刑事事件簿 [公開日]2017年6月20日[更新日]2023年9月26日

駆け出し弁護士時代の窃盗事件弁護|示談で懲役を回避

窃盗示談で懲役回避のイメージ

泉総合法律事務所の代表弁護士を務めています、泉と申します。
このコラムでは、私が弁護士登録して間もないころ(駆け出し弁護士時代)に取り組んだ刑事弁護(窃盗事件)についてお話ししたいと思います。

現在窃盗事件を起こしてしまい捜査されている被疑者の方やそのご家族は、「弁護士が窃盗事件でどのような弁護活動をしてくれるか」の参考になるかと思いますので、ぜひご覧いただければと思います。
その上で、ぜひ泉総合法律事務所への依頼をご検討ください。

1.窃盗で逮捕された場合の量刑(罪の重さ)

窃盗には様々なものがありますが、万引きなど被害金額が軽微な刑事事件ならば、被害者側(店側)と示談できなくとも「略式起訴」となるケースがあり、この場合は正式裁判を行わず罰金を支払うことで刑事事件は終了となります。
もっとも、罰金も刑罰ですから前科がつきます。罰金刑を免れるためには、弁護士に刑事弁護を依頼して被害者と示談交渉・示談成立をする必要があるでしょう。

被害金額が高額な場合や、金額が軽微でも犯行の手口が悪質な場合(店員に怪我を負わせた等)には、起訴前に示談できればともかく、通常は裁判所に起訴され、正式裁判を受け、執行猶予付きの有期懲役に処せられるケースもあります(示談できても起訴されることもあります)。

私が受任したのは、事務所荒らしの建造物侵入窃盗未遂で逮捕されてしまったという事件でした。
建造物侵入窃盗未遂1件ならば、示談できれば確実に執行猶予はつき、仮に示談できなくとも執行猶予の獲得が可能(懲役に処せられる事案ではない)と判断できました。

2.余罪が多数ある本件窃盗未遂の全貌

受任当初、被告人に接見して詳しく話を聞く前は、建造物侵入窃盗未遂1件と思われた事案でした。
しかし、示談のために警察の担当刑事へと「被疑者の連絡先を教えてほしい」連絡をしたところ、担当の係長刑事から「この件以外に余罪が30件近くある」ということを聞かされたのです。

私は1件の窃盗事件と考えて弁護士会から受任していたものですから、余罪が30件もあると聞き大変驚きました。
警察の係長刑事からは余罪をできるかぎり立件する方針であると聞かされ、そうなると執行猶予は厳しい(実刑の可能性が高い)と考えました。いわゆる事務所荒らしは1件あたりの被害金額が大きいことも理由の一つです。

3.30件近い余罪について全て示談交渉

どこまで余罪を示談すべきか迷う案件でしたが、数件示談しただけで実刑となったら私自身も後悔するだろうと考え、30件近い余罪を全件示談交渉すると決めました。
被疑者の家族とも話し合いをしたところ、被害額の6割程度の返済原資があるとのことでした。

通常、示談は全額一括払いにするものです。分割払いの示談は、被害者にも「約束通り実行されない可能性がある」と不安を抱かれてしまうため、基本的に行いません。
また、被害金額全額での示談でないと、検察官や裁判官はやはり被害弁償について厳しく評価します。

しかし、この件では弁済原資に限りがあったこと(現実に全額を一括で返済できるほどの資金がなかったこと)と、まだ立件されていない余罪であることから、一部分割払いの示談でもやむを得ず、示談のあり方が異なっても評価されると考えてられました。
そこで、まずは被害額の一部を一括払いして、残金を分割払いにしてもらう方向で示談交渉に着手しました。

当時の私はいわゆるイソ弁(※居候弁護士、すなわち法律事務所に雇われて働く弁護士のことです)でしたので、勤務中に被害会社に連絡を入れて示談のお願いをし、示談のための日程調整を行いました。そして、勤務が終わってから東京都内、千葉県、埼玉県の各地の被害会社に、時には深夜までに出向いて示談のお願いをしました。もちろん、平日だけでなく、被害会社の都合で土日にも示談交渉を行いました。

犯行に至る事情や被疑者の置かれている状況、被疑者の厳しい生い立ちや家族状況などを伝えて示談のお願いをしても、一度で示談いただける被害会社はごく少数です。大半は2、3回かそれ以上の示談交渉を行いました。
もちろん、示談をしていただける会社もあれば示談していただけない会社もありました。示談に応じていただけない被害会社には、せめて被害金を受領してもらうこと(=被害弁償)をお願いして、応じていただきました。

【示談と被害弁償の違い】
被害弁償では、被害者が被害届を出す余地を残します。他方、示談成立により作成できる示談書には、被告人の刑罰を望まないとの宥恕文言や、被害届を出さない・出している場合には被害届を取り下げるとの文言を入れることができます。示談して示談書を取り付けることで、窃盗事件ならば刑事事件として立件されないことになるのです。

なお、今でも印象に残っているのは、ある被害者のご家庭の事情から、被告人の生い立ちに深く同情していただき、示談金を辞退されて示談書を取り交わしていただいたことです。そればかりか「被告人のために使ってほしい」と金銭までいただきました。その金銭は、他の被害者の示談金に使わせていただきました。

4.追起訴もなく、実刑を回避し執行猶予判決へ

起訴されるに至った被害会社は、何度か示談のお願いに伺っても応じてもらえず、被害弁償も受け付けていただけませんでした。
しかし、全件ではありませんが約30件近くの示談・被害弁償を取り付けたことで、警察の担当係長刑事からは「余罪捜査をせずに済んだ」と感謝され、余罪の追起訴もありませんでした。

このような弁護活動の結果、判決は保護観察付5年の執行猶予付有罪判決でした。
この判決は、実際ならば実刑判決があってもおかしくはないものです。被害会社との示談・被害弁償がなければ、執行猶予がつかずに実刑になっていた事件と言えるでしょう。

「実刑」と「執行猶予」とでは天と地の違いがあることから、刑事弁護を担当する弁護士には、逮捕された被疑者・被告人のために「戦い抜こう」という気持ちが絶対に必要なものと言えます。
この「戦い抜こう」という沸き上がる気持ちを感じるからこそ、当弁護士法人は、民事事件とともに刑事事件にも力を入れ、在籍するどの弁護士にも刑事弁護を担当させています。

[参考記事]

執行猶予とは?執行猶予付き判決後の生活|前科、仕事、旅行

5.弁護士を自分で選んで刑事弁護を依頼するメリット

今回の事件で、私は国選弁護人として窃盗事件を受任しました。
国選弁護人は裁判所に選任され、被疑者・被告人やその家族に選任されるものではありません。つまり、国選弁護人を被疑者・被告人が選ぶということはできず、国選弁護人に対し「相性が良くない」「あまり対応してくれない」という声が実際のところ多くあるようです。

私は、この事件では30件近い余罪の示談・被害弁償取り付けを国選弁護人として取り付けましたが、通常は国選弁護人でここまでやる方はいないのではないかと思います。
そもそも国選弁護人は、特に東京の弁護士ですと国選弁護人を担当する機会が少ないことから、刑事弁護に精通している弁護士があまり多くありません

泉総合法律事務所にも、国選弁護人の弁護活動への不満があり、当所弁護士の私選弁護に切り替えたいとの依頼は少なくありません。実際に当所の弁護士が国選弁護人に代わって刑事弁護活動をすることも少なからずあります。

[参考記事]

国選弁護人がやる気なし?解任を申し出たい場合はどうすればいいか

起訴前の被疑者段階では、逮捕された後の10日間の勾留を阻止する弁護活動を早急に行う必要があります。
そのためには刑事弁護経験の豊富な弁護士が迅速対応するに越したことはないのですが、国選弁護人は通常の弁護士業務で予定が埋まっていて迅速に対応できないこともあります

このような場合でも、泉総合法律事務所には刑事弁護を担当する弁護士が多数在籍しておりますので、勾留阻止活動にすぐ対応できる弁護士が必ずおります。
実際に、検察官の勾留請求を阻止したり、裁判官の勾留決定を阻止したりした事例は数多いです。

さらに、裁判官の勾留決定がくだされてしまった場合には、その勾留決定の取り消しを求めて「準抗告」という裁判を申し立てを行います。
この勾留決定取り消しを求める準抗告が認められる可能性は低いのですが、当初では4週間連続で4回勾留決定を取り消す準抗告が認められて釈放されたことがあります。

早期に釈放されれば、会社を解雇されたり、退学処分にされたりするリスクを回避できます。
しかし、国選弁護人の場合は準抗告まで取り組んでくれるかどうかは国選弁護人の判断に左右され、被疑者本人や家族の意向が考慮される保証はないと言って良いでしょう。

[参考記事]

勾留請求・準抗告とは?釈放を目指すなら泉総合法律事務所へ!

6.刑事弁護は泉総合法律事務所にお任せください

痴漢や盗撮、暴力事件など、個人が被害者の場合では、弁護人が被害者と示談交渉をして示談を取り付けることで、早くてその日のうちに、遅くても翌日には釈放され自宅に帰ることができます。
特に私選弁護人の場合には迅速に示談交渉に取り組みますので、被害者が示談に応じてくれさえすれば早期釈放の可能性が高くなります。

一方、国選弁護人の場合には、迅速に示談交渉に取り組んでくれるかどうかは国選弁護人のスケジュール次第ということになります。

刑事事件の弁護においては、上記に述べたように、経験豊富な弁護士に依頼することが大切です。刑事事件は時間との勝負になることが多くありますので、ご家族が逮捕された場合などは、東京、神奈川、埼玉、千葉など首都圏に展開しております泉総合法律事務所まで早急にご相談ください。

[参考記事]

当番弁護士の仕組み|国選弁護人、私選弁護人との違いは?

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