人混み・路上での痴漢は何罪?|夏フェス・花火大会・コミケ・ハロウィン
夏フェスや夏祭り、花火大会、ハロウィンなど、多くの人が賑わうイベントでは、痴漢などの犯罪行為も多く確認されています。
痴漢といえば、「電車」や「駅」をイメージすることと思いますが、実際は駅周辺だけで起こっているわけではありません。
場所や雰囲気などいくつかの要因が重なり、通常の状況ではなかなか起こらないような場所で、痴漢行為が行われてしまいます。
普段、絶対に痴漢なんてしないと思っている方も注意が必要です。「状況に流されてつい手を出してしまった」という方は一定数存在するのです。
今回は、大型イベントなどで痴漢行為をしてしまう心理と、痴漢行為をしてしまった場合の処罰・正しい対処法を解説します。
1.路上で発生する痴漢の件数
令和4年度の警視庁の発表では、一年で2,233件の痴漢(迷惑防止条例違反)が報告されています。
そのうち約54%が、駅構内または電車・バスなどの乗物内で発生しています。また、全体の約57%が通勤・登校・退勤・下校の時間帯(午前6時〜午前9時、午後18時〜午後0時)に発生しています。
逆に考えてみると、迷惑防止条例違反の痴漢の半数ほど(約1,115件)は、駅・電車・バス以外の場所で発生しているということです。
また、痴漢行為の態様が卑劣(下着の中に手を入れて直接触る等)な場合は、強制わいせつ罪(現不同意わいせつ罪)に問われる可能性もあります。
令和4年度の強制わいせつの認知件数は4,708件です。強制わいせつの痴漢で一番多い割合は路上での痴漢行為となっています。
このように、痴漢行為は駅・電車にとどまらず、路上や店舗内などの公共の場所でも行われています。
花火大会やフェスなどが多いイベントシーズン、特に夏場〜秋にかけては、さまざまな要因から、駅・電車以外の路上で痴漢行為に及ぶ人が増えるでしょう。
【参考】警視庁:令和4年中の迷惑防止条例等違反(痴漢・盗撮)に係る検挙状況の調査結果
2.路上痴漢の発生場所
では、路上での痴漢行為はどのような場所で行われることが多いのでしょうか。
まず、路上での痴漢行為は、多く人が集まり、密集するような場所で行われることが多いのが実情です。
「混雑しているので誰だかわからないはずだ」「痴漢をしても誤魔化せるだろう」「騒音が激しいので、声を出されても周囲に気づかれないはず」など、人混みの中にいることで、「犯罪行為が見つかりにくくなっているだろう」と考えてしまう傾向があるようです。
しかし、どのような状況であれ、痴漢行為は決して許されるものではありません。
もちろん、夜の路上で痴漢が行われるケースも多くあるのですが、以下では特に「人が多く集まる」イベント会場での痴漢について解説していきます。
(1) ライブイベント・音楽フェス
フジロック・サマソニといったライブイベント・音楽フェスでは、「モッシュ」と呼ばれる現象が起きることがあります。
モッシュとは、ライブ中に熱狂的に盛り上がり人々が前へ前へと押す行為によって、おしくらまんじゅう状態になることです。ライブ会場の前方中央付近は特に注意が必要で、怪我人が発生することもあるようです。
このようなモッシュが起きると、熱気に包まれ騒音も激しくなります。
同時に、人と密着することになるため、通常のライブ会場より痴漢行為などの犯罪が誘発されやすい状況になります。
モッシュ時は、手を挙げたときに胸を触られるケースが多いようです。
また、胸や臀部を触られるなどの痴漢行為だけでなく、下着の中に手を入れられたという被害もあるようです。
(2) 夏祭り・花火大会
夏祭りや花火大会でも痴漢被害が報告されています。
夏祭り・花火大会では、女性は浴衣を着て会場に来る方も多いと思います。そんな浴衣を着ている女性をターゲットに盗撮・痴漢行為などが行われることが多いです。もちろん、浴衣の女性だけではなく、薄着の女性も同様の被害に遭っています。
特に花火大会がある場合、見物場所確保までの道のりは多くの人が行き交い、混雑します。その際、人混みに紛れて痴漢行為が行われるケースがあります。
そして、イベントが開催される場所だけではなく、行き帰りの電車にも注意する必要があります。イベント効果で満員電車になるため、これを利用した電車での痴漢被害が報告されています。
(3) ハロウィン(渋谷や池袋の交差点)
ハロウィンはご存知の通り、近年日本でも人気のある10月31日付近に行われる仮装イベントです。
渋谷・池袋の交差点や路上、クラブなどの各店舗だけでなく、USJなどの大型アミューズメントパークでもハロウィンイベントが開催されています。
痴漢被害が問題になっているのは、池袋や渋谷のハロウィンの仮装パレードです。
仮装をした若者が道路上に大勢集まりますが、中には露出が多い仮装の女性も多く、痴漢などの犯罪行為が多発しています。
交差点で通りすがりに臀部や胸を触るなどの報告の他、痴漢だけでなくナンパや写真撮影を強要されることもあるようです。
(4) コミケ会場
最近では、コミケ(コミックマーケット)会場でも痴漢被害が報告されています。
コミケとは、同人雑誌を書く人・好きな人が自費で本を売買したり、友好を深めたりする場所のことです。例年は夏コミと冬コミの年二回が通常開催されています。
コミケはあくまで本の自費販売が目的の集まりですが、漫画・アニメなどのコスプレした女性の参加も多く、そのようなコスプレイヤーが痴漢・盗撮の被害に遭うケースがあるようです。
人混みで臀部を触る、スカートの中に手を入れるなどの行為の他、列でスカートを履いた女性の後ろにぴったりくっつきつきまとう等の被害がインターネット上で報告されています。
このようなケースでは、「コスプレしている女性は好きでその格好をしているのだから痴漢しても大丈夫」という歪んだ考えも痴漢犯罪の背景にあるようです。
3.路上・イベントでの痴漢の刑罰
では、上記のようなイベント会場や路上での痴漢行為はどのような罪にあたるのでしょうか。
まず、衣服の上から胸や臀部などを触った場合は、迷惑防止条例違反(東京都の場合、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条1項1号など)となります。
これにより、「6月以下懲役又は50万円以下の罰金」が科せられる可能性があります(常習の場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」となります)。
仮に、下着の中まで手を入れ直接触れるなどした場合は、より重い強制わいせつ罪(不同意わいせつ罪)にあたります(刑法176条)。これにより、「6月以上10年以下の懲役」が科せられる可能性があります。
とは言え、「直接触ったかどうか」というのは、2つの犯罪を分ける一応の基準とはなりますが、絶対ではありません。
衣服の上からであったとしても、痴漢行為の態様から、「暴行・脅迫」を用いたと判断され、強制わいせつ罪(不同意わいせつ罪)になる可能性があります。
上記で解説したイベントの事例でいうと、「腕をひっぱりキスした」「抱きついた」というケースでは、抵抗することが困難な状況があるため、強制わいせつ(不同意わいせつ)として立件される可能性があります。
[参考記事]
痴漢の定義と種類|痴漢を事例ごとに徹底解説
4.イベントで路上痴漢をしてしまったら泉総合法律事務所に相談を
ご説明した通り、痴漢行為は駅や電車内だけで起こるものではありません。
フェスや花火大会、ハロウィン、コミケなどのイベント会場でも、被害が多数報告されています。
女性としては、祭り事に出かける際には露出が多い服装は避ける、人混みを避ける、複数人で行動するなどの対策を行い、痴漢被害に遭ったら即時警察へ連絡しましょう。
また、痴漢加害者の中には「まさか自分がするわけがない」と思っている方が、お酒に酔って、あるいはその場の勢いで魔が差して痴漢行為をしてしまった、という例も数多くあります。
そのようなことにならないよう、男性も混雑を避ける、外で飲酒をしないなどの対策が必要です。
仮に痴漢をしてしまった・逮捕されたという方は、弁護士にご相談ください。
罪を認め、被害者に深く謝罪し反省すれば、前科もつかず不起訴となる可能性も十分あります。
どのような様態であれ、痴漢事件でお困りの方は、泉総合法律事務所の無料相談をぜひご利用いただければと思います。