ネット誹謗中傷をしてしまい名誉毀損で訴えられたらどうすればいいか

刑事事件弁護

ネット誹謗中傷をしてしまい名誉毀損で訴えられたらどうすればいいか

ネット上では、気軽に自分の意見を投稿できることから、ついつい度が過ぎたことも言ってしまいがちです。

気軽なノリで余計なことを言ってしまい、名誉毀損で訴えられてしまうなんてことは避けなければいけません。

「悪気はなかった」ケースでも、相手は本当に傷ついてしまうケースもあるのです。

そして、もうすでに名誉毀損で訴えられてしまった、発信者情報開示に係る意見照会書が届いたという方は、現実的な具体策を考えなければいけません。

今回は、ネット投稿に関する名誉毀損で訴えられたときに起きること、対処法、弁護士に相談するメリットなどを解説します。

1.ネットの誹謗中傷投稿で訴えられるケース

ネット上の人権侵害の統計、誹謗中傷をする心理、被害者が訴えるケース

まずは、ネットで誹謗中傷・プライバシー侵害等が起きる仕組みを理解していきましょう。

(1) ネット上の誹謗中傷投稿事件の増加

では、現在、日本ではネット上での人権侵害はどのくらい起きているのでしょうか。

平成29年に内閣府が行った人権擁護に関する調査では、「インターネット上にてどのような人権侵害が起きていると思うか」のアンケートをとりました。

結果としては、「他人を誹謗中傷する情報が掲載されること」が63.9%、「プライバシー侵害に関する情報掲載 」が53.4%、「ラインやツイッターなどによる交流が犯罪を誘発する場になっている」が49.0%となっています。

過半数を超える人が、インターネット上での誹謗中傷投稿等の人権侵害が起きると思うと回答しています。

自分に起きた被害でなくとも、友人やメディアで知った情報により、ネット上で人権侵害が行われていることを認知しているのでしょう。

では、実際のインターネット上の人権侵害事件はどのくらいあるのでしょうか。

同調査報告の人権侵犯事件の推移によると、インターネットによる人権侵犯は、平成24年には671件が確認されていたのに対し、平成28年には1909件が報告されています。平成24年から1年ごとに徐々に事件報告数が増えています。

この結果からは、単純に平成24年時に比べて今の方が、人権侵害自体が多くなっていると考えることもできます。

もっとも、これだけが要因とは考えにくく、被害者の意識が高くなりネット上の人権侵害に関する各問題に対し何らかの措置とるようになった結果とも考えることができます。

つまり、ネット上の発言は年々厳しい目にさらされているのです。

このように、ネット上の誹謗中傷などの人権侵害事件は毎年増えています。「聞いたことがある」という認識だけではなく、実際に事件として報告される数も増えているのです。

(2) なぜ問題投稿をしてしまうのか

では、なぜネットで誹謗中傷などの人権侵害を行ってしまうのでしょうか。

よくある原因としては、以下のようなものが考えられます。

①感情的になってしまう

政治問題などで自分の意見を掲示板やコメント欄、SNSなどに投稿する方もいらっしゃるでしょう。

このとき、現在起きている問題などに憤慨し、感情的になったまま意見を投稿することがあります。

自分のコメントに賛同者が増えると、快感となり同じような過激な投稿を繰り返してしまうようになります。

ネット上では同質性のある人と繋がりやすく、感情的な内容もヒートアップしてしまうことがあります。

②知人の悪口など不満を言ってしまう

インターネット上は、匿名で利用できる空間です。日常で嫌なことがあった場合、周囲には言えないケースでも、ネット上なら自分だと知られないため、気軽に感情をぶつけてしまいがちです。

ネットの世界に入り込んでしまうと、その環境から逃れられず、人の悪口などについても歯止めがきかなくなってしまうこともあります。

エスカレートすると、友人や元恋人などの名前を出して悪口の投稿をしてしまうこともあります。

周囲の人々だけでなく、飲食店の悪い口コミや勤めている会社の悪口など、本来ならうちわで止めるべき内容まで投稿してしまい問題となります。

③嫉妬やコンプレックス

芸能人や著名人、最近ではインフルエンサーなど容姿や何かの能力に長けた人が世の中には存在します。

その存在に対し、自分がもっていないものを相手がもっていると羨ましいという気持ちがうまれます。

しかし、これが募ると相手に対し嫉妬やコンプレックスといった負の感情になってしまうこともあるのです。エスカレートすると、相手を執拗に追い回したり、ストーカー行為をしてしまうこともあります。

これは有名人だけでなく、周囲にいる憧れの人にも起きる可能性があります。

以上が、ネットで誹謗中傷をする心理として考えられる原因です。これらの感情とネットの匿名性があいまって、人権侵害などの過激な行動をとりやすくなります。

面と向かって人に文句を言うよりも、匿名の方が相手の存在を知られずに攻撃できるという特徴も影響しているのかもしれません。

(3) 被害者が訴えるケース

では、どのようなケースで被害者は法的手続き等の対処をとるのでしょうか。

ネット上の問題投稿に対し、何らかの対応をとる被害者が増えているのは事実です。ネット上には誹謗中傷に関する対策法などがあふれているため、対処に対するハードルが下がっているのかもしれません。

しかし、少々の悪口で法的手続きに踏み切る方は少ないのです。よほど「我慢できない」「許せない」感情が募った、あるいは「危険を感じる」といった場合に、法的措置を考えます。

具体的には、以下のようなケースでは、法的措置をとる可能性が高くなります。

  • 過度な誹謗中傷
  • 危害を加える内容
  • 住所などのプライバシー侵害
  • 知人しか知らない秘密の暴露

ネットの誹謗中傷も、一度であれば大目にみることもできるかもしれませんが、何度も書き込まれると被害者は脅威を感じます。周囲でも噂が広まると、実際の生活への影響も考慮しなくてはいけません。

そのため、過度な誹謗中傷がある場合は、法的措置に踏み切るのです。

これは、危害を加える内容やプライバシー侵害の場合も同じです。脅威や身の危険を感じ、警察に報告を行うことを決断します。

自分の秘密を暴露された場合には、「許せない」という感情が起きます。あなたを信用して打ち明けた内容である場合には、当然です。

この場合、怒りから民事の損害賠償を請求するということが考えられます。

このように、被害者は相手のエスカレートした行動に対し、勇気を出して法的措置に踏み込みます。

このような事態になる前に、誹謗中傷投稿を止める、あるいは被害者に謝ることも必要でしょう。

2.ネットで誹謗中傷をすると何が起きるか

次に、ネットで誹謗中傷投稿をした場合に、加害者に起きることを解説します。

(1) 相手に身元が知られてしまう

では、ネットで誹謗中傷などの人権侵害を繰り返すと何が起きるのでしょうか。

まず、被害者としては、「問題投稿の削除」を当該サイトやSNS、掲示板の管理人に請求します。

削除だけで終わる可能性もありますが、被害者が加害者を許せないと考えている場合は、次の段階に入ることになります。

具体的には、サイト管理者にIPアドレスを公開するように請求することになります。

2ちゃんねるなど有名どころの掲示板は、すぐに個人情報を公開することはありませんが、裁判所にて仮処分が行われた場合には、IPアドレスを開示せざるをえなくなります。

IPアドレス公開後は、プロバイダに投稿者の氏名など個人情報公開の仮処分を求める段階を踏んで、身元を突き止めることになります。

掲示板等で、投稿が削除される、掲示板等の投稿サイトがなんらかの措置をとる、といった段階から数ヶ月程度で、身元が被害者にバレてしまうのです。

被害者に知られないはずだった自分の情報はあっという間相手に知れ渡ることになります。

このように、ネット上で誹謗中傷投稿などを行うと、被害者は相手の身元を特定しようという行動にでます。

被害者が弁護士に依頼すると、加害者までたどり着くスピードも早くなります。

(2) 民事の損害賠償請求が行われる

身元が判明した後に、行われる可能性があるのが民事の損害賠償請求です。

加害者に身元を突き止める理由は、①二度と被害者に対し人権侵害行為をさせないこと、②謝罪をしてもらうこと、③誹謗中傷等による精神的苦痛に対し損害賠償を請求することにあります。

文書による謝罪と「二度と行わない」という誓約書を交わすことで許してもらえることもあるでしょう。

しかし、ほとんどの方は弁護士費用や裁判費用を支払って、法的手続きを実施しているため、損害賠償も一緒に請求するのが通常です。

そのため、民事で損害賠償を請求される可能性が高くなります。

誹謗中傷行為やプライバシー侵害行為は、法律上不法行為(民法709条)に該当します。

不法行為を受けた被害者は、加害者に対し精神的苦痛に対する損害賠償請求を行う権利があるのです。

損害賠償請求は、簡易裁判所や地方裁判所にて訴訟を起こされることで始まります。

仮に、誹謗中傷行為等が不法行為であると認定されると、裁判所から損害賠償の支払い命令を受けることになります。

加害者が支払いを行わない場合には、強制執行によって資産や給料などの差し押さえを受ける可能性もあるのです。

誹謗中傷行為による名誉毀損やプライバシー侵害はにおける慰謝料の相場は、数十万円程度が多くなっています。

しかし、相手方の損害が大きい(著名人で社会的イメージの低下が営業利益の低下に繋がる場合など)場合は、数百万単位になることもあります。

(3) 名誉毀損等に基づく刑事告訴の可能性もある

また、刑事告訴を受けてしまう可能性も否定できません。

誹謗中傷行為等をネット上で行った場合は、被害者が警察に告訴することがあります。

具体的な罪名は、投稿内容によって異なります。

①プライバシー侵害や相手の名誉を貶めるような投稿

被害者の個人情報や具体的な事実に関する投稿であり、相手の名誉を貶めるような投稿の場合は名誉毀損罪(刑法230条)が成立する可能性があります。

具体的な事実ではなくとも、「バカ」などの中傷は、侮辱罪(同法231条)に該当します。

名誉毀損罪の場合は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金刑」、侮辱罪の場合は、「拘留または科料」が科せられる可能性があります。

②飲食店や法人のデマや悪意ある投稿

飲食店や特定の企業のデマを流し続けた、悪意を持って誹謗中傷を続けた場合には、被害者である飲食店や企業の営業妨害に当たる可能性があります。

この場合は、偽計または威力業務妨害罪(刑法233条、234条)に該当する可能性があります。

業務妨害罪の場合は、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑」が科せられる可能性があります。

③恋人などの性的画像を投稿

恋人や元恋人などの性的な画像・動画をネット上にアップした場合には、リベンジポルノ法(正しくは、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)(3条1項)で規制を受けます。

相手が未成年である場合には、児童ポルノ禁止法(7条6項)により処罰されます。

また、わいせつ電磁的記録媒体陳列罪(刑法175条1項)が成立する可能背もあります。

リベンジポルノ被害防止法の場合は、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、児童ポルノ禁止法では「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」、わいせつ電磁的記録媒体陳列罪では、「二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科」が科せられる可能性があります。

被害者から警察が告訴を受けると、加害者は任意で事情聴取を受けるか逮捕状による逮捕を受けることになります。悪質な場合は、不起訴処分とならず、起訴が行われます。

起訴が行われると裁判となり、有罪となった場合には、上記の罪が科せられてしまいます。

その後は、懲役刑や罰金刑が待ち受けています。有罪になると前科がついてしまうため、社会復帰をする場合にも困難が伴う可能性があります。

このように、ネット上で人権侵害行為を行うと、刑事告訴を受ける可能性もあります。これは大げさではなく、実際にあることです。

出来心の投稿が大変な事態を招いてしまう可能性もあることを十分に理解しておいてください。

リベンジポルノについて、詳しくは「リベンジポルノ(交際中の画像を悪用)…逮捕されたら弁護士相談」をご覧ください。

3.被害者からの損害賠償請求や刑事告訴への対応

被害者からの損害賠償請求や刑事告訴への対応

次は、名誉毀損等で訴えられてしまった場合や刑事告訴を受けた場合の対処法、弁護士相談のメリット、弁護士費用の相場についてご説明します。

(1) 示談を早期にまとめることが重要

では、被害者から損害賠償請求や刑事告訴を受けた場合には、どうすればよいのでしょうか。

損害賠償請求や刑事告訴を受けた場合には、できるだけ早く被害者と示談をまとめることが大切です。

示談とは、当事者間の特定のトラブルにつき、話し合いで解決する方法です。

示談の話し合いでは、損害賠償の具体的な額や支払い方法について決めていき、それぞれが望む方向に折り合いをつけていくことになります。

示談内容としては、加害者から被害者への謝罪や今後このようなことは行わないことの誓約書、示談成立後は損害賠償や刑事告訴を新たに行わないことなどが明記されます。

ネットにおける誹謗中傷投稿やプライバシー侵害の事件でも、示談は頻繁に行われています。

示談を行うことで、過大な損害賠償請求を避けることができ、刑事事件への発展を防ぐことが可能となります。

仮にすでに訴えられている場合でも、示談を行うことで裁判を取り下げてもらうことができることや、穏便に解決することができます。追加で請求を受ける心配がなくなることも示談の利点です。

また、すでに刑事事件となり、告訴を受けている場合でも、示談内容で告訴の取り下げをお願いすることも可能です。

特に刑事時事件になってしまった場合には、示談により不起訴処分の可能性が高まること、起訴後であったとしても示談があることで情状がよくなり罰金刑で済む可能性や執行猶予付き判決の可能性が高くなります。

このように、民事の訴えや刑事告訴を受けた場合には、一刻も早く示談に取り掛かることが大切です。

刑事告訴を受けた場合には、できるだけ早く対処することで、今後の人生への影響を最小限に抑えることができます。

4.名誉毀損で訴えられたら弁護士に依頼する2つのメリット

では、民事の訴えや刑事告訴を受けた場合には、弁護士に依頼すべきなのでしょうか。

損害賠償請求や刑事告訴を受けた場合には、弁護士に相談されることをおすすめします。理由としては2つあります。

①被害者の弁護士と交渉格差をなくすことができる

まず、法的措置を受けた場合には、被害者に弁護士がついている可能性が高いということです。

弁護士が代理人隣っている場合には、加害者が圧倒的に不利な状況です。プロ相手に素人が交渉していくのはとても大変な状況になることが想定できるからです。

弁護士は被害者のために損害賠償額を大きく提示してくる可能性もあります。また、被害者の気持ちを尊重して、できる限り刑事告訴を行おうとする可能性もあります。

このようなケースでは、加害者も同じように弁護士に依頼して、対等に交渉を進める必要があります。

知識や経験の格差をなくし同等にすることで、加害者にとってもより良い結果が目指せます。

②弁護士なら被害者が示談交渉に応じてくれる

また、被害者が示談交渉に応じてくれない可能性も十分にあります。

被害者に弁護士がついていない場合でも、被害者が加害者との示談に応じない可能性は十分にあります。

被害者が「絶対に許したくない」と考えている場合は、加害者との接点を拒絶する傾向にあります。

そのため、このようなケースでは自分で交渉を行うことは不可能のため、弁護士に相談すべきといえます。

被害者も弁護士であれば話を聞いてもいいと考えてくれるケースもあります。また、「加害者と話したくない」という被害者は多くいらっしゃるため、弁護士はこのような事態に慣れています。

何度かコンタクトをとり、少しずつ心を開いてもらうことで、示談交渉へ繋げていくことが可能となります。

また、弁護士は示談交渉のプロのため、当事者同士で行うよりもスムーズに交渉を進めることができ、後日トラブルも防ぐことができます。

このように、弁護士に依頼することにはメリットがあります。お悩みの方は、ご検討ください。早めの選択が肝心です。

5.ネット投稿の名誉毀損。訴えられたら、弁護士に相談を

軽い気持ちで行ったネット上の投稿が炎上することや、拡散されてしまうことは最近ではよくあることです。

誰も傷つかない投稿や、自分だけが問題となるような内容であれば問題は小さくすみますが、他人を巻き込むと大変な事態に発展します。

身元が判明すると、損害賠償請求が行われる確率は高くなります。相手の気持ち次第では、刑事告訴が行われる可能性もあるのです。

損害賠償を支払うことで解決できるのはまだ良い方です。刑事事件として立件されてしまうと、その後の人生が大きく変わってしまいます。

そのため、被害者から名誉毀損等で訴えられた場合には、早めに対処を行っていく必要があります。できるだけ早く示談をまとめることで、起訴を免れる可能性も高くなります。

名誉毀損で訴えられたら、まずは刑事事件に強い泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。専門家と一緒に問題を解決していきましょう。

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