薬物事件 [公開日]2021年2月26日

大麻の捜査、取り調べ|逮捕されたら弁護士へ

若い世代に大麻が蔓延していると報道されています。

大麻所持が明らかになれば、逮捕・勾留され、刑事裁判にかけられ、前科1犯となってしまいます。身柄拘束が長引けば、職を失ったり、退学を余儀なくされたりする危険もあります。

ここでは、大麻所持で逮捕された場合に頭に入れておいていただきたい、大麻の刑事事件に関する基礎知識を解説致します。尚、大麻使用は犯罪として処罰はされておりません。

1.大麻事件は逮捕・勾留される可能性が高い

まず、大麻事件は、逮捕・勾留されることが通常です。

大麻に限らず、薬物事犯は①薬物という証拠の隠滅が容易であること、②入手先という共犯者が存在することから、証拠隠滅や共犯者との口裏合わせの危険性が高いと認識されているからです。

また逮捕後も、①薬物という証拠が住居に隠されている可能性が高く、②家族も共犯者である場合や、共犯者を知っている可能性もあることから、検察官の請求によって、裁判官が、弁護士以外の者との面会と物の授受を禁止することが通常です(刑訴法81条)。

捜査が進み、住居の捜索を実施して、残りの大麻が押収され、家族の関与の疑いが薄れてきた段階で、弁護士から裁判官に対して、配偶者や両親などに限って面会禁止を解除するよう求める「面会禁止の一部解除」を申立て、その職権発動を促し、裁判官がこれを容れて、ようやく家族と面会することがきるようになります。

2.大麻事件の捜査、取り調べ内容

では、大麻の所持で逮捕された場合、どのような捜査・取り調べが行われるのでしょうか。

(1) 大麻所持の故意と尿検査

大麻所持で逮捕された場合、警察が欲しいのは、被疑者が「大麻」を「所持」した事実と、その「故意」を裏付ける証拠です。

「故意」とは、犯罪事実の認識ですから、ここでは、大麻であることの認識と、それを自己が所持したことの認識ということになります。

通常、所持されていたものが禁止された「大麻」に該当するか否かは、警察の科学捜査研究所の鑑定で明らかになります。

また「所持」とは、事実上の物理的な支配であり、職務質問などで、カバン内やポケットから大麻が発見された場合は、通常、所持の事実は明白です。

ただ、被疑者は、「知らないうちに、誰かがカバンに入れたのだ」とか「拾ったものだが、大麻とは知らなかった」などと弁解して、故意を否認する場合もあります。

しかし、もしも被疑者の体内から、被疑者が大麻を吸引していた事実を示す証拠が見つかれば、この言い訳は通用しなくなります。

そこで、被疑者の尿検査を行い、薬物反応の有無を調べるのです。

尿検査を拒否しても、裁判官による捜索差押令状が発布されれば、身体を押さえつけられて、尿道にカテーテルを挿入され、強制的に尿を採取されてしまいます(※覚せい剤に関して強制による採尿を認めた最高裁昭和55年10月23日決定)。

尿検査で大麻の吸引が明らかにならない場合でも、例えば、被疑者が大麻片の付着したパイプを所持しており、その吸い口から被疑者と血液型やDNAが一致する唾液が検出されれば、やはり被疑者が所持していたものと推認できます。

大麻所持罪の証拠については、次の記事もご覧下さい。

[参考記事]

大麻の譲渡・譲受・売買の証拠って何?

【「自分の物ではない」は無意味】
なお、所持を処罰するものですから、「友人から預かったもので、自分の所有物ではない」と言い訳しても無意味です。所有者が誰かは問題外だからです。
また、住居内に秘匿していた大麻について、「これは同居人のもので、自分のものではない」という言い訳をした場合は、被疑者の所持と言えるかどうかが問題となります。
この場合も、尿検査で被疑者が大麻を吸引していた事実が明らかになれば、被疑者の所持か、少なくとも同居人との共働所持と評価できますから、やはり尿検査が重要となります。

(2) 入手ルートの取り調べ

また、所持罪の故意を裏付ける供述とは別に、入手ルートについても取り調べられます。
これは被疑者が犯行に至った経緯として意味を持つだけでなく、捜査機関としては、可能であれば販売者を追跡したいからです。

ただ、入手ルートに関しては、「クラブで踊っていたら、知らない奴から声をかけられて売られた」とか「繁華街を歩いていたら、知らない外国人からもらった」などと、作り話かどうかもわからない言い訳が出てくることが多いのです。

押収した被疑者のスマホやパソコンから、売買などを示すメールが発見されたケースなどを除き、被疑者が真実を自白しない限りは、本当の入手ルートを知ることはできません。

そのため、他に証拠がなければ、入手ルートの取り調べは、ほどほどで終了することがほとんどです。

大麻所持罪については、次の記事もご覧下さい。

[参考記事]

大麻所持と使用の罪の違いとその理由|所持せず使用とはどういうことか

3.大麻事件で不起訴になる可能性

大麻所持罪の法定刑は、5年以下の懲役(第24条の2第1項)です。
営利目的の場合は、7年以下の懲役又は情状により200万円以下の罰金が併科されます(第24条の2第2項)。

したがって、罰金刑だけを科すことはできないので、略式手続の対象とはならず、起訴されると必ず公判請求されることになります。

しかし、大麻事犯でも必ず常に起訴されるというわけではありません。

検察統計によると、2019(令和元)年における大麻取締法違反事件において、起訴された人員数は2863人、起訴猶予となった人員数は1587人とされています。

起訴猶予は、犯罪の証拠があり起訴すれば有罪が見込める場合ですから、同年において、有罪の証拠があった人員数は合計4450人ということになります。そのうちの1587人が起訴猶予ですから、35.6%は起訴猶予だったと言えるでしょう(※2019年「検察統計・8表・罪名別被疑事件の既済及び未済の人員)。

したがって、起訴猶予を目指した弁護活動を行えば、公判請求を回避できる可能性もあるのです。

ただ、被害者のいない薬物犯罪では、被害者との示談という手法は使えません。その代わりに、弁護士会などが行っている贖罪寄付を行うことも、ひとつの手立てとなります。

また、被疑者が大麻所持を軽い犯罪と考えているのであれば、決して軽い犯罪ではないことを弁護士が説明し、被疑者に罪の自覚を持ってもらいます。自覚と反省がなく、再犯の危険があると判断されてしまえば起訴されてしまうからです。

被疑者の家族にも、大麻事犯の重大性を弁護士から説明して理解してもらい、今後、被疑者が再度、大麻に手を染めないよう、しっかりと監督していく覚悟を決めてもらいます。

そして、弁護士から、検察官に対し、直接の面談や意見書の提出を通じて、再犯の危険がないことを中心として、あえて公開法廷で裁かなくとも更生できると、起訴を思いとどまるよう説得します。

それでも起訴されてしまった場合は、保釈申請を行って、早期の身柄開放を実現します。

[参考記事]

薬物事件で逮捕されたら実刑?不起訴のための弁護士依頼

4.大麻所持で起訴された場合に注意するべきこと

大麻所持で起訴された場合、初犯で営利目的でなければ、ほぼ間違いなく執行猶予がつきます。逆に営利目的が認定されれば、間違いなく実刑です。営利目的か否かの認定にあたっては、大麻の所持量の多さが関係してきます。

「執行猶予がつくなら安心だ」と思うことは大きな間違いです。
大麻所持の場合、初犯時の執行猶予判決で軽く考えてしまい、再び大麻に手を出してしまうケースが多いのです。

しかし、再度捕まったときには、もう1度執行猶予判決を得ることは、非常に難しくなります。

再度の執行猶予を得られない場合は、最初の執行猶予も取り消される結果、1回目の懲役刑に2回目の懲役刑が合計された期間、服役しなくてはならないのです。

つまり、最初の刑が懲役1年半・執行猶予3年だった場合に、執行猶予期間中に大麻所持で懲役2年の判決が確定すれば、合計3年半もの長い間、刑務所で暮らすことになるのです。決して軽く考えてはいけません。

5.まとめ

泉総合法律事務所では、大麻所持を含む薬物事件の弁護経験も豊富です。

[解決事例]

大麻を所持していた大麻取締法違反→執行猶予

国家資格者の大麻所持被疑事件で連日接見して弁護活動を行うことで、嫌疑不十分で不起訴となったこともあります。

大麻所持でご家族が逮捕されてしまった方、逮捕されるのではないかとご心配な方は、刑事弁護経験豊富な当事務所にどうぞご相談ください。

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