321条1項柱書、326条1項)。

もっとも、一定の条件を満たせば警察官調書も検察官調書も証拠とすることが許されるのですが、その例外を許す条件が、検察官調書よりも警察官調書の方がはるかに厳しいのです(刑訴法322条1項2号及び3号)。

このため、弁護人の同意がある場合を除いて、警察官調書が例外条件を満たして証拠となる場合はほとんどないのに対して、弁護人の同意がない検察官調書が証拠となる場合は珍しくありません。

これは公益の代表者(検察庁法4条)である検察官の作成した調書の方が、警察官調書よりも信用性が高いと評価されていることを示します。

(2) 供述調書の種類

1つの事件で供述調書が1つだけということはありません。

通常、供述調書は「身上調書」という、どこで生まれて、学校や仕事関係、家庭関係について記載した履歴書のような供述調書と、それ以外の「事件に関する供述調書」の2種類に分けることができます。

どちらも何通ずつと決まっているわけではありません。身上調書でも聞き漏らし・書き漏らしがあれば、追加して複数の調書が作成されます。身上調書以外の調書は、必要に応じて何通でも作成されます。

[参考記事]

弁解録取書と身上経歴供述調書について

3.検察の取り調べに関する注意点

(1) 供述調書の内容をよくチェックする

供述調書は、取り調べ対象者が話した内容を逐一記録するものではなく、話を聞いた警察官・検察官が、聞いた内容を取捨選択したうえで作文したものです。
したがって、被疑者の有罪を立証し不利な情状を明らかにする事情だけが記載されるなど、被疑者に有利な事情が記載されていないことが多いものです。

そのような場合は、有利な事情も記載してくれるよう主張し、聞き入れてくれないときには調書への署名・指印を拒否することが有効です。

また、調書に記載してもらえない有利な事情は、できるだけ早い段階での接見時に弁護士に伝えておくことが重要です。弁護士がその内容を聴取して書面化しておくことで、後の公判で有利な証拠として用いることができる可能性があります。

(2) 黙秘権の行使について

被疑者には黙秘権があるので、取り調べにおいて一切の供述を拒否することが可能です。

また、最初は供述調書の作成に協力するつもりで正直に事情聴取に応じていたものの後で気が変わったりした場合にも、署名、指印を拒否することができます。
供述者の署名・指印のない調書は、本当に供述者の話した内容どおりに記載されているか否かが担保されないので、原則として裁判の証拠とすることはできません。

4.弁護士の取り調べに関する弁護活動

それでは、取り調べや供述調書について、弁護士はどのような弁護活動を行ってくれるのでしょうか。

(1) 取り調べに向けてアドバイスをくれる

取り調べを受ける方は、「何を聞かれるのか」「どのように対応すればいいのか」不安になると思います。

弁護士は、取り調べに際して何を話せば良いか・話さない方が良いか、あるいは黙秘するべき場合についてなど、本人の利益になるよう多くのアドバイスをくれます。

より具体的な取り調べの対応策については以下のコラムを参照ください

[参考記事]

警察による取り調べの対応策を弁護士がアドバイス

(2) 違法な取り調べの阻止

一部で「問題のある(不正な)取り調べ」というものが、現に行われることがあります。
問題のある違法な取り調べというのは、例えば、自白を強要するために声を荒げる、机を叩く、侮辱する、暴言を吐くといった行為を指します。

今では、検察官の取り調べに問題がある例は報告されなくなりましたが、警察官の取り調べの中には、一部看過できない取り調べが未だに存在します。
このような問題ある取り調べをさせないようにするために、警察から取り調べのための呼び出しを受けた場合には、その時点で弁護士に連絡することをお勧めします。

取り調べ中であっても、身柄拘束を受けていない限り取り調べは任意ですから、取り調べを中断して弁護人との面会を希望することは自由です。

身柄拘束中であっても、弁護人に接見に来るよう連絡をしてくれと申し出ることは可能ですし、これによって弁護人が駆けつければ、取り調べを中断して、弁護士との面会を許さなくてはならないことが原則です。

面会で不当な取り調べを知った弁護人は、すぐさま検察庁及び警察署長に対して抗議を行い、そのような問題のある取り調べをやめさせるよう求めます。

なお、このような取り調べ状況下においてなされた供述は、証拠能力が否定されることもあります。

(3) 勾留阻止・釈放

逮捕されて検察官に送致された後、検察官が裁判所に勾留請求をすると、裁判官が勾留するかどうかを判断するために被疑者に質問を行います。これを「勾留質問」と言います。

ただ、勾留質問は機械的な流れ作業で行われており、被疑者の言い分をじっくり聴く場とはなっていません。裁判官は検察官の勾留請求書に記載された被疑事実があるか否かをイエスかノーかで答えさせ、弁解があってもごく短時間の聴取にとどめ、詳しい調書を作成することもないのが現実です。

そこで勾留決定を避けるためには、被疑者に有利な事情などを、確実に裁判官に伝えることが必要です。

また、そもそも勾留請求自体をさせないためには、弁護士が検察官との面談や書面の提出で、有利な事情を検察官に伝える必要があります。

弁護士は被疑者に接見して事情を詳しく聞き、警察官や検察官が供述調書に記載してくれない、あるいは被疑者が気づかない有利な事情を聞き取って書面を作成し、検察官やその勾留請求を受けた裁判官に提出し、勾留請求をしないように交渉したり、勾留決定をしないように折衝したりできます

それでも勾留決定を裁判官が下した場合には「準抗告」という裁判を提起して、勾留決定を取消し、釈放を求める活動をします。

[参考記事]

勾留請求・準抗告とは?釈放を目指すなら泉総合法律事務所へ!

5.取り調べの不安は泉総合法律事務所に相談を

取り調べへの対応の仕方は、弁護人とよく相談しましょう。
また、供述調書への署名は、調書の作成者が警察官か検察官かの違いに関係なく、内容を十分に確認したうえで慎重にしましょう。供述調書の内容がその後の処分内容に大きな影響を与えることとなります。

もし取り調べの方法・内容や、供述調書の内容に不安があるという方は、一度、泉総合法律事務所にご相談ください。
経験豊富な弁護士が全力でサポートいたします。

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