刑事弁護 [公開日]2017年10月23日[更新日]2021年3月30日

勾留中の生活|面会は可能?留置場と拘置所の違いは?

逮捕・勾留された場合は、留置場拘置所に身を置かれ、取り調べを受けることになります。
しかし、そこでどのような生活が待っているのかを知っている方は少ないでしょう。

「逮捕や勾留なんて自分には関係ない」と思うかもしれませんが、いつ・どこで・どんな事件に巻き込まれるか誰にもわかりません。家族が刑事事件を起こしてしまう可能性もあるでしょう。
逮捕・勾留をされたらどうなるのか、また、留置場や拘置所での暮らしを知っておいて損はありません。

今回は、逮捕・勾留についての解説と、留置場と拘置所の違い、またそこでの生活について解説します。

1.逮捕・勾留とは?

(1) 逮捕

罪を犯した疑いのある人物(被疑者)について、証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合、警察官はその被疑者を「逮捕」します。

逮捕した後は取り調べを行い、48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送ります(検察官送致)。

そして、検察官が捜査により証拠資料を集めた結果、勾留の必要性があると判断した場合には、被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内に、裁判官に「勾留請求」することになります。

なお、初犯の低額の万引きなど、あらかじめ検察庁から指定された軽微な犯罪の場合には、警察は事件を検察官に送致することなく終了させ、被疑者を釈放する場合があります。これを「微罪処分」といいます。

(2) 勾留

勾留」とは、被疑者または被告人の身柄を、 逮捕に引き続き指定された場所に長期間拘束することをいいます。

勾留には、起訴前勾留と起訴後勾留とがあります。
「起訴前勾留」とは文字通り検察官に起訴される前の勾留のことで、「起訴後勾留」は起訴された後の勾留のことを意味します。

①起訴前勾留

起訴前勾留は、逮捕後に行われる引き続きの身体拘束です。

罪を犯したことが明らかである・定まった住居を有しない・証拠隠滅や逃亡の恐れがあるなどの要件を満たしていれば、逮捕後も続いて勾留されてしまう可能性が高いでしょう(刑事訴訟法60条)。

起訴前勾留の期間については、原則10日間とされています(刑事訴訟法208条1項)。
また、やむを得ない事情があるときは、最大で10日間延長することができるとされています(刑事訴訟法208条2項)。

したがって、特別犯罪を除けば、起訴前の勾留期間は最大で20日間ということになります。
その期間中に検察は起訴するか決定しなければならず、不起訴が相当と判断した場合は直ちに被疑者を釈放しなければなりません。

②起訴後勾留

起訴後の勾留は、原則として起訴後2か月とされています(刑事訴訟法60条2項)。また、特に継続の必要があると判断された場合には、1か月ごとに期間を更新できるとされています。

また、検察官が被疑者を逮捕したとき又は被疑者の身柄を受け取った時は、勾留請求せずにそのまま起訴を提起することができるとされています(刑事訴訟法204条1項但し書き、同法205条3項)。
この場合は、起訴後の勾留のみが行われることになり、起訴前勾留は存在しません。

2.留置場・拘置所とは?

次に、逮捕・勾留された時に被疑者の身が置かれる留置場・拘置所についてご説明します。

留置場とは、警察署に設置された施設で、被疑者が逮捕され勾留請求するまでの留置期間に身柄を拘束されます。

拘置所とは、法務省の施設です。起訴後被告人を勾留する場合は拘置所で身柄を拘束します。
また、起訴されておらず、被疑者の状態での勾留も、法律上拘置所で拘束されることになっています。

したがって、勾留された被疑者の身柄は留置場から拘置所へ移ることとなるのが原則なのですが、実際はそのまま留置場で拘束されることが多いです。この場合の留置場を代用監獄といっています。

これについては、留置場は警察署内にあるので、捜査機関としても留置所のほうが取り調べを行いやすいこと、また拘置所は全国に110程度あるのに対し、留置場は全国で1,100程度あり、数が圧倒的に多いことが理由とされています。

3.逮捕・勾留中の生活

では、被疑者が逮捕・勾留された場合、留置場や拘置所でどのような生活を送ることになるのでしょうか。

(1) 勾留中の生活

勾留されると1日中取り調べを受けると想像する方がいるかと思いますが、基本的にそのようなことはありません。

留置所によって異なりますが、朝は7時頃に起床して朝食をとり、昼食は12時頃、夕食は6時頃です。就寝は9時頃となります。

それ以外の時間は取り調べを受けるのですが、一日中取り調べが行われるわけではありません。取り調べがない時間は部屋で自由な時間を過ごすことができます。

例えば、警察署に備置きされている本や、家族から差し入れられた漫画・雑誌を読んだり、手紙を書いたりすることも可能です。

また、留置場でも拘置所でも、食事は十分なメニューが提供されています。栄養士によるチェックも定期的に行われているようです。
また、洗濯も施設側が代行してくれており、週に何回かは入浴できるようです。

ただ、空調施設には差があり、留置場内は冷暖房が完備されているところが多いのに対し、拘置所内にはこれがないところがほとんどです。

(2) 差し入れの制限

先述の通り、逮捕・勾留されている被疑者は本や手紙を読んだり、書いたりすることができます。よって、家族からこのようなものを差し入れることが可能です。

ただし、差し入れについては留置場及び拘置所で様々な制限があり、差し入れできるものとできないものがあります。

例えば、タオルやシャンプーなどの日用品であっても、中身が確認できないとの理由で差し入れ不可となっています。食料についても保存場所の関係で差し入れはできません。

一方、現金の差し入れは可能となっているので、施設内で自分の費用負担で雑誌や食べ物などを購入することができます。

また、手紙の差し入れも可能ですが、その内容が罪証隠滅や逃亡を示唆する場合は認められません。

[参考記事]

留置場で喜ばれる6つの差し入れ

(3) 面会の是非

勾留されている被疑者は、釈放まで家族や友人など外部の者と会うことはできません。当然ながらスマホも利用できず、インターネットも電話もできません。
このような中で、家族や友人と会って話をできることは、大きな心の支えとなるでしょう。

家族・友人に限らず、面会を希望する者は誰でも留置場や拘置所に行って身体拘束されている方と接見することができることが原則です。
(なお、逮捕段階では弁護士以外は接見できず、接見できるようになるのは勾留段階からです。また、刑事訴訟法81条に基づき接見が禁止されていたら、勾留段階でも弁護士以外は接見できません。)

なお、弁護士以外との面会には、逃亡や罪証隠滅を防ぐために係員が必ず付き添うことになっています。

面会の時間帯ですが、それは各留置場及び拘置所により違うため一概にはいえませんが、大体平日午前9時〜午後5時あたりのところが多いようです。また、面会の回数は1日につき1組(3人以内)、15~30分とされているところがほとんどです。

弁護士は警察の留置場の場合には土日祝日を問わず、24時間接見できますが、拘置所の場合は平日9~17時に限られるのが原則です(刑事施設法220条6項)。

[参考記事]

接見とは|接見を制限された場合には弁護士に相談を

4.勾留を避ける・釈放のための弁護活動

逮捕・勾留中の生活は、自由時間もあり意外と窮屈ではなさそうだと感じた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、勾留されると、その間は当然ながら学校や職場に行けません。
結果、退学処分や懲戒処分を受けるなど、日常生活に多大な影響を及ぼす可能性があります。

そのため、被疑者は勾留の回避・勾留からの早期釈放を目指すことになります。

しかし、釈放のための活動は被疑者本人だけでは困難なので、弁護士に依頼するのが得策です。
以下では、勾留されそう・勾留された被疑者のために弁護士が行ってくれる弁護活動を説明します。

(1) 勾留請求の阻止

勾留は、検察官が「勾留請求」し、裁判官がその是非を「勾留質問」などを通して判断して、最終的に勾留決定するという仕組みになっています。
したがって、勾留を阻止する場合は、検察官の勾留請求を未然に防ぐことが重要になります。

勾留が認められるには、「勾留の理由」と「必要性」がなければなりません。したがって検察官には、これらの要件が満たされていないことを説明して、勾留請求を断念してもらう必要があります。

勾留の理由とは、嫌疑の相当性及び住所不定、逃亡または罪証隠滅の怖れがあることです(刑事訴訟法60条1項)。したがって、定まった住所がある・仕事があるため逃げ出す恐れはないこと、証拠の隠滅の可能性がないことなどをうまく説明することになります。

勾留の必要性とは、勾留の理由があってもその必要がないことを意味します。
例えば、住所不定であっても、身元引受人が確実に存在するような場合です。

勾留の要件について、詳しくは以下のコラムで解説しています。

[参考記事]

逮捕後の勾留の要件とは?勾留の必要性を否定して釈放を目指す

(2) 勾留請求却下の働きかけ

このような検察官への働きかけを行っても勾留が請求されてしまったら、次は、裁判官に勾留請求を却下するように働きかける必要があります。
主張する点は、検察官の時と同様に「勾留の理由と必要性がない」ということです。

ただし、検察官の時に説得できなかったことを踏まえると、裁判官との折衝はより具体的で説得的な交渉を行わないと主張は認められないでしょう。

身元引受人においても、ただ単にその人を書類上紹介するのではなく、実際裁判官の面前に来てもらい、その人自身に身元を引き受けることを供述してもらうなどが考えられます。

(3) 勾留終了の手続き

以上のような阻止行動をとっても勾留が認められてしまった場合は、勾留手続きを終了させる請求を行う必要があります。

①準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)
②勾留の執行停止(刑事訴訟法207条1項、同法95条)
③勾留の取り消し(刑事訴訟法207条1項、同法87条)
④勾留理由開示制度(刑事訴訟法207条1項、同法82条)

これらの制度を使って、勾留の終了を請求していくことになります。
詳しくは以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

勾留請求・準抗告とは?釈放を目指すなら泉総合法律事務所へ!

5.逮捕・勾留されたら泉総合法律事務所へ

「逮捕・勾留された」となっては、家族だけでなく実際に罪を犯した本人でも「これからどうなってしまうのか」と動揺するでしょう。
また、冤罪であった場合、身体拘束に耐えきれずに取り調べで虚偽の自白をしてしまう危険もあります。

逮捕に続いて勾留されると、長期に身柄が拘束され社会生活に重大な影響が生じます。そうならないために、早期に弁護士に依頼することが重要になります。

逮捕・勾留されてしまった本人やそのご家族の方は、刑事事件に強い泉総合法律事務所の弁護士に是非ご相談ください。

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