盗撮 [公開日]2020年3月2日[更新日]2023年1月12日

盗撮に関する東京都迷惑防止条例の改正で何が変わったか?

ここ数年で、各都道府県の定める迷惑防止条例が改正されました(大阪、千葉、神奈川、岐阜等)。

東京都も例外ではなく、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(以下、東京都迷惑防止条例)は2018年に改正されました。

この改正では、盗撮行為の規制場所を拡大する等の重大な改正がなされました。

ここでは、2018年の東京都迷惑防止条例の改正について説明します。

1.迷惑防止条例とは

迷惑防止条例は各都道府県が定めています。内容は微妙に違えど、禁止している行為はほとんど同じです。

東京都迷惑防止条例は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、もつて都民生活の平穏を保持することを目的と」しています(第1条)。迷惑防止条例が禁止する行為は、盗撮、痴漢、つきまとい、押し売り、客引きなど多岐にわたります。

盗撮行為は、後述する東京迷惑防止条例第5条で規制されています。盗撮とは、「通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること」(第5条第1項2号)です。

すなわち、実際に盗撮しなくとも、盗撮する目的でカメラを向けたり設置したりするだけで、迷惑防止条例違反となる可能性があります。

[参考記事]

盗撮の定義とは?カメラを向けた、設置しただけ…どこからが犯罪か

盗撮の罰則は以下のようなります。

  • 撮影したとき・・・1年以下の懲役又は100万以下の罰金(常習の場合は2年以下の懲役100万以下の罰金)
  • 撮影機器を差し向けたとき、設置したとき・・・6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(常習の場合は1年以下の懲役又は100万以下の罰金)
【盗撮を罰する法律】
盗撮を罰する法律は迷惑防止条例の他に軽犯罪法、住居侵入罪があります。
軽犯罪法1条第23号は「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を処罰します。これは、上記場所をのぞき見る行為(盗撮したか否かではない)を処罰しています。
軽犯罪法違反は、拘留(1日以上30日未満の身体拘束)又は科料(1000円以上10000円以下の罰金)に処されます。
また、盗撮をする際に他人の住居や建造物に侵入した場合は、住居侵入罪(刑法130条)が成立します。住居侵入罪は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます。

2.盗撮に関する迷惑防止条例の改正内容

近年の技術の発展により、スマートフォンや小型カメラ等の電子機器が人々の身近なものになりました。

そのため、以前と比べて盗撮事件が多発するようになりましたが、改正前の迷惑防止条例は、公共の乗物、公衆便所、公衆浴場、公衆が使用できる更衣室など、公共の場所以外での盗撮行為(例えば、住居や会社での盗撮行為)は規制対象となっていませんでした。

そこで、改正迷惑防止条例は、上記場所に加えて、住居、学校、会社やタクシー、カラオケボックスなども規制対象とし、盗撮が規制される場所を拡大しました。

これにより、以前は軽犯罪法で軽い処罰しかできなかった盗撮行為を迷惑防止条例違反で重く処罰することが可能になりました。

第5条第1項柱書(改正後)
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。

第1項2号
次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

3.迷惑防止条例違反の盗撮をしてしまったら

盗撮行為をすると刑罰に処される可能性があります。
盗撮は罰金刑となることが多いですが、次のようなケースでは、懲役刑を宣告され、執行猶予も付かない例もあります。

  • 行為態様が悪質である(盗撮の目的が画像をネットにアップすることや販売することだった場合、被害者の住居内に侵入して機器を設置した場合など)
  • 被害者の処罰感情が強い
  • 示談が成立していない
  • 前科・前歴がある(特に、盗撮を繰り返している場合)

[参考記事]

盗撮事件で懲役刑(実刑)・執行猶予になる可能性はある?

また、罰金刑であろうと懲役刑であろうと、有罪判決が出されると前科がついてしまいます。

以上の事態を避けるためには、被害者と示談することが重要です。
被害者との示談の成立の有無は、検察官が起訴するか否かの判断で重要な役割を果たします。

というのも、示談において支払う示談金を被害者に受け取ってもらい、被疑者の処分を求めない旨の意思を表明してもらうと、検察官から「被害が回復されて被害者の処罰感情が減少した」と評価され、起訴を回避してもらえる可能性が高くなるからです。

4.示談の成立は弁護士に相談を!

示談をするには弁護士が必要!と言われますが、これは一体どうしてなのでしょうか?

これは様々な理由によります。
第一に、弁護士がついていない場合、そもそも被害者と連絡がとれないケースがほとんどです。盗撮事件の被害者と被疑者が顔見知りで、連絡先を共有しているということは基本的にはありません。

示談交渉への第一歩は被害者の連絡先を知ることですが、被害者は加害者に自分の情報を教えたがりませんし、また、警察も許可なく被害者の情報を加害者に教えません。

他方、弁護士が弁護人として示談交渉の意向を警察・検察に伝えると、多くの場合の被害者は、警察・検察を通して弁護士にのみ連絡先を教えてくれるのです。

また、示談交渉の方法、示談金の相場金額、成立した示談の内容を証明する示談書の作成方法など、一般の方には馴染みのないことですので、独力で円滑な示談を進めることは事実上困難でしょう。
刑事弁護の専門家である弁護士であれば、そのような心配は無用です。

[参考記事]

迷惑防止条例違反の盗撮事件における示談方法と示談金の相場

5.まとめ

迷惑防止条例の条文を読んでみても、一般の方が簡単に読みこなせるものではありません。条例が改正されていればなおのこと、自分の行為が新しい規制に触れるのかどうか自己判断はできないでしょう。

盗撮に限らず、刑事事件に詳しい弁護士は、最近の法改正にも精通しています。
不安や疑問のある方は、是非、泉総合法律事務所の弁護士の法律無料相談をご活用ください。

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