暴力事件 [公開日]2018年6月12日[更新日]2023年3月7日

ネット誹謗中傷で訴えられたらどうすれば良い?

インターネット上では、匿名で気軽に自分の意見を投稿できることから、ついつい度が過ぎたことも書き込んでしまいがちです。

2ちゃんねるやツイッター、雑談たぬき等で誹謗中傷をしたまま放置していると、開示請求により相手に身元が知られ、民事の損害賠償請求が行われる・名誉毀損等に基づく刑事告訴がされる(訴えられる)可能性があります。
実際に「ネットへの書き込みで訴えられました」という知恵袋などの書き込みを見たことがある方も多いでしょう。

2022年10月1日からはプロバイダ責任制限法の改正法も施行されており、誹謗中傷をした人物を特定する手続きが簡易になりました。発信者情報開示命令に係る意見照会書が届いても無視していると、すぐに「名誉毀損で訴えるという連絡が来た」となりかねません。

このような場合は、具体的な対応策を考えなければいけません。

1.ネット誹謗中傷で訴えられる内容

まず、ネット誹謗中傷をすると、どのような法律に基づいて被害者からの請求が行われるのかを簡単に説明します。

(1) 民事の損害賠償請求

誹謗中傷行為やプライバシー侵害行為は、違法に他人の権利・利益を侵害する行為として、法律上の不法行為(民法709条)に該当します。
不法行為を受けた被害者は、加害者に対し損害賠償請求を行う権利があります。

誹謗中傷行為やプライバシー侵害行為は、被害者に精神的な苦痛という損害を発生させたと評価されるので、慰謝料請求の対象となります(民法711条)。

ほとんどの被害者は、弁護士費用や裁判所費用を支払い、加害者を特定した上で法的手続きを実施しているため、全く金銭を支払わないで(謝罪だけで)和解できるケースは稀です。
提訴前の和解であっても、提訴後の裁判所での和解であっても、一定の金銭支払いには応じざるを得ないでしょう。

訴訟の判決が確定したり、訴訟上の和解が成立したりしたにもかかわらず、加害者が支払いを行わない場合には、強制執行によって資産や給料などの差し押さえを受ける可能性もあります。

なお、誹謗中傷行為による名誉毀損やプライバシー侵害における慰謝料の相場は数十万円~70万円程度が多くなっています(個人の場合)。

(2) 名誉毀損等に基づく刑事告訴

誹謗中傷行為等をネット上で行った場合は、被害者が警察に告訴することがあります。
具体的な罪名は、投稿内容によって異なります。

①相手の名誉(社会的評価)を貶めるような投稿

具体的な事実で相手の社会的評価を低下させる内容を摘示することは、名誉毀損罪(刑法230条)が成立する可能性があります。
具体的な事実ではなくとも、「バカ」などの侮蔑的表現を投稿することは、侮辱罪(同法231条)に該当します。

名誉毀損罪の場合は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金刑」、侮辱罪の場合は、「拘留または科料」が科せられる可能性があります。

②飲食店や法人のデマ・悪意ある投稿

「A店の料理に虫が入っていた」「B社の取締役は暴力団と繋がりがある」など、飲食店や特定の企業のデマを流した場合には、名誉毀損罪が成立する可能性があります。

また、被害者である飲食店や企業の営業妨害にも当たり、偽計業務妨害罪(刑法233条)または威力業務妨害罪(刑法234条)に該当する可能性があります。
業務妨害罪の場合は、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑」が科せられる可能性があります。

[参考記事]

ネットの誹謗中傷で逮捕される?|名誉棄損罪・業務妨害罪

③恋人などの性的画像を投稿

恋人や元恋人などの性的な画像・動画をネット上にアップした場合には、リベンジポルノ被害防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)における私事性的画像記録公表罪など(3条1項)で規制を受けます。

相手が18歳未満の児童である場合には、児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)の児童ポルノ提供罪など(7条6項)により処罰されます。

リベンジポルノ被害防止法の私事性的画像記録公表罪の場合は、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、児童ポルノ禁止法の児童ポルノ提供罪では「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」が科せられる可能性があります。

[参考記事]

リベンジポルノで逮捕されたら弁護士へ相談を

なお、当事務所では「インターネット上にわいせつ動画をアップロードした」ことでわいせつ電磁的記録媒体陳列罪(刑法175条1項)に問われ、執行猶予付き判決を得たという事例もあります。

[解決事例]

インターネット上にわいせつ動画をアップロード→執行猶予付き判決

2.ネット誹謗中傷で訴えられた場合の対応

このように、ネット上で誹謗中傷行為を行うと、一定の犯罪に該当する場合があり、刑事告訴を受ける可能性もあります。出来心の投稿が大変な事態を招いてしまう可能性もあることを十分に理解しておいてください。

では、被害者に住所・氏名を特定されて損害賠償請求や刑事告訴を受けた場合には、その後どうすれば良いのでしょうか。

結論を言うと、損害賠償請求であれ訴えられた場合であれ、できるだけ早く被害者に謝罪し、示談(和解)をまとめることが大切です。

示談とは、当事者間の特定のトラブルにつき、話し合いで解決する方法です。
示談の話し合いでは、損害賠償の具体的な額や支払い方法について決めることになります。ネットにおける誹謗中傷投稿やプライバシー侵害の事件でも、示談は頻繁に行われています。

示談が成立すると、加害者から被害者への謝罪、今後このようなことは行わないことの誓約、慰謝料・示談金の金額の確定と支払い方法、示談成立後は損害賠償や刑事告訴を新たに行わないこと、などが示談書に明記されます。

示談を行うことで、刑事事件への発展を防ぐことが可能となるケースが多くあります。

また、すでに告訴を受けている場合でも、示談内容次第で告訴の取り下げをしてもらうことも可能です。
特に刑事事件になってしまった場合には、示談成立により不起訴処分の可能性が高まりますし、起訴後であったとしても情状がよくなり罰金刑で済む・執行猶予付き判決を得られる可能性が高くなります。

このように、民事の訴えや刑事告訴を受けた場合には、一刻も早く示談に取り掛かることが大切です。

[参考記事]

刑事事件の示談の意義・効果、流れ、タイミング、費用などを解説

3.名誉毀損で訴えられたら弁護士に依頼する2つのメリット

損害賠償請求や刑事告訴を受けた場合には、弁護士に相談されることをおすすめします。その理由としては2つあります。

(1) 交渉格差をなくすことができる

まず、法的措置を受けた場合には、被害者に弁護士がついている可能性が高いです。

弁護士が代理人となっている場合には、法的な知識と経験のない加害者が単独で相対するには、圧倒的に不利な状況です。
加害者も同じように弁護士に依頼して、対等に交渉を進める必要があります。

知識や経験の格差をなくすことで、加害者にとってもより良い結果が目指せます。

(2) 被害者が示談交渉に応じてくれる可能性が高まる

被害者側の弁護士の有無にかかわらず、被害者が加害者との示談に応じない可能性は十分にあります。
被害者が「絶対に許したくない」と考えている場合は、加害者との接触すら拒絶する場合があります。

このようなケースでは自分で交渉を行うことは不可能のため、弁護士に相談すべきといえます。
被害者も「加害者と話したくないが、弁護士であれば話を聞いてもいい」と考えてくれるケースは多くあるからです。

弁護士が被害者と何度かコンタクトをとり、少しずつ心を開いてもらうことで、示談交渉へ繋げていくことが可能となります。

また、当事者同士だけで行う交渉は新たな火種を生む危険がありますが、弁護士が入ることで、そのような余計なトラブルも防ぐことができます。

4.ネット投稿の名誉毀損で訴えられたら弁護士に相談を

軽い気持ちで行ったネット上の投稿が炎上することや、拡散されてしまうことは最近ではよくあることです。

投稿者の身元が判明すると、損害賠償請求が行われる確率は高くなります。相手の気持ち次第では、刑事告訴が行われる可能性もあるのです。

刑事事件として立件されてしまうと、その後の人生が大きく変わってしまいます。そのため、被害者から名誉毀損等で訴えられた場合には早めに対処を行っていく必要があります。

できるだけ早く示談をまとめることで、起訴を免れる可能性も高くなります。
ネット誹謗中傷で訴えられた方は、刑事事件に強い泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。専門家と一緒に問題を解決していきましょう。

5.ネット誹謗中傷に関するFAQ

  • ネット誹謗中傷は何罪になる?

    誹謗中傷行為等をネット上で行った場合の具体的な罪名は、投稿内容によって異なります。

    相手の名誉(社会的評価)を貶めるような投稿

    具体的な事実で相手の社会的評価を低下させる内容を摘示することは、名誉毀損罪(刑法230条)が成立する可能性があります。
    具体的な事実ではなくとも、「バカ」などの侮蔑的表現を投稿することは、侮辱罪(同法231条)に該当します。

    飲食店や法人のデマ・悪意ある投稿

    「A店の料理に虫が入っていた」「B社の取締役は暴力団と繋がりがある」など、飲食店や特定の企業のデマを流した場合には、名誉毀損罪が成立する可能性があります。

    また、被害者である飲食店や企業の営業妨害にも当たり、偽計業務妨害罪(刑法233条)または威力業務妨害罪(刑法234条)に該当する可能性があります。

    恋人などの性的画像を投稿

    恋人や元恋人などの性的な画像・動画をネット上にアップした場合には、リベンジポルノ被害防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)における私事性的画像記録公表罪など(3条1項)で規制を受けます。

    相手が18歳未満の児童である場合には、児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)の児童ポルノ提供罪など(7条6項)により処罰されます。

  • ネット誹謗中傷で訴えられたらどうする?

    損害賠償請求であれ訴えられた場合であれ、できるだけ早く被害者に謝罪し、示談(和解)をまとめることが大切です。

    示談が成立すると、加害者から被害者への謝罪、今後このようなことは行わないことの誓約、慰謝料・示談金の金額の確定と支払い方法、示談成立後は損害賠償や刑事告訴を新たに行わないこと、などが示談書に明記されます。

    示談を行うことで、刑事事件への発展を防ぐことが可能となるケースが多くあります。

    また、すでに告訴を受けている場合でも、示談内容次第で告訴の取り下げをしてもらうことも可能です。
    特に刑事事件になってしまった場合には、示談成立により不起訴処分の可能性が高まりますし、起訴後であったとしても情状がよくなり罰金刑で済む・執行猶予付き判決を得られる可能性が高くなります。

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