薬物事件 [公開日]2021年2月26日[更新日]2024年4月23日

大麻で捕まったらどうなる?刑事事件の流れ・刑罰などを解説

警視庁によると、令和4年(2022年)中の薬物事犯の検挙人員は12,142人でした。
特に、若い世代に大麻が蔓延していると報道されています。芸能人の大麻使用がニュースとなるケースも珍しくありません。

大麻の所持が明らかになれば、逮捕・勾留されるのが通常です。
特に薬物事犯は、そのまま刑事裁判にかけられ前科がついてしまう可能性が非常に高いでしょう。

刑事事件の逮捕から起訴までの身柄拘束時間は、勾留延長も含めれば最大で23日に及びます。
ここまで勾留が長引けば、解雇されたり、退学を余儀なくされたりする危険もあります。

大麻取締法では、輸出、輸入、所持、栽培、譲受、譲渡等が禁止されています。
この記事では、大麻所持で捕まってしまった場合、被疑者やその家族の方が知っておくべき知識を解説致します。

1.大麻で捕まった後の刑事事件の流れ

刑事事件で逮捕された後の大まかな流れは以下の通りです。

逮捕されてから釈放されるまでの流れフロー図

刑事犯罪で逮捕後は、検察官が「勾留の必要なし」と判断すれば釈放され、在宅にて捜査が行われることがあります。
しかし、大麻に関する事件は、逮捕・勾留されることが通常です。

在宅での捜査が認められるのは、被疑者に逃走や証拠隠滅の危険がないケースのみです。
しかし、大麻に限らず、薬物事犯は「①薬物という証拠の隠滅が容易であること」「②入手先という共犯者が存在すること」から、証拠隠滅や共犯者との口裏合わせの危険性が高いと認識されているため、釈放が認められることは少ないでしょう。尿検査に時間を要することも、勾留が続く要因の一つです。

また、逮捕後の面会についても「①薬物という証拠が住居に隠されている可能性が高く」「②家族も共犯者である場合や、共犯者を知っている可能性もある」ことから、裁判官が弁護士以外の者との面会・物の授受を禁止することが通常です(刑訴法81条)。

実際、一名の大麻所持者が逮捕されることで、芋づる式に共犯者が検挙されることもあります。

一般的には、捜査が進み住居の捜索を実施するなどして残りの大麻が押収され、また、家族の関与の疑いが薄れてきた段階で、弁護士が裁判官に対して、配偶者や両親などに限って面会禁止を解除するよう求める「面会禁止の一部解除」を申立てることになります。裁判官がこれを受け入れることで、被疑者はようやく家族と面会することがきるようになります。

大麻所持罪については、次のコラムもご覧ください。

[参考記事]

大麻所持と使用の罪の違いとその理由|所持せず使用とはどういうことか

2.大麻所持罪の刑罰

(1) 大麻の所持で不起訴になるのか?

大麻所持罪の法定刑は、5年以下の懲役(第24条の2第1項)です。
営利目的の場合は、7年以下の懲役又は情状により200万円以下の罰金が併科されます(第24条の2第2項)。

したがって、罰金刑だけを科すことはできないので、大麻所持は略式手続の対象とはなりません。起訴されると必ず公判請求される(裁判となる)ことになります。

しかし、大麻事犯でも必ず常に起訴されるというわけではありません。
検察統計によると、2019(令和元)年における大麻取締法違反事件において、起訴された人員数は2863人、起訴猶予となった人員数は1587人とされています。

起訴猶予は、犯罪の証拠があり起訴すれば有罪が見込める場合ですから、同年において、有罪の証拠があった人員数は合計4450人ということになります。そのうちの1587人が起訴猶予ですから、35.6%は起訴猶予だったと言えるでしょう(※2019年「検察統計・8表・罪名別被疑事件の既済及び未済の人員)。

したがって、起訴猶予を目指した弁護活動を行えば、公判請求を回避できる可能性もあるのです。

ただ、被害者のいない薬物犯罪では、被害者との示談という手法は使えません。
そこで、示談の代わりに弁護士会などが行っている贖罪寄付を行うこともひとつの手立てとなります。

また、本人に自覚と反省がなく、再犯の危険があると判断されてしまえば起訴されてしまう可能性が高くなります。
そこで、被疑者が大麻所持を軽い犯罪と考えているのであれば、決して軽い犯罪ではないことを弁護士が説明し、被疑者に罪の自覚を持ってもらいます。

被疑者の家族にも、大麻事犯の重大性を弁護士から説明して理解してもらい、今後、被疑者が再度大麻に手を染めないよう、再犯防止・社会復帰に向けてしっかりと監督・サポートしていく覚悟を決めてもらいます。

そして、弁護士は検察官に対し、直接の面談や意見書の提出を通じて、「再犯の危険がないこと」「あえて公開法廷で裁かなくとも更生できること」と示し、起訴を思いとどまるよう説得します。
それでも起訴されてしまった場合は、保釈申請を行って、早期の身柄開放を実現します。

[参考記事]

薬物事件で逮捕されたら実刑?不起訴のための弁護士依頼

(2) 有罪判決でも執行猶予がつくケース

大麻所持で起訴された場合、初犯でかつ営利目的でなければ、ほぼ間違いなく執行猶予がつきます。逆に、個人使用ではなく営利目的が認定されれば、間違いなく実刑です。
営利目的か否かの認定にあたっては、大麻の所持量の多さが関係してきます。大麻を大量に所持して売りお金を得ていた場合には、間違いなく営利目的とされるでしょう。

とは言え、「執行猶予がつくなら安心だ」と思うことは大きな間違いです。
大麻所持の場合、初犯時の執行猶予判決で軽く考えてしまい、再び大麻に手を出してしまうケースが多いのです。

しかし、再度捕まったときには、もう一度執行猶予判決を得ることは非常に難しくなります。
執行猶予期間中に再犯してしまい、更に再度の執行猶予を得られない場合は、最初の執行猶予も取り消され、1回目の懲役刑に2回目の懲役刑が合計された期間、服役しなくてはならないのです。

つまり、最初の刑が懲役1年半・執行猶予3年だった場合に、執行猶予期間中に大麻所持で懲役2年の判決が確定すれば、合計3年半もの長い間、刑務所で拘留されることになるのです。

3.大麻事件の捜査、取り調べ内容

では、大麻の所持で逮捕された場合、起訴・不起訴を決めるためにどのような捜査・取り調べが行われるのでしょうか。

(1) 大麻所持の事実と故意を捜査

大麻所持で逮捕された場合、警察が欲しい証拠は、被疑者が大麻を「所持」した事実と、その所持についての「故意」を裏付けるものです。
「故意」とは犯罪事実の認識ですから、ここでは「大麻であることの認識」と、それを「自己が所持したことの認識」ということになります。

通常、所持されていたものが禁止された「大麻」に該当するか否かは、警察の科学捜査研究所の鑑定で明らかになります。

また「所持」とは、事実上の物理的な支配です。
職務質問などでカバン内やポケットから大麻が発見された場合は、通常、所持の事実は明白です。ただ、被疑者は「知らないうちに誰かがカバンに入れたのだ」とか「拾ったものだが大麻とは知らなかった」などと弁解して、故意を否認する場合もあります。

しかし、もしも被疑者の体内から、被疑者が大麻を吸引していた事実を示す証拠が見つかれば、この言い訳は通用しなくなります。
そこで、被疑者の尿検査を行い、薬物反応の有無を調べるのです。

(2) 尿検査の実施

尿検査を拒否しても、裁判官による捜索差押令状が発布されれば、身体を押さえつけられて尿道にカテーテルを挿入され、強制的に尿を採取されてしまいます(※覚せい剤に関して強制による採尿を認めた最高裁昭和55年10月23日決定)。

尿検査で大麻の吸引が明らかにならない場合でも、例えば、被疑者が大麻片の付着したパイプを所持しており、その吸い口から被疑者と血液型やDNAが一致する唾液が検出されれば、やはり被疑者が所持していたものと推認できます。

大麻所持罪の証拠については、次の記事もご覧下さい。

[参考記事]

大麻の譲渡・譲受・売買の証拠って何?

【「自分の物ではない」は無意味】
なお、大麻は「所持」を処罰されますから、「友人から預かったもので、自分の所有物ではない」と言い訳しても無意味です。所有者が誰かは問題外だからです。
また、住居内に秘匿していた大麻について、「これは同居人のもので、自分のものではない」という言い訳をした場合は、被疑者の所持と言えるかどうかが問題となります。
この場合も、尿検査で被疑者が大麻を吸引していた事実が明らかになれば、被疑者の所持か、少なくとも同居人との共働所持と評価できますから、やはり尿検査が重要となります。

(3) 入手ルートの取り調べ

また、所持罪の故意を裏付ける供述とは別に、入手ルートについても取り調べられます。
これは被疑者が犯行に至った経緯として意味を持つだけでなく、捜査機関としては可能であれば販売者を追跡したいからです。

ただ、入手ルートに関しては、「クラブで踊っていたら、知らない奴から声をかけられて売られた」とか「繁華街を歩いていたら、知らない外国人からもらった」などと、作り話かどうかもわからない言い訳が出てくることが多いものです。

押収した被疑者のスマホやパソコンから、売買などを示すメールが発見されたケースなどを除き、被疑者が真実を自白しない限りは本当の入手ルートを知ることはできません。

そのため、(他に証拠がなければ)入手ルートの取り調べはほどほどで終了することがほとんどです。

4.大麻事件の不起訴処分・執行猶予を目指すなら弁護士へ

泉総合法律事務所では、大麻所持を含む薬物事件の弁護経験も豊富です。

[解決事例]

大麻を所持していた大麻取締法違反→執行猶予

上記の事例以外にも、国家資格者の大麻所持被疑事件で連日接見して弁護活動を行うことで、嫌疑不十分で不起訴となったこともあります。

大麻所持でご家族が逮捕されてしまった方、逮捕されるのではないかとご心配な方は、刑事弁護経験豊富な当事務所にどうぞご相談ください。

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