痴漢 [公開日]2020年2月28日[更新日]2020年2月28日

痴漢をして裁判になるケースと裁判までの流れ

ご存知の通り、痴漢は犯罪です。痴漢を犯した人は刑罰に処される可能性があります。もっとも、痴漢を犯しても裁判にならず、刑罰に処されない場合もあります。

これは後述するように、日本の刑事司法が、検察官が起訴する判断をした場合に限り裁判が行われるといった仕組みになっているからです。

それでは、痴漢をして裁判になる、つまり、検察官が起訴の判断をするのはどんな場合、どんな理由からなのでしょうか?

1.痴漢を処罰する法律

まずは、痴漢を処罰する法律とその刑罰について説明します。

痴漢を処罰する法律は⑴迷惑防止条例、⑵刑法176条の強制わいせつ罪です。

(1) 迷惑防止条例

迷惑防止条例は各都道府県が定めています。ここでは、東京都迷惑防止条例を例に出して説明します。

第5条1項「何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない」
第5条1項1号「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。」

例えば、満員の電車やバスで被害者の胸や臀部に触れる行為を指します。

迷惑防止条例違反は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。また、これを常習として行うと1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。

(2) 強制わいせつ罪

刑法176条「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。」

強制わいせつ罪は①13歳以上の者に対して暴行・脅迫を用いて、わいせつな行為をした者、又は②13歳未満の者に対してわいせつな行為をした者を処罰するものです。

「わいせつな行為」とは、被害者に性的な羞恥心を覚えさせる行為です。言うまでもなく、迷惑防止条例違反の痴漢行為もこれに含まれます。

さて、13歳未満の者に対しては、暴行・脅迫を用いずにわいせつな行為をした場合でも強制わいせつ罪が成立しますが、被害者が13歳以上の場合、暴行・脅迫を手段としたことが要求されるので、身体に触っただけの痴漢行為では強制わいせつ罪は成立しないのではないかとも思われそうです。

しかし、そうではありません。電車内で被害者の胸や臀部を触れる行為は、それ自体が「わいせつな行為」であると同時に、有形力の行使として「暴行」に該当すると評価されており、やはり強制わいせつ罪が成立するのです。

したがって、迷惑防止条例違反の痴漢行為と強制わいせつ罪で処罰される痴漢行為は重なり合うものであり、法律上は、ひとつの痴漢行為で両罪が成立する可能性があるのです。

ただし、法律上は可能であっても、実務上は、ひとつの痴漢行為をふたつの犯罪で立件することまではしません。衣服の上から身体を触った場合は迷惑防止条例違反、下着の中に手を入れて直接に身体に触れた場合は強制わいせつ罪とする扱いが通常です。

もっとも、衣服の上から触っただけでも、長時間に及ぶ犯行や、ひとりの被害者に対して異なる機会に執拗に痴漢行為を繰り返したような悪質性の高いケースは、強制わいせつ罪に問われる場合もあります。

上記の通り、強制わいせつ罪を犯した者の刑罰は、6月以上10年以下の懲役です。

2.痴漢をして裁判になるのはどんな場合?

裁判になるのは、検察官が被疑者を起訴する決定をした場合です。もっとも、検察官は発生した事件全てを起訴しなければならないわけではありません。

刑事訴訟法248条「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」

検察官が起訴する理由としては、例えば以下のものが挙げられます。

  1. 行為態様が悪質・・・被害者に何度も執拗に痴漢行為を繰り返した場合等
  2. 前科・前歴がある・・・以前に痴漢で逮捕、もしくは有罪判決を受けている場合
  3. 被害者が未成年・・・一般に、被害者が未成年だと悪質な犯罪と判断されます
  4. 被害者の処罰感情が強い・・・後述します
  5. 被疑者に反省の色が見られない
  6. 示談が成立していない

起訴されると裁判となります。迷惑防止条例違反・強制わいせつ罪は共に懲役刑が法定刑にあるため(前者は1年以下、後者は10年以下)、場合によっては懲役○年の実刑判決(執行猶予がつかない有罪判決)がだされることもあります。

懲役刑の判決が出されると、刑務所に入ることになります。

【略式起訴】
裁判と聞くと、公開の法廷で、裁判官や検察官の前で様々な証言をする姿を思い浮かべると思います。しかし、起訴された事件全てがそのような裁判に付されるわけではありません。起訴には正式起訴と略式起訴があり、公開の法廷で裁判が行われるのは正式起訴のみです。略式起訴は、公開の裁判を開かず書類審査のみで被告人の刑罰を決定します。
もっとも、略式起訴は100万円以下の罰金又は科料にあたる事件にしか行われません。すなわち、迷惑防止条例違反の場合は略式起訴となる可能性はあります(実際に略式起訴となる場合は多いです)が、懲役刑のみが法定刑の強制わいせつ罪において略式起訴となることはありません。

3.痴漢で逮捕〜裁判までの流れ

痴漢を犯して逮捕されると、すぐに裁判となるわけではありません。

迷惑防止条例違反、あるいは強制わいせつ罪で逮捕されると、被疑者として警察や検察の取り調べを受けることになります。

(1) 逮捕~勾留請求

痴漢で現行犯逮捕、または後日に通常逮捕されると、被疑者は警察署に連行され、そこで犯行状況、被疑者の経歴等についての取り調べを受けることになります。ここで被疑者が行った供述は、供述調書に記載されます(これは後の裁判で重要な証拠となります)。

警察は、被疑者の身柄を証拠と共に検察に送る(送検)か、あるいは釈放するかの手続をします。この手続は被疑者を逮捕してから48時間以内に行わなければなりません。釈放される場合として、逮捕はしたが犯罪の嫌疑がなかった場合や、微罪処分(検察官が前もって指定した事件で、送検しないもの)があります。

送検された場合、被疑者の身柄は検察官の元へ移されます。そこで、検察官から再度取り調べを受けることになります。

そして、検察官は被疑者の勾留(長期の身体拘束)を請求するか否かを判断します。

勾留の請求は被疑者を受け取ってから24時間以内かつ逮捕から72時間以内に行わなければなりません。勾留請求をしない場合、被疑者は釈放されます。

(2) 勾留請求~裁判

勾留請求は、裁判官に対して行います。裁判官は被疑者に犯罪の嫌疑があるか、逃亡の恐れがあるか、罪証隠滅の恐れがあるか等を審査し、被疑者の勾留を認めるか否かを決定します。

これが認められると、被疑者は勾留(被疑者勾留)されます。他方、裁判官が被疑者の勾留を認めなかった場合は、被疑者は釈放されます。

勾留される期間は勾留請求の時から10日間です。もっとも、更に最大で10日の勾留期間を延長されることもあります。なお、勾留期間中は、家族等との面会が原則可能です(逮捕期間中は不可)。

検察官は、捜査で得た様々な証拠から、被疑者を起訴するか否かを判断します。

検察官が不起訴の判断をした場合、被疑者は釈放されます。
他方、起訴の判断をした場合、被疑者は被告人という名称に代わります。そして、被疑者勾留が被告人勾留(更に長期の勾留)に変わることになります。

起訴後の被告人は保釈(一定の金銭を納めることで、条件付きで身体拘束から解放される制度)を申請して裁判所に認められれば、釈放してもらうことができます。

痴漢事件の場合、裁判は起訴から1か月後くらいに第一回が開廷されることが多いようです。

4.痴漢で裁判となるのを防ぐには

先述のように、裁判となるのは検察官が起訴の判断をした場合です。

検察官は、様々な事情を踏まえて、起訴するか否かを決定しますが、痴漢事件においては被害者の処罰感情は重要なものです。

刑事手続を進めることで、被害者に捜査・公判への協力(事情聴取、実況見分への立ち会い、法廷での証言など)を求める必要が生じ、性犯罪においては特に被害者に大きな負担がかかる危険があるため、できる限り、その意向に配慮するべきとされているからです。

(1) 裁判となるのを防ぐために被害者と示談を

示談とは、加害者と被害者による、犯罪事実を許すとの合意を言います。

示談の成立は、通常は被害者が犯罪事実を許したことを意味し、処罰感情が失われ、示談金の受領によって被害も回復していると評価できるので、検察官が起訴の判断をする可能性が低くなります。

(2) 被害者と示談をする方法

痴漢で起訴・裁判となるのを防ぐには、示談が重要です。

では、いざ示談をしようとなっても、示談の方法がわからない方が多数だと思います。また、示談の方法は知っていても、弁護士がつかない限り、連絡先もわからない痴漢事件の被害者と交渉を開始することは事実上不可能です。

示談の機会を逃してしまえば、検察官が起訴の判断をしてしまうかもしれません。そのため、示談交渉は法律のプロである弁護士に依頼するべきです。
示談したい

5.まとめ

痴漢は懲役刑になる可能性のある犯罪です。たかが痴漢と甘く見てはいけません。罰金刑で済んだとしても、有罪判決を受けたことに変わりはないので、前科として記録されてしまいます。それを避けるには、示談を成功させて、不起訴処分を勝ち取るしかありません。

痴漢をしてしまった方は、お早めに痴漢の弁護経験豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

痴漢の刑事弁護は泉総合法律事務所まで

痴漢など絶対にしないと思っていても、ふと魔が差して痴漢をしてしまった、ということは誰にでもあり得ることです。迷惑防止条例違反の行為といえども、逮捕・起訴されたりしますし、処分が罰金であっても前科となります。

不起訴などで最終処分を有利に導くためには、刑事弁護の経験豊富な弁護士に弁護依頼をしてください。

泉総合法律事務所は、刑事事件、中でも痴漢の弁護経験につきましては大変豊富であり、勾留阻止・釈放の実績も豊富にあります。

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